Northern White ~北の絵日記~

 
 7月8日(金) 腫れ 
 
最終日。
今日はチェックアウトです。
加えて荷物を自宅に送る段取りをしなければならない。本来なら前夜のうちにやっておくんですが、昨夜は「最後の晩餐」??ということで皆と一杯やってしまったので、荷づくりは今朝やることに。
他のホテルと違ってチェックアウトタイムについてはある程度融通の利くTAITOですが、お掃除の人に迷惑をかけてしまうので、なんとか10:00までに部屋を開けるようにしないと。
荷造りを終えて、宅配便の手配をし、精算を済ませるとちょうど10:00.
大型三脚と超望遠レンズは11月に来るときまで宿で預かってもらうことにしました。どっちもタンチョウ撮影以外には使いませんから。これもほとんど常習化してますね。(^^;
今日の帰りは最終便。釧路空港発が20:00過ぎなので時間はたっぷりあります。
昼間はまたブラブラを撮影をして、入浴と夕食をここでしてから空港に向かうつもり。これもいつものパターンですね。
午前中は和田さんのカフェにお邪魔してしばし歓談。
ちょっと早目の昼食をレストランで取って、また自転車を借りて鶴居村内をぶらつきます。
ヤナギランがそこここに咲いていました。

若鳥たちの群れ。よく見ると白い点がたくさん見えるでしょう?

タンチョウは成鳥になれば基本的に夏場は「群れ」を作ることはなく番単位で行動します。むしろ自分たち以外の番や単独鳥は追い払う縄張り意識の非常に強い鳥ですが、まだ固定した縄張りを持たない生後1~2年の亜成鳥はこうやってグループを作ってあちこち移動しながら暮らします。
特に昨年生まれの「一年生」はまだ自分の生活のペースを必死になって模索している最中で、誰か同じ境遇の仲間がいないと心細い。遠くから見ると成鳥と亜成鳥の区別がつかないこともあるので二羽一緒に歩いてると番かと思ってしまいますが、この時期はオス同士あるいはメス同士で行動することも珍しくありません。

もちろん雌雄の組み合わせであれば、ゆくゆくは将来カップルにはる可能性は高いですが。
広大なデントコーン畑。

もう見慣れてしまっていますが、これで本州に帰ると内地(北海道の人は本州をこう呼ぶことも多いです)の畑って狭いな~、と思ってしまうことが多いですね。
牛さん。

この牛は役牛です。道東の牛はほとんどが搾乳目的で飼育されている乳牛ですが、最近は役牛を飼育する牧場も増えてきました。
十勝牛などはもうブランド化されて有名ですが、鶴居や標茶・別海でも役牛は数を増やしつつあります。
しかし村内を走り回っていると、ツルを見ない場所を見つけることが難しいほど。
タンチョウは夏場は湿原に帰って人里からは姿を消すというのは昔語りになってしまいましたね。今は鶴居村内で夏を過ごすタンチョウはかなりな数になりました。
こんなところにもいます。

もちろん、これは時として村の農家の方々にとっては悩みの種になります。
というのも、特に昨年生まれの若鳥たちはまだ自分の食生活パターンを身に着けてないこもとあり、しばしば初夏の畑の作物を荒らします。特に植えたばかりのデントコーンの芽が狙われやすい。秋の収穫の時にこぼれ落ちる実を失敬するのは、農家の方々にとっては痛くもかゆくもないのですが、出てきたばかりの若芽を食い荒らされてしまうのは大問題。
だからいつも初夏6月くらいになると農家の人たちは大声を上げて畑に入って来たタンチョウを追い払います。でも当座追い払ってもしばらくするとまたやってくる。そうするとまた大声で追い払い…まさにイタチゴッコそのもので、農家の方々はこれで疲労困憊してしまうこともあるようで。

これ、もし他の動物だったら「電気柵を設けよう」「銃声で威嚇しよう」とかって話になると思うんですが、不思議なことに農家の方々はそこまではやらない。
なぜか…それはここが「鶴居村」だからです。
他の自治体だったらこうはならないでしょう。
村の農家の方々は言います。
「そりゃ、コノヤロウ!って思うこともしょっちゅうあるよ。でももう長年一緒に暮らしてきたんだからね。ツルだって『村民』なのさ。親の代、じいちゃんの代からずっと一緒に暮らしてきたんだから仲間みたいなものさ。だからこれからだって同じさ。ツルがいるから『鶴居村』なんだから」

だからこうやってタンチョウが自分の敷地内に入って来ても作物に手を出したりしない限り、農家の人は黙って見てます。決して追い払ったりしない。

タンチョウにとっても牧場内というのは虫や小動物がたくさんいる牧草地もあれば、堆肥置き場もある。

すぐそばを農作業車が轟音を上げて走ってもタンチョウは動じない。

そして、こうやって自分の土地にタンチョウがやってくることが、ある意味牧場や農場の人にとっては誇りでもあったりする。

だからこの辺の人は自分の畑に出入りするタンチョウを「ウチのツル」と呼んだりします。
「ウチのツルは今年はヒナ二羽ついたよ!」とか自慢気に言ったり。

「タンチョウは野生の鳥ではない」
そう言う人がいます。
確かに冬場は人里に来て給餌場で餌をもらう。そういう意味では完全な野生の鳥ではないかもしれない。
ある意味例えは悪いかもしれないけど、都市部の地域猫などと似た側面もあるかもしれないですね。
でもそれはそれでいいのかも。無理して「タンチョウ自然採食促進事業」などというわけのわからないお題目の施策を進めるよりも、「今のまま」の関係を保っていくことのほうが大事じゃないかと思いますね。今、人とツルは「いい関係」を保っていると思うんですよ。タンチョウが地域の観光に寄与してるのは曲げようのない事実だし、害虫を食べてくれる「益鳥」としての側面もある。

時に協力しながら、時にはちょっとケンカもしながら、ずっと今のような関係を保って行くのが一番いい。
それはこの鶴居村だからできることだと思うから。
もう100年近くツルと一緒に暮らしてきた村だからこそ。

さあ、そろそろ時間。
TAITOに戻ってお風呂に入って…名残り惜しいけど撮影終了。
次は11月初旬。カラマツの紅葉をバックにタンチョウが飛ぶ姿を期待して。
その頃にはヒナたちも「幼鳥」と名を変えて空を舞っていることでしょう。
今回の旅でお世話になった全ての方々とタンチョウたち、野生動物たちに感謝して今回の旅日記を閉じることにしましょう。

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