奥三界岳(おくさんがいだけ)                                     [木曽] 1811m

  

 5月25日に新型コロナウイルスの非常事態宣言が解除され、6月1日には東海三県の移動自粛も解除されたので、まずは近くの山ということで奥三界岳に向かう。本当は今年の5、6月は徳島県の三嶺や岩手県の焼石岳を予定していたのだが、まだ観光目的の移動は自粛が呼びかけられているので致し方ない。

 車は川上(かわうえ)林道のゲートまで入れるが、トイレがないので手前の夕森キャンプ場の駐車場で車中泊。キャンプ場はコロナウイルスのため今週末から営業開始らしいが、トイレは使えた。
 駐車場がわずかに傾斜していたので安眠できず、4時半の目覚ましで起きた時には気分が悪かった。食欲がなくてもどれかは食べられるだろうと昨夜いろいろ買い込んでおいた 内で、サンドイッチだけ食べて、ゲートまで車を移動させ出発する。

 ゲートの横を抜け、しばらくは舗装された林道を歩く。右手の谷川の水が澄んでいてきれいだ。近くにあるらしい竜神の滝は見えない。ミソサザイの複雑な歌が響く。
 忘鱗の滝を過ぎ、落差の大きい銅穴の滝も左手に見送るとS字のカーブの先に広場があり、そこから山道に入る。

忘鱗の滝

 

吊橋 枯れた笹

 

  少し下って吊橋を渡り、少し登り返してアゼ滝への分岐を右に見送り、後はひたすらジグザグの山道を登る。基本的にはヒノキの植林地と思われるが、広葉樹も混じっている。なぜか林床の笹(スズダケか?)が一面に枯れている。近年開花したのだろうか。そういえば4年前に大川入山 に登った時に笹に花が付いていたのを思い出す。
 アオバトのちょっと不気味な鳴き声が遠くから聞こえる。

 

 登山道の周りはヒノキ主体の森が続くが、いつの間にか林床の笹が復活していた。笹枯れは一部だったようだ。
 植林地の中に所々大きな切株が残っている。根株の直径が1m近くあるものもあり、天然のヒノキ林を伐採した後、再び植林したようだ。

 旧恵那郡の川上、付知、加子母辺りは裏木曽と呼ばれ、江戸時代には木曽と同様に尾張藩の御留め林で、厳重な森林管理がされていたところだ。現在でも国有林で、伊勢神宮の遷宮の用材も多くはここから切り出される。

植林地の中の大きな切株

 

林道の先に夕森山

 

エゾノタチツボスミレ?

 

 登山道の傾斜がしだいに緩くなり、再び林道に出る。
 縦断勾配がきついところは所々舗装がしてあるが、基本的には砂利道。陽にあぶられる暑い林道歩きを予想していたが、意外にも木陰の道で気持ちがいい。特に歩き始めは広葉樹に囲まれて明るい森歩きの感じだ。
 遠くに見える稜線が山頂付近かと思われたが、どうも一つ手前の1708mのピークのようだ。

 前方の笹原の稜線の下に、小さく昇龍の滝が見え始め、橋を渡ると迂回路の標識に出会う。滝見物は帰りにして、林道をショートカットする山道に入る。

 

1708m峰

 

 階段の急な登りだが、すぐに上の林道に出る。しかしこの林道はほとんど山道と変わらない状況で、周りから藪に攻められ、落石に埋められ、わずかに見える路面のコンクリート舗装がなければ林道だったとは信じられない状態だ。
 落石に埋まってただのガレ場になってしまっているところもあり、頭上に注意しながら足早に通過する。

 左手前方の谷の奥に奥三界岳と思われる山頂が見えるが、 同定に自信はない。なにせこの辺りの山は山頂まで樹林に覆われ、同じような形をしているので見分けがつかない。

 

迂回路の標識

 

落石に埋まった林道

 

一番奥が奥三界岳あたり

 

 崩壊地を過ぎるとすぐに壊れた作業小屋が現れる。本来はここが林道の終点で、ここからまた山道になる。

 山道の入口に立つミズキの木の下で二度目の朝食。おにぎりとシュークリームと金剛山の時に道の駅で買った不知火ジュレを食べる。寝不足の頭が少しまともになってきた感じだ。

壊れた作業小屋

 

 梯子状の急な木段を登るとしばらくは植林地の急登 になるが、やがて一面笹に覆われた伐採跡地に出る。「枯木のタオ」と呼ばれる伐採地で、所々枯木が立っているが、リョウブ、トチノキ、カラマツなどもポツリポツリと生えている。 ここもかつてはヒノキ林だったのだろうか。

