蓼科山( たてしなやま)                                         [中信] 2531m

 

 蓼科山に登るのは2回目。最初に登ったのは1989年(平成元年)の9月。この時は大河原峠まで車で上がり、そこからピストンしたのだが、山頂付近だけ雲に覆われたままで、全く展望が利かなかった。
 2003年(平成15年)1月に隣りの北横岳から雪の蓼科山を眺めて、樹林の山裾と真っ白な山頂の佇まいのよさに惹かれ、再登を考え始めてはや十数年。やっと実行に移すべく新しいアイゼンも買った昨年は、天気と仕事のタイミングが合わずに断念。今年は少々無理をしてでも登ろうと、仕事に追われて不満顔の女房を振り払って出発した。

2003年の北横岳からの蓼科山

 白樺湖畔の安宿から15分程で登山口の駐車場に到着。ウィークデイではあるが、既に車が3台止まっている。雨具のズボンをはき、スパッツを着け、アイゼンを履いて支度をしている間に、そのうちの二組が登っていった。

 登山口からしばらくはカラマツやダケカンバに囲まれた平らなところを行く。登山道は雪に覆われているが、しっかりトレースが付いている。雪面は固く締まっていて一歩ごとに新しいアイゼンの爪が食い込み、引き抜くのに力が要るような感じがする。

登山口の駐車場

 

ミズナラ林

 

最初の登り

 

 林がミズナラに変わると道は登りになる。最初の急登で、これは100m程登るとまた平坦地になる。雪の積もった登山道はゴロゴロした岩が埋まってかえって歩きやすいと言われるが、道は急でやはりしんどい。
 再び傾斜がきつくなり、樹林帯を黙々と登る。暑くなってきてジャケットを脱ぐ。今度は200mほどでまた傾斜が緩くなる。2113mの標高点で、蓼科高原の展望が広がり、いままでチラチラ見えていた南アルプスがきれいに眺められる。

 

  一番立派に見えるのは仙丈ヶ岳で、一瞬甲斐駒に見間違えたほど。根張りが大きく貫禄があり、南アルプスの女王の名を越えている。
 甲斐駒は北岳と競うように立っているが、北岳はその奥になおも白く輝いている。間に見えるのは間ノ岳だろうか。北岳、間ノ岳、甲斐駒でまとまった三山のように見える。その左手には鳳凰三山も予想外の大きな塊になって見えている。
 富士山はここからは見えないようだ。

左に北岳、甲斐駒、右に仙丈

 

山頂が見えてきた

幸徳平

 

  ここからしばらくはまた針葉樹林の中の道をゆるゆる登っていく。展望はないが、落ち着いた気分になれる気持ちのいいトレースだ。
 幸徳平に下る手前でやっと蓼科の山頂が見えてきた。北横岳から見た時はもっと山頂が真っ白だった気がするが、今日はゴマ粒のように黒い岩肌が見えている。山頂の下には縞枯れも見える。ここから見上げると、ちょっと嫌になるほど急な斜面だ。
 幸徳平の標識を過ぎると、いよいよその登りにかかる。

 道は針葉樹林の中をほぼ真っ直ぐ登っている。雪がなければ岩を階段のように登っていくのだろうが、今は急な雪の斜面になっていて、アイゼンはよく効くが直登するのはきつい。狭い斜面をジグザグに登ったり、横向きに登ったりして喘ぎながら高度を稼ぐ。ストックに頼って少しずつ体を引き上げる。
 登山口で支度をしていた間に出発していった単独行の女性がもう降りてきた。いや〜、強いなあ。ヤマレコの記録を見ていても、コースタイムの7掛けくらいの時間で登る人も多くて、自分の体力の程度を痛感させられる。(それでも最終的にはほぼコースタイムで上り下りしたのだが。) 

 

 苦しいので休み休み登ることになるのだが、周りの針葉樹がだんだん低くなってきて、展望が利くようになってきて気がまぎれる。
 逆光に霞んではいるが、南八ヶ岳の鋭い峰々が雲を纏ってひときわ凛々しい。
 南アルプスの右手には遠く中央アルプス。空木岳右の木曽殿越へ突き上げる白い谷が目を引く。
 中アの右には御岳も覗いている。

南八ヶ岳、左から赤岳、阿弥陀岳、権現岳

 

中央アルプス遠望

御岳

 

 森林限界が思いのほか高く、縞枯れ帯を抜けた先の岩場に出ると、もう山頂は近い感じだった。

 先行してたもう一組の三人連れが降りてきて岩場で休んでいたので、振り返ると更に展望が開けていて、車山、霧ヶ峰の台地が見下ろせ、その向こうに乗鞍岳が浮かんでいる。
 霧ヶ峰は意外に雪が少なく、所々茶色の斜面が残っている。

岩塊地帯に出る。

 

眼下は車山、遠景は乗鞍岳

海老のしっぽ

 

