源氏物語「明石の姫君の入内 1/2」(藤裏葉)   現代語訳

 御参り(明石の姫君の入内)の儀式、人の目おどろくばかりのことはせじと(源氏ノ君ハ)おぼしつつめど、おのづから世の常のさまにぞあらぬや。限りもなくかしづき据ゑ奉り給ひて、上(紫の上)は、まことにあはれにうつくしと思ひ聞こえ給ふにつけても、人に譲るまじう、まことにかかることもあらましかばとおぼす。大臣(源氏ノ君)も宰相の君(源氏ノ君ノ子息夕霧)も、ただこのこと一つをなむ、飽かぬことかなとおぼしける。三日過ごしてぞ、上はまかでさせ給ふ。
↓ 現代語訳
 (明石の姫君の)入内の儀式は、人目を驚かすほどの(華美な)ことはすまいとご自粛なさるが、自然に(大規模になって)世間並みの規模にはいかないことだよ。(紫の上は姫君を)このうえもなく大切にお世話し申し上げなさって、紫の上は、心からいとしくかわいいとお思い申し上げなさるにつけても、人の手に渡したくなく、本当にこのように自分の実の娘が入内することがあったならとお思いになる。太政大臣〔源氏〕も宰相の君〔夕霧〕も、ただこのこと一つだけを、不満なことだなあとお思いになった。(入内の)儀式三日間を(過ごして、紫の上は宮中をご退出になる。


 (明石ノ君ガ)たちかはりて参り給ふ夜、御対面あり。「かくおとなび給ふけぢめになむ、年月のほども知られ侍れば、うとうとしき隔ては残るまじくや。」と、なつかしうのたまひて、物語などし給ふ。これもうちとけぬる初めなめり。ものなどうち言ひたるけはひなど、むべこそはと、めざましう見給ふ。また、いと気高う、盛りなる御けしきを、かたみにめでたしと見て、そこらの御中にも、すぐれたる御心ざしにて、並びなきさまに定まり給ひけるも、いとことわりと思ひ知らるるに、かうまで立ち並び聞こゆる契り、おろかなりやはと思ふものから、出で給ふ儀式のいとことによそほしく、御輦車など許され給ひて、女御の御ありさまにことならぬを、思ひ比ぶるに、さすがなる身のほどなり。
↓ 現代語訳
 (紫の上に)入れ替わって(明石の君が)参上なさる夜、(お二人の)ご対面がある。(紫の上は)「こんなに大人らしくおなりになった、その変化の様子によって、年月の経過もわかりますので、水くさい分け隔ての遠慮などありませんよね。」と、親しげにおっしゃって、お話などなさる。明石の君のほうも(紫の上と)仲よくなった最初の出会いであるようだ。(明石の君の)ものなどおっしゃる物腰などを(見て)、(源氏の君が大切にするのも)当然だわ。」と、目を見張る思いで御覧になる。また(明石の君も)、(紫の上の)たいへん気品があり、女盛りのご様子を、こちらはこちらですばらしいと見て、「たくさんの女性たちの御中でも、だれにもまさった(源氏の君の)ご愛情であって、並ぶ者のない地位におさまりなさっていたのも、全く当然のことだよ。」とおのずから納得する気持ちになり、「こんなふうに(紫の上と)肩をお並べ申し上げる自分の前世からの宿縁は、並々のことではないのだ。」と思うものの、そうはいうものの、(紫の上が宮中から)ご退出なさる儀式がまことに格別で美々しく、(帝の勅許を得て)御輦車などを許されなさって、女御の(御退出の)御ありさまと異ならないのを、(自分と)思い比べると、やはり段違いに劣ると思わずにはいられないわが身のほどである。

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