この前の冬のことが頭に浮かんだ。
風邪を引いて一時は生死の境をさまよった空。
あの時、病院から戻った空を猫広場の寝床に毛布でくるんで少しでも風に当たらぬように…。
家猫だったら暖かい家で養生できたのに。
思い悩んだあげく、私はお母さんに里子に出すことを了承するという連絡を入れた。
そうすることが空にとっては一番いいことなのだと信じようと自分に言い聞かせながら。
年が明けてすぐ、いつものように空を膝の上に乗せて過ごしたあと、そっと抱き上げて猫カゴに。何かを予感した空はニャーニャー鳴き始める。私の顏を見つめながら。
「くれぐれもよろしくお願いします。ずっと可愛がって…」
その後の言葉が続かない。
家に帰ったあと、私は泣いた。
それまでこらえていたものがどっと堰を切ったように…。
あとからあとから涙があふれて止まらなかった。
まるで心の中にぽっかりと大きな穴が開いたような心地で過ごした年はじめだった。
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