CHERISH <Vol.3>


「今度は俺に付き合え。」

寝てない割りに元気だよな、アンタ。
だからソルジャー・セフィロスに『体力馬鹿』って言われるんだ。

「さてと、何から聞こうかな〜。」

その顔は、悪戯を考えている子供のようだ。

「アンタが俺に何を聞く事があるんだ?俺はザックスみたいに話の内容は豊富じゃ
 ないよ。」
「どういう意味だ・・・。」
「いや、そのままの意味。」
「・・・・・・。」

そんな顔しなくてもいいだろ。本当の事だし。
俺と違って、アンタは顔が広い。だから、話のネタも多いだろう?

「それで、ネタの豊富なソルジャー・ザックスは何が聞きたいんだ?」
「あ、あぁ。お前さ、さっき俺に『恋人は要らないのか』って聞いたよな?」
「あぁ、聞いたな。」
「んで、逆にお前に聞いた時、何て言った?」

ザックスに『恋人は欲しくないか』って言って、それに『恋人は欲しいけど今は要らない』みたいな事言われたんだっけ。
それを逆に問われた時・・・・

「『俺はいいんだ』って答えたと思う。」
「思うって、ついさっきの話だろうが。」
「さ、最近物忘れが多いんだよ。」
「・・・・・お前、ウソつかない方がいい。ヘタ過ぎ。」

別にウソがヘタでもいいんじゃないのか?
って言うか、ウソを簡単につける方がおかしいだろ。

「それでさ、何でクラウドは恋人要らないんだ?」
「え!?イヤ、それは・・・・」
「”言えません”とか”アンタに関係ない”ってのは却下します。」

・・・・・・・先手を打たれたか。
でも正直言って、この問いに答えられない。どうしたらいい・・・・。

「クラウド?なーに考え込んでるんだよ。”難しい事は聞いてない”ぜ?」

コイツ、さっき俺が言った事を根に持ってるな。大体にして、アンタは”理由”を聞いてるだろ!

「そりゃ考えるよ。俺は恋人が欲しいか聞いたのに、アンタは『何で要らないのか』
 理由を聞くんだから。」
「あ、そうか。それはスマン。じゃー訂正。『要るか否か』ならどっちだ?」
「『要らない』・・・・、だな。」

実際は『要らない』と言うより『欲しいけど問題あり』ってトコロ。

「ふ〜ん。で、俺に気を使って、『今すぐにでも恋人が欲しい』って言ったら、お前
 はどうする気だった?」

いきなり核心を突くなよ!!言えるものならとっくに言ってる!
でも、今の関係を崩さずにうまくやって行くには、言ってはいけない事もある。

「何って。それが本音なら、俺が出入りするには問題があるだろ。色々とさ。」
「例えば『ザックス起きろ!』って来てみたら、マッパの女が居たりしてってか?」
「そうだよ!アンタ達の情事後を見せられたら最悪だ!!」

どうしてコイツは堂々とこういう事を言えるのか。

「そりゃそうだよなぁ。マッパで『クラウド、おはよ〜』なんて言った日にゃ、間違
 いなく女に振られっだろうな〜。」
「だろ?だから、さ。」
「だから?」
「ザックスの生活が落ち着くまで、”つるんで遊ぶのは止めよう。”って言うつもり
 だった。」
「・・・・・。」

な、何かカルチャーショックを受けてるような顔をしてるんだけど。
けどこれは引ける事ではない。俺が邪魔しちゃいけないんだ・・・・・。

俺は。
俺はザックスと居たい。『好き』だからさ・・・。
コレでも苦労してるんだよ。アンタに『暫く遊べない』って言われた時に動揺しないように。

「それ本気で言ってるのか、お前。」
「・・・・・うん。ザックスが本気で恋人が欲しいって言うなら。」

だってさ、やっぱりイヤなんだ。
ザックスが他の誰かと一緒に居るのを見ていられる程デキてない。

「そっか・・・・。なぁ、クラウド。」
「何?」
「お前さ、今好きな奴って居るのか?」
「え!?」

それはこの神羅社内でって事か!?
幾らなんでも無理だろう。タークスなら別だけど、男ばっかりだし。

「だから、クラウドにはそういう奴居るか?」

どうしよう。また難題が降って来た。
『居る』と言えば”恋のキューピッドやってやる。誰だ?”って来るだろうし、『居ない』って言えば”好きな奴作れよ”とか言われそうだし?

「そ、その件は黙秘扱いで・・・・。」
「ダ・メ!!」
「・・・・・・ザックスって意外と酷なこと聞くよね。」
「酷なこと?俺、そんなヒデェ事聞いてっか?」

本人が知らないんだから仕方ないと思うけど、辛いんだよ。
一人で勝手に好きになって、苦しくなって・・・・。

「まぁ、答えようによっては・・・ね。」
「それじゃー『好きな奴が居ます』って言ってるように聞こえるけど?」
「・・・・・・そうだな。好きな奴なら『居る』・・・・・かな。」

答えろって言われたから答えたんだけど、ザックスが固まってる・・・・?

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