 山頂へは全く樹木のなくなった岩塊地帯を、右にトラバース気味に登っていく。広い岩の斜面に赤いポールが立っていて、ルートを示してくれている。夏道の鎖が雪の中から少し顔を出しているところもある。
 海老のしっぽの付いた岩もあるが、少し溶けていて、最近は天気が良くて成長していないような感じだ。

 隣の北横岳の全貌が見えるようになってくると、前方に凍り付いた山頂ヒュッテが現れ、左に折れて少し登ると、そこが山頂の三角点だった。

蓼科山山頂ヒュッテ

 

 前回はガスの中で何もわからなかったが、山頂は中央がやや窪んだ皿状で、かなり広い。直径は300mくらいありそうだ。一面岩原で、真ん中に神社の祠と鳥居が立っている。

 視界は360度だが、取りあえず山頂の反対側まで横断してみる。岩がゴロゴロだが、平らなので歩きやすい。

三角点

 

山頂の中心に神社
遠景は左に乗鞍、右に穂高連峰

槍穂連峰

 

鹿島槍ヶ岳

左から高妻山、焼山、火打山

 

  反対側の縁からは遮るものなく北アルプスがずらりと並んでいる。穂高から白馬岳あたりまで見えるが、所々に雲が懸っている。その右には高妻山や火打山と思われる頸城の山々も見える。
 志賀高原や四阿山のあたりはやや霞んでいてはっきりせず、浅間山にも雲が懸っている。東の方角は一面の雲海で秩父の方は良く分からない。関東地方は天気が悪いという予報だった。

 山頂の真ん中の神社は鳥居に蓼科神社とあった。やや窪んだこの辺りは風が弱いので、神社の横の岩陰でランチにする。宿の給湯器のお湯は熱湯ではなかったので少々心配だったが、ポットのお湯でちゃんとラーメンになった。昨日から右下の歯茎がはれて痛いので、パンは残してラーメンだけ食べる。
 見上げると青い広い空が広がっている。

 

蓼科神社

最近のお気に入り出前一丁

 

縞枯れ帯、背後は北横岳

八子ヶ峰の白い稜線

 

 下りは同じ道を戻る。白い滑り台のようになった切り開きの道を、転ばないようにゆっくり下る。かつて12本爪のアイゼンはスパッツに引っ掛けて転びやすいと教わったが、さほど心配しなくても良さそうだ。
 眼下には2in1スキー場のゲレンデ横から八子ヶ峰の稜線が白く伸びている。かつて(2004年)「ていはい」の仲間たちとスノーシューやXCスキーで歩いた懐かしい稜線だ。またあの稜線を歩く機会があるだろうか。
 途中の2113m標高点で一休み。残りのパンをインスタントコーヒーで流し込み、のんびりと駐車場へ戻る。

 蓼科温泉で汗を流した後、HIROさんの情報を手掛かりに諏訪湖の御神渡り(おみわたり)を見に行く。6年振りの出現だそうで、テレビでも紹介されていた。諏訪湖北岸の赤砂崎で見られるとのことで、夕方にもかかわらず、湖岸の公園には人出が多かった。
 今年の御神渡りの規模は大きいのか小さいのか分からないが、目の前の物はせりあがった氷の高さがせいぜい40pといったところで、「まあこんなものかな。」といった感じ。とにかく凍った湖面を吹き渡ってくる風が冷たくて、長くは見ていられなかった。
 御神渡り 神の恋路か 竜の背か


 蓼科山ルートマップ


[山行日]   2018/2/22(木)
[天気] 晴れ     2018年2月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 21日 中央道 茅野I.C. →(R152大門街道)→ 白樺湖  [約21km]

22日 白樺湖 →(県道192号ビーナスライン)→ 蓼科山登山口  [約7km]

・スズラン峠やや南。20台程駐車可。トイレあり(一部は冬季も使用可)。登山ポストあり。
 

[コースタイム]
         
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
2:55 7:45 蓼科山登山口(1730m) 出発   -12℃
9:10 2113m標高点    
9:25 幸徳平    
10:40 蓼科山山頂(2530.7m) 0:35  
0:50 11:15  
12:05 2113m標高点 0:15  
0:45 12:20  
13:05 蓼科山登山口 着   0℃
4:30     0:50 全行動時間
登り 2:55       5:20
下り 1:35        
 
[地図] 蓼科、蓼科山(1/25000)
[装備] 12本爪アイゼン、ダブルストック

 

[温泉] 蓼科温泉
・蓼科高原の共同浴場。蓼科郵便局のすぐ前。
・入浴料500円。
・ボディソープはあるが、シャンプーはない。(番台で100円で売っている。)
・露天風呂なし。
・湯船の給湯口からボコボコ温泉の噴き出す音がする。
[風景印] 蓼科局
 (長野県茅野市北山4035)

・図案
  蓼科高原の夏、蓼科湖の冬

 (背後の山は左が蓼科山、右が北横岳と思われる。)