祖母山( そぼさん                                                [九州]  1592m 

 

 阿蘇山から

 九州山行、二日目。今日は今回の第一目的である祖母山に登る。
 今日の天気予報は曇り。しかし、明け方からショボショボ雨が降っている。昨日は予報が外れて雨は降られずに済んだが、今日は悪い方に外れているようだ。まあ、それでも梅雨時の天気なのでどうなるか分からない。ここまで来て登らないわけにはいかないので、とにかく出かける。

 五ヶ所から林道に入ったあたりから、前後に車がついて三台で連なって走ることになってしまった。前後の車はともにレンタカー。さすがは百名山だけあって、こんな天気でも遠方からの登山者が多いようだ。
 

 林道終点の登山口に着くと駐車場はほぼ満車。三台の車は前後して隙間に駐車する。ワンボックスの大型の車が多いのはツアー客が入っているからだろう。林道の途中ですれ違ったのもタクシーだった。

 相変わらず本降りではないものの雨は降り続いている。雨具を着こんで出発する。

北谷登山口駐車場

 

 登山道はまず、杉や檜の植林地の中を、山頂からは遠ざかるような方向に山腹を巻きながら登っていく。
 まだ新しそうな合目の標柱が立っていて、現在地を示してくれる。だいたい500m強の間隔で立っているようで、山頂が10合目なので約5q強の歩きということのようだ。

1合目の標柱


 

 何ヶ所か小さな流れを渡り、山腹を巻き切ると稜線に出る。ここからは尾根歩き。ミズナラ主体の広葉樹林になり、少し明るくなったが、背の高い笹が林床を覆っている。

 少し登るとその後は平坦な道が続く千間平。雲の中に入ったのか、ガスが出てきたが雨は止まない。平らな道は楽なのだが、水はけが悪くてぬかるんでいる。しだいに靴と雨具の裾が泥だらけになる。

 熊本、宮崎、大分の三県境を過ぎ、神原からの登山道が合わさる国観峠にかけても平坦な道が続く。
 ガスが出て薄暗いためか夜に鳴くトラツグミの声が近くで聞こえる。ヒ〜ッ・・・ヒ〜ッ・・・という、か細い声が雨の中を歩く気分に響く。
 国観峠は樹林が切れて開けていて、一角に赤い帽子をかぶった地蔵さんが立っている。

 

稜線に出る

 

三県境の標識

 

国観峠の地蔵

 国観峠からは山頂に向けて最後の登り。ぬかるみの急登はなかなかしんどい。ちらほら下山者もすれ違うようになってきた。
 9合目の標識から左に山腹を巻いてまず避難小屋に向かう。午後の方が天候が回復する可能性があるので、山頂は後回しにして先に小屋で昼食を取っておくことにする。

 

 九合目避難小屋はログハウスの立派なもので、シーズンの土日には管理人が入るという。入口にはやや広い雨よけがあり、その下に入るとホッとする。
 ちょうど団体さんが昼食を終えたところで、土間に入ることができた。内部は広いが、雨具を脱いで上がるのは憚られるので、狭い土間で昼食をとる。カップスープが暖かい。

 昼食を取り終わった頃、次の団体さんがやってきた、10人以上のツアー登山の人々で、土間に入り切れず、入口の雨よけの下で立ってお弁当を食べていた。雨のツアーはなかなか過酷だ。

九合目避難小屋の中

 

 午後からは止むかもしれない、という淡い期待は叶えられず、再び雨の中に出て山頂を目指す。相変わらずの樹林の中のぬかるみの道。山頂手前では下山してくる20人ほどの団体さんとすれ違う。これだけの人数は小屋に入れないだろうな、と心配になる。

 

 登り着いた山頂はガスの中。展望は全くない。あっちが傾山、こっちが阿蘇と想像するだけ。まあこんなこともある。

 山頂一帯にはここにもミヤマキリシマが咲いていて、ささやかに祝福してくれる。
 壊れかけた古い石造りの祠があるが、これが山名の元となった、神武天皇の祖母である豊玉姫を祀った祠だろうか。あまり大事にされている祠のようには見えない。しかし、何で母(玉依姫)ではなくて祖母を祀っているのだろう?

