京ヶ倉( きょうがくら)                           [中信] 990m 

 

  二日間で二座登る予定だった信州の旅。一日目は餓鬼岳から北東に伸びる尾根上に位置する鍬ノ峰。天気は晴れの予報だったが朝からどんよりと頭上に雲が広がり、登山口では雪がちらついていた。少し登りかけたが雲が切れる様子もなく、北アルプスの展望が魅力の山なので諦めて下山。安曇野の周辺を紅葉を求め 、ぶらぶらして一日を過ごす。

 翌日は霧の朝。登山口の手前に獣除けのゲートがあり、ゲートの横に車を止める。最初、ゲート右手のネットフェンス沿いが登山道かと思ったのだが、歩いてみると道らしくないので、ゲートを開けて舗装道路を進む。
 墓地の前を抜けて5分少々歩くと、駐車スペースのあるホントの登山口に着いた。登山口にはイラストマップの看板が立っている。

登山口手前のゲート

 

 登山口からは霧の中のコナラ林を進む。落ち葉が霧にぬれて滑りそうだ。コナラ、シロモジなどの黄葉の落葉樹に、赤松が混じる尾根道を登っていく。霧で見えないが、下の国道を通る車の音が山腹に沿って昇ってくる。
 だんだん道は急になり、梯子やロープも現れてくる。足元に岩が多くなってくる。

 高度が上がるにつれて上空が明るくなり、霧の上に出たようだ。木の枝の間から見下ろすと、眼下は一面の雲海状で、 紅葉の尾根が島のように霧の海に浮かんでいる。なかなか幻想的な景色だ。

こちらが登山口

 

 

 赤松の間から展望が利くところがあり、「おおこば見晴台」の立札がある。雲海の向うに蝶ヶ岳、常念岳、大天井岳、有明山あたりの北アルプスが立ち並び、手前に山裾を霧で隠した丘陵が横たわっている。
 今年の春登った安曇野IC近くの光城山からの常念岳は、前常念の三角形が目立って鋭い山という感じだったが、ここからの常念は台形の重みのある山に見える。
 残念ながら蓮華岳から北の峰々は雲の中に没している。

霧に浮かぶ紅葉の尾根

 

南の長峰山方面

左から常念岳、大天井岳、有明山

 

 しばらく佇んでいるとだんだん霧が晴れてきて、眼下の景色が広がってくる。大きく蛇行する犀川のカーブがダイナミックで、直線的に並ぶ遠景のアルプスの峰と対比を成している。蛇行する川の内側にできる小さな平地に 、家々が寄り集まって集落をつくっているのが良く分かる。

 

霧の向うにアルプスが連なる 霧に沈む生坂村

 

 「おおこば見晴台」から少し登ると標識に導かれて尾根から分かれ、稜線の西側の山腹をトラバースするようになる。稜線間近の山腹はかなり傾斜がきつく、崖になっているところもある。崖は白い岩で凝灰岩のような感じだが、 合っているかどうかは分からない。
 トラバースの後、また上りになり、山頂が間近に見える稜線に登りつく。 

 ここからは赤松の生える明るい稜線歩き。大きなアップダウンがない歩きやす道だが、その先に露岩の馬の背が待っている。

トラバース道沿いの白い崖

 

赤松落ち葉の稜線

 

馬の背の岩場から見上げる京ヶ倉山頂

 馬の背は狭い岩尾根で、高度感があって少々緊張するが、ある程度の幅はあるので風さえなければさほどの恐怖感はない。
 馬の背からの展望は抜群で、眼下の犀川の穿入蛇行(貫入蛇行)が美しい。円形にカーブする犀川に突き刺さるように、登ってきた尾根が延びている。先ほどは雲の中だった餓鬼岳や昨日登る予定だった鍬ノ峰も見える。 尾根の東側の展望も開け、遠く四阿山や浅間山も見える。
 巻き道もあるようだが、展望が楽しめないので馬の背がおススメ。

 

餓鬼岳

 

鍬ノ峰

 

 

蛇行する犀川

 

頂上直下の鎖場から剣刷山を振り返る

 

 馬の背から頂上まではわずかな距離だが、険しい岩場の登り。背の低い赤松が生えており、鎖も付いているのでそれほど危険な感じはない。しかし、さほど登山者が多い山ではなく、怪我をしたらアウトということになるので慎重に登る。
 振り返ると、先ほど馬の背から見た京ヶ倉山頂と同じような山が背後に競り上がっている。こちらは登ってきた尾根の突き当たりになる、剣刷山(けんずりやま)のようだ。

 

京ヶ倉山頂

 

隣りのピーク大城

 京ヶ倉山頂は意外に広く、丸太の小さなベンチもある。風もなく穏やかで気分がいい。霧はすっかり晴れたが、アルプス方面はまた雲が湧いてきた上、モヤってきて少し霞んでいる。
 北側の台形のピークは大城(おおじょう)で、戦国時代にはこの地方を領有していた仁科氏の一族の丸山氏が城を築いていたとのこと。険しい地形なのでさぞ堅固な城だったろうが、麓との行き来が大変だったろうと思われる。
 一方こちらの京ヶ倉はのろし場・見張り台だったようだ。ここから大城へ縦走するトレッキングルートもあるのだが、下に車が置いてあるのでここで引き返す。

 

おおこば見晴台から生坂ダムを見下ろす

 

紅葉のコナラ林

 帰りは登ってきた道をそのまま下る。おおこば見晴台からは、登りの時、霧に隠されていた生坂ダムの三日月のようなダム湖がきれいに見下ろせる。再び紅葉したコナラ林を抜け、登山口に戻る。誰も登ってこないかと思っていたが、下山するまでに三組4人の登山者とすれ違った。

 

 

常念岳

 

左から大城、京ヶ倉、剣刷山 (麓の万平から)

アイコンをクリックするとマップがでます。


[山行日] 2016/11/17(木)
[天気] 霧のち晴れ          2016年11月の天気図
[アプローチ]

17  道の駅「アルプス安曇野ほりがねの里」 →(R19)→ 京ヶ倉、万平登山口ゲート
          前         [約23q]

     ・ 登山口に5〜6台駐車スペース。簡易トイレあり。

[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:55 7:45 万平登山口ゲート前 発   1℃
8:40 おおこば見晴台 0:15  
0:45 8:55  
9:15 稜線分岐点    
9:40 京ヶ倉山頂(990m) 0:20  
1:05 10:00  
10:20 稜線分岐点    
10:35 おおこば見晴台    
11:00 万平登山口    
11:05 万平登山口ゲート前 着   全行動時間
2:45     0:35 3:20
登り 1:40        
下り 1:05        
[帰り道]

17日  万平登山口ゲート前 →(R19 )→ 安曇野IC    [約20km]

[登山情報] 生坂村HP 「大城・京ヶ倉トレッキングのご案内」
[地図] 信濃池田 (1/25000)

 

[温泉] 安曇野しゃくなげの湯

・長野県安曇野市穂高有明7726番地4
・日帰り温泉施設。700円。
・9:30〜21:30。毎月第一水曜日定休。
・露天風呂、シャンプー、ボディソープ、ドライヤーあり。
・ロビーが広くゆったりできる