紫陽花

まあるい一輪の 紫陽花の花
母よ その花は
手縫いの紀州手毬に似た
青味がかった白い花だった
貴方の手元を離れるまでは

青春の一輪は 明るく輝く
プルシャンブルーを着て
ただひたすらに
見知らぬ街を駈け巡った
時には病んで色落ちしつつ

朱夏の一輪は 華やかに
赤や紫も織り交ぜながら
土に応じて七変化
小さな庭を飾った しっかりと
子株を脇に抱えて


白秋の一輪は 仄かに
シャガールの恋した青に戻り
ひとつの仕事を終えて いま
玄冬の季節に備えている
子株の花々を愛でながら

教えてください
その花は 巡る季節の中で
様々に色を変えたが
描こうとされた手毬の模様は
こんな風だったのでしょうか

まあるい小さな 紫陽花の花
母よ その花は
まだ並んで咲いています
私の裡に生きる貴方と いまも
「幻の花」を探しながら
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