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秋の奥入瀬渓流 (2006.10.11)


十和田湖畔のホテルで「奥入瀬の景色は、渓流に沿って下流から上流へ向けて歩くのが良い」と聞いたので、休屋の駐車場に車を置き、JRバスで石ヶ戸まで移動、そこから子の口まで奥入瀬渓流を歩き、子の口からは湖上遊覧船で休屋に戻る、計画です。

朝、バスターミナルへ着くと08:30発は既に出たあとで、次は10:30発と2時間後。昨夜、露天風呂で一緒だった同年代の人から「バスの便が悪く、タクシーで石ヶ戸まで行った。料金は2,300円ほど」と聞いていたので、私たちもタクシーを利用することにしました。休屋〜子の口〜石ヶ戸のタクシー代は5,000円をオーバー (注: 2,300円は子の口〜石ヶ戸の料金だったと気付いたが、あとの祭り)。 懐にはこたえたけど、奥入瀬渓流の散策を堪能する時間を買ったんだと考えよう!


石ヶ戸到着は09:40。色づきはじめた木々の中を、澄んだ水が早い流れの瀬や緩やかな流れをつくっています。左の写真は上流を見たところ、右は下流方面。


説明板には石ヶ戸(イシゲドと読む)の由来が次のように書かれています。
「ヶ戸」とは、この地方の方言で小屋の意味。だから、「石ヶ戸」は石の小屋、すなわち岩屋を意味している。実際、大きな岩(注:旅行誌によると、厚さ1m、幅10mあるらしい)がカツラの巨木に寄って支えられ、岩小屋のように見える。
昔、鬼神のお松という美女の盗賊がこの岩屋に潜み、旅人から金品を奪っていたとの伝説がある。


「石ヶ戸の瀬」付近。至るところ絵のような景色が続きます。木々の緑、水の流れ、おいしい空気。自然大好き人間の私には、奥入瀬の散策は感動の連続です。


シダが鬱蒼と生えている場所が多く、原生林の姿をそのまま残しています。


石ヶ戸の巨石、道路際に聳え立つ馬門岩(マカドイワ)など、火山岩質の巨大な岩が渓流沿いの随所にあり、独特の景観をつくっています。
緑色が主体の景色の中でマムシグサの赤色が映えて見えました。


渓流の中洲には、特に日当たりのよくない中州には必ず、トクサが茂っています。
トクサ(砥草)はシダの仲間で、表面がザラザラしており、昔は磨き布代わりに使われていたようです。


「阿修羅の流れ」

幾筋かの脇からの流れがこの付近で奥入瀬川の本流と合流して水量を増し、轟々と音を響かせながら苔に覆われた大きな岩や倒木の間を勢いよく流れています。「阿修羅の流れ」と名付けられ、view point の一つです。


奥入瀬渓流の両岸は、樹木に覆われ聳え立つような岩壁の間から幾すじもの滝が流れ落ちています。石ヶ戸からゆっくりゆっくりと歩を進めて約1時間40分、雲井の滝に到着(観光ガイドブックでは1時間の行程)。白布の滝は雲井の滝から10分ほど、渓流の向こう岸に見えてきます。


雲井の滝 白布の滝
「くの字」のような形の2段に折れた滝は落差25m、奥入瀬渓流に流れ落ちる滝の中では一番水量が多いとのこと。
薄い白布を広げたように流れ落ちているさまは、まさに白布の滝です。


奥入瀬を歩くと、心が洗われ、穏やかな気持ちになっていく自分を実感できます。



奥入瀬の散策路沿いに咲いていた花です。 (写真はクリックで拡大します)

トリカブト


アキノキリンソウ


イヌタデ
(アカマンマ)

ヤマボクチ


シシウド


オバナ
(ススキ)

ノコンギク


エゾアジサイ


マムシグサ

ミズヒキソウ

ダイモンジソウ

ガマズミ



白糸の滝 九段の滝
白糸の滝という名付けられた滝は日本各地にありますが、ここ奥入瀬も細い白糸を幾筋も垂らしたように滝が流れ落ち、水音も静かです。
斜面に沿って階段を作ったように侵食された岩壁を、滝が静かに流れ落ちています。



石ヶ戸から歩き出して4時間余、銚子大滝の轟くような水音が樹木の向うから聞こえて来、滝が見えてきました。雲井の滝や白糸の滝など今まで見てきた幾つかの滝は奥入瀬に合流する水の流れでしたが、銚子大滝は奥入瀬の本流にかかる唯一の滝です。


銚子大滝
幅15m、高さ7m。水量の多さと落下する水の勢いに圧倒されます。


銚子大滝の傍らに、「奥入瀬渓谷の賦」と題する佐藤春夫の詩が書かれた木板が建っています。奥入瀬渓谷の自然の美しさ、空気の清らかさ、静かさ、囁くごとき瀬音に感銘し続けてきた私の胸にすーっと入ってくる詞でした。


(第一節)
瀬に鳴り渕に咽びつつ奥入瀬の水歌ふなり
しばし木陰に佇みて耳かたむけよ旅人よ


ゴールの子の口までは銚子大滝から小一時間。下流の石ヶ戸をスタートしてゆるゆると登ってきた奥入瀬渓流の散策もまもなく終わりです。標高も高くなったのでしょう、木々の色付きも増してきています。


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