CHERISH <Vol.2>


「ただいま・・・っと。」

日付も変わり、日が差し始めた頃。
あの場に居る事に耐えかね、思わず飛び出した部屋。

今日は2人共オフの為、嫌でも顔を合わせるのだが・・・。
既に寝ているだろうクラウドに気付かれないようにそっと入った。

「お帰り。もう朝だよ・・・・」

思いがけず返事があり、思わず体を強張らせた。

「クラウド。お前、ずっと起きてたのか?」
「3時間くらいは寝たけど、目が覚めちゃってさ。それからボーっとしてた。」

本人は気付いて無いだろうが、いかにも”寝不足です”って顔だぜ?
美容に寝不足は良くないぞ。

「そっか。今日はお前もオフだし、折角だからちょっと寝てからどっか行くか?
 篭っててもしょうがねぇし。」
「・・・・・・・・・。」
「ん?やっぱ、折角の休みだしゆっくりしてるか?」

なんか反応が乏しい。まぁ、無理も無いか。
余り雰囲気が良いとは言えない状態で別れたままだったからなぁ。

「あの、さ。アンタが一眠りしてから、後でいいんだけど・・・。」
「どうした?」
「ちょっと、話が・・・・ある。」

・・・・・こりゃぁ、いつものおふざけとか、そんな簡単な類じゃなさそうだ。
クラウドの表情が俯いてても分かる程度に曇っている。

「だったら、今話しちまおうか。」
「え?でもアンタ寝てないんだろ?」

少し疲れたような顔をしているクラウドが、俺の言葉に顔を上げた。
そんな顔して、俺が寝てる間に悶々としてるよりいいんじゃないか?

「まぁな。けどよー、お前、自分の性格分かってるか?俺が一眠りした後に持ち掛け
 たって、”やっぱり今度にする”とか言い出すに決まってんじゃねぇか。だったら
 今話してスッキリさせた方がいいだろ。」
「・・・・・・・ザックスが良いなら。」
「俺なら構わねぇって。何かあったのか?」

そう問うと、ゆっくりではあるが頭を左右に振り、否定する。

「じゃぁ、どうした?まさか、怖い夢でも見たとか言わないだろ?」
「そうじゃない。どう切り出したら良いのか分からないんだけど・・・・。」
「思ったまま言ってみろ。」

考えるよりも簡単だろ?
それに、考えさせたらこの話はここで終了・・・ってのがオチになりそうだ。
それなら思うままに口に出した方がいい。

「分かった。えーと・・・・、あのさ。」
「うん?」
「俺達、こうして互いの部屋に行き来したり、アンタが泊まるのは無理だから、俺が
 アンタの部屋に泊まり込んで遊びに行ったりする様になって、大分経つよね。」
「そうだな。」

クラウドが何が言いたいのかはまだ分からねぇ。
けど、それでもこうして必死に言葉を探している、探そうとしている。
だから俺も、急かさずに時間を掛けて聞くしかない。

「それで思ったんだけどさ。此処の所、ずっとアンタの様子が変だった。これは昨日
 も言ったけど。」
「あー、そう・・・だよな。」
「ちなみに、アンタ今さ・・・恋人居るか?」
「はい?居る訳ねぇだろ!お前と居る時間の方が長いっての。」
「そうなんだよね・・・。」

んな事言われたらビビるだろうが!!
まさか今まで居るだろうと思ってた訳じゃぁねーよな?

「アンタさ、恋人作る気あるか?」
「な、なんだ〜?いきなり。」
「いいから。恋人が欲しいとか思わない?」

参った・・・・。
どう応えて良いんだ?恋人は欲しい。けど、それはそこら辺の女じゃなくてだな。
ここで「お前だ」何て言ったらどうなるんだろうなぁ。

「欲しいの?欲しくないの??」
「それはだな〜・・・・、どう言えばいいか。」
「別に難しい事は聞いて無いんだけど。」
「はぁー・・・。”恋人”ね?そりゃぁ、俺も男だし恋人くらい欲しいよな。お前だ
 ってそうだろ?」
「俺は・・・・・別に。」

分からねぇ。何が言いたいんだかサッパリだ。
俺には恋人が欲しいか聞くくせに、自分は恋人はいらねぇって?

「クラウド、単刀直入に言ってもらえると助かるんだけど。」
「ご、ごめん。・・・・分かった。あのさ、俺がこうして出入りしてる間、アンタは
 恋人が作れないんじゃないかって思うんだ。」
「へ?」

何かと思えば、そんな事気にしてたのか。
っつーか、お前が出入りしてるから、俺もここに居るんだろうが。
今のクラウドには分からない事かも知れねぇけどな。

「そうだろ?昨日みたいに一人で出掛けるなんて、本当に数え切れる程度だし、この
 ままだと本当に・・・・。」
「ちょ〜〜っと、待て。あのな、今すぐ必要ならお前とこうしてる時間にでも、女捜
 しに行ってるって。俺には今は必要ない。だから、お前が一々気にするような事じ
 ゃねぇよ。」
「そうなんだ・・・?」

お前に女の心配してもらうようじゃ、俺も落ちぶれて来たか?

「そうなの!それより、クラウドこそどうなんだ?時間はあったろ。篭りっきりで恋
 人は作れないぜ?」
「う・・・。いや、俺はいいんだ。」
「全っっ然、よくねぇから。俺だけ質問攻めって狡くねぇ?」
「・・・・・・・・俺に聞きたい事なんかあるのか?」

そりゃぁもう、色々とありますね。

「今度は俺に付き合え。」

今日も一日部屋で過ごすことになりそうだ・・・。


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