CHERISH <Vol.1>


「落ち着かねぇ・・・・。」

此処の所、クラウドと一緒に居るとどうにもこうにも落ち着かない。
理由はハッキリしてる。
けれど、それを伝えて良いものかどうかで、葛藤中。

「何が落ち着かないんだ?」
「・・・こっちの話。」
「あっそ。最近、何かイライラしてるみたいだから、人が話を聞いてやろうっての
 に、感じ悪っ。」

しょうがねぇだろうが。
話せる事と話せない事があるんだよ。今の俺は、後者の理由ゆえに、こうしてモヤモヤしてるんだが。
イライラしてるように見えるのか・・・。そりゃそうだよな。
ロクに話もしないまま、時間だけ過ぎてるんだもんな。メシ食って、テレビのスイッチ入れて、そのままだもんな〜。

「あ〜、ワリィ。ちょっと、色々とな・・・。」
「色々?アンタでも悩みってあるんだ?」
「あのなーーーっ!一応、俺も人間ですが。」
「ごめん。盛りの付いたケダモノじゃなかったんだ。」
「あ゛ぁ!?何だそりゃ・・・。」

言ってる本人は笑っちゃ居るが、言われた本人は、もの凄くやり切れないんスけど。
だーーーーめだ、こりゃぁ。気分転換でもしてくるか。

「はぁ、もういいです。・・・ちょっと出るわ。」
「え・・・?あ、あぁ。」

そこら辺にあるジャケットを羽織って、部屋を出る。後ろ手に閉ざされたドアの向こうには、一人残されたクラウドが居る。
ごめんな・・・・。でも、今はお前と居られる自信ねぇよ。

こんな筈じゃなかった。クラウドはただの神羅兵で、俺はそのお友達。
それで良かった筈なんだが・・・・。
どこをどう見誤ってしまったのか、お友達ではなく、一人の人間として・・・それも恋愛対象として見る様になってしまった。

「どうしたらいいんだろうな、俺。」

そう一人ゴチながら、スラムへと足を向けた。
こうなったら、夜通し遊んでやる!!・・・・って言っても、女遊びじゃねぇぞ?




この頃、ザックスの様子が変だ。
時々ボーっとしてたり、かと思えば眉間に皺を寄せながら、軽く頭を振ってみたり。
その百面相を、ついつい見てしまったりするんだけど、最近は特にイライラしてる感じがする。

「落ち着かねぇ・・・・。」

本人は至って独り言のつもりだったんだろうが、その言葉は俺にはしっかりと聞こえていた。

「何が落ち着かないんだ?」

問うてみても後の祭り。

「・・・・こっちの話。」

”こっちの話”で納得行く訳がないだろ?そんな不機嫌丸出しな顔してさ。
流石にちょっとだけ。ちょっとだけだけどムカついた。

「あっそ。最近、何かイライラしてるみたいだから、人が話を聞いてやろうっての
 に、感じ悪っ。」

こちらも負けじと眉間に皺を寄せてみる。
すると、驚くような早さで立ち直り掛け、

「あ〜、ワリィ。ちょっと、色々とな・・・。」

だから、それを聞いてるんじゃないか。

「色々?アンタでも悩みってあるんだ?」
「あのなーーーっ!一応、俺も人間ですが。」

突っ込みを入れてみたものの、半分呆れ、半分怒り浮上状態に自ら導いてしまったようだ。
だよね。ザックスも俺も一人の人間だし、悩みがあってもおかしくないよね。

「ごめん。盛りの付いたケダモノじゃなかったんだ。」
「あ゛ぁ!?何だそりゃ・・・。」

・・・・・・どうやら俺は誤爆する傾向にあるらしい。
別にこんな事が言いたい訳じゃないんだけど、つい言ってしまう中りタチが悪い。

「はぁ、もういいです。・・・ちょっと出るわ。」
「え・・・?あ、あぁ。」

やはり先程の言葉が悪かったのか、不機嫌を顔に貼り付けたまま、出掛けてしまった。

「どうして俺って、こうなんだろうな・・・。」

ザックスに嫌われたくないのに。むしろ・・・・・・。
でも、この場に彼が居ないのは、不幸中の幸いとも言えるかも知れない。
もっと近付きたくて、でも、この関係が壊れるのも怖い。

「一度、離れて気持ちの整理をした方がいいのかな・・・・・。」

結局その夜、ザックスは戻って来なかった。



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