祖母山山頂

 

ミヤマキリシマ

 

山頂の祠

 ガスは一向に晴れそうもないので、下山にかかる。下山は真っ直ぐ登山口を目指して下る風穴コースをたどる。
 距離が短いだけに傾斜が急で、各所にロープや梯子が現れる。こちらもぬかるんでいて滑りやすい。

 当初は逆回りで風穴コースを登る予定だったが、いろいろなガイドブックがどれも尾根コースを登り風穴コースを下るようになっていたので変更したのだが、どちらのぬかるみもひどいので、やはり急傾斜の風穴コースを登った方が良かったかもしれない。梯子は登りの方が登りやすいし、ぬかるみの下りは滑る。
 それに、こちらの樹林は大木が多くて気持ちがいい。今日はガスで何も見えないが、所々展望ポイントもあるようだ。

下山の風穴コース

 

 途中、大岩の下に風穴がある。小さな看板があり、登山ルートから梯子を一つ分降りると風穴の入口に立てる。

 風穴というのだから風が吹いてくると思うのだが、今日は内外の気温差が少ないためか、あまり感じられない。
 ヘッドランプを出して照らしてみると急な斜面が下に続いていて10m以上下に岩だらけの地面がある。ガイドブックでは降りることも出来るようだが、あまり気持ちが良さそうなところではないので、遠慮する。

風穴の入口

 

 登りの尾根コースと同様に、こちらも林床にはびっしり笹が生えているが、一面に花を付けている。昨年、大川入山に登ったときにも笹の花を見たが、全国的な傾向だろうか。笹の花が咲くと枯れると言われているが、さてどうだろうか。

笹の花

 

泥だらけの脚

 

北谷

 風穴を過ぎ、どんどん下って林道に出る前に北谷の流れを横切る。大岩が埋め尽くし、新緑に囲まれた谷はガスが懸っていることもあり、幻想的で美しい。
 あまりにも脚が泥だらけなので、雨が小降りになったこともあり、雨具のズボンを脱いで北谷の流れで洗う。靴の泥も落とす。
 ところが駐車場に着いてみると、休憩所の横に蛇口があり、泥落としが出来るようになっていた。無理して沢で洗わなくても良かったのだ。でもまあ、綺麗な谷をゆっくり見られたからいいか。

 休憩所にはツアー客を運ぶ大型タクシーの運転手さんたちが集まっていて、情報交換をしている。阿蘇の方や高千穂の方から来ているらしい。どうやら自分たちと同じように明日は九重へ行くツアーもあるようだ。
 出発前にいろいろ調べていたら、阿蘇、祖母、九重の百名山の三山は車を使うと効率的に回れることもあって、多くの記録がヤマレコにアップされている。百名山ツアーもたくさん企画されていて、今はミヤマキリシマが咲くベストシーズンなので、ツアーの最盛期なのかもしれない。

さて明日はそのミヤマキリシマ咲く大船山に登る。

 大船山へ

祖母山ルートマップ


[山行日] 2018/5/31(木)
[天気] 雨     2018年5月の天気図(気象庁)
[アプローチ]

民宿「きん」(熊本県阿蘇郡高森町) → 高森殿の杉見学 →(R265、R325、町道、県道212号、県道8号)→  五ヶ所 →(町道、林道7q、うち4qダート)→  祖母山、北谷登山口    【約30q】
・15台程駐車可。トイレ、休憩所あり。他に林道沿いにも数台駐車可。

[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
2:30 9:55 北谷登山口駐車場発   小雨
10:40 主稜線に出る    
11:00 千間平   小雨+ガス
11:20 三県境    
11:45 国観峠    
12:25 九合目避難小屋(昼食) 0:25  
0:20 12:50  
13:10 祖母山山頂 (1756.4m) 0:05  
1:35 13:15  
14:10 風穴    
14:50 北谷 0:10  
0:05 15:00  
15:05 北谷登山口駐車場着   全行動時間
4:30     0:40 5:10
登り 2:50        
下り 1:40        

     <コースタイム4:50、登り2:30、下り2:20>「花の百名山登山ガイド下」
 

[ガイドブック] 「花の百名山登山ガイド 下」 (山と渓谷社刊)

 

[宿]

旅館「名山」
・九重西麓、筋湯温泉の宿。温泉街からは少し離れている。
・一泊二食6,630円(税込)
・古い旅館だが居心地は良い。値段の割に食事も美味しい。
・共同浴場である「うたせ湯」のタダ券もあるが、宿の露天風呂が二つあり、眺めがよく気持ちがいい。