 水場を過ぎると岩だらけの沢筋を登るようになる。わずかだが水も流れている。陽射しは強いが風は涼しくて、大気が不安定なのか笹の斜面をガスが上がってくる。稜線の先はもやっている。

枯木のタオ

 

ガレた沢筋を登る

 

稜線の笹原

 

 稜線に上がるとまた植林地の中へ。広くなった稜線を少し下り、またゆるゆると登る。疲れがたまってきて左足が攣りそうになり、しばし立ち止まる。さすがに登りコースタイム4時間20分はきつい。
 山頂手前に湿地があり、鏡池というミズゴケに囲まれたきれいな水たまりもある。登山道の周りに、まだミズバショウの花が咲き残ってくれていてうれしい。 

ミヤマシキミ

 

湿地帯にミズバショウの葉っぱ

 

ミズバショウ

 

 山頂には木造の壊れそうな展望台があり、西側が開けている。湿気十分の大気なので展望は期待していなかったが、視界の右端 の木立の上にぼんやりと御嶽が見えた。期待していなかっただけに、とてもうれしい。
 反対側には樹林の隙間から台形の恵那山も見える。開けた西側は特徴のない山ばかりで、山座同定はとても無理だ。右手に続く阿寺山地の先にあるのが小秀山かと想像するくらいだ。

山頂展望台

 

左手に恵那山

 

右手に御嶽

 

  展望台の上は暑いので、下の木陰で昼食。といっても先ほど二度目の朝食を摂ったばかりなので、いなり寿司3個とポテトチップス、それにコーヒー。
 かなり疲れがきていたが、涼しい風に吹かれて次第に回復する。下界は30℃越えらしいが、さすがにこの標高では20℃くらいだ。
 山頂付近にはシャクナゲも咲いていて、これまたうれしい。久しぶりに山でシャクナゲを見たような気がする。帰ってから調べてみたら、岐阜県では飛騨、奥美濃あたりでホンシャクナゲが見られるが、アズマシャクナゲが分布しているのは東濃のこの辺りだけらしい。

 

アズマシャクナゲ

 

アズマシャクナゲ

 

 下山は同じ道を下る。
 う回路のところで登りにパスした昇龍の滝を見に行く。水量は少ないが落差はかなりあり、ごつごつした岩肌を流れ落ちる姿は昇龍に見えなくもない。
 ガイドブックに載っている滝の写真には、手前に朽ちかけた橋が写っているが、橋げたは崩れ落ちてしまったようで、コンクリートの橋脚だけが立っている。

 下りの林道で対岸の山腹を見上げていると、針葉樹の斜面の中に明るい緑がたくさん混じっているのに気が付く。木曽はヒノキ王国ではあるが、意外にも広葉樹もかなり生えていて、 林道沿いにもヤマザクラやマルバノキなどが目立つ。
 登る前は植林地だらけの変化のない山だと覚悟していたし、銅穴の滝に下りてくるまでひとりのハイカーにも会わなかった知名度の低い山だけれど、新緑あり、滝あり、笹原あり、花ありの予想外におもしろい山だった。

昇龍の滝

 

青もみじ

 

銅穴の滝

 

奥三界岳ルートマップ


[山行日] 2020/6/3( 水)
[天気] 晴れのち曇り     2020年6月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 2日 中央道・中津川IC (R19号、県道3号 、県道411号)→  夕森キャンプ場駐車場
 [約26km]    
・夕森キャンプ場の竜神ゾーンの駐車場で車中泊。トイレあり。
・林道ゲート前には6〜7台の未舗装の駐車スペースあり。トイレなし。登山ポストなし。熊注意の看板あり。
[コースタイム]  
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
1:25 5:45 林道ゲート(約720m) 発   15℃
6:10 銅穴の滝    
6:15 山道に入る    
7:10 林道に出る(約1200m) 0:15  
1:05 7:25  
8:30 壊れた作業小屋(約1450m) 0:15  
1:00 8:45  
9:45 1700m地点 0:10  
0:25 9:55  
10:20 奥三界岳山頂(1810.7m) 0:40 20℃
1:25 11:00  
12:10 壊れた作業小屋    
12:25 昇龍の滝 0:15  
1:25 12:40  
13:20 林道から山道へ    
14:05 銅穴の滝 0:05  
0:20 14:10  
14:30 登山口駐車場 着   全行動時間
7:05     1:40 8:45
登り 3:55        
下り 3:10        

 

[地図] 奥三界岳(1/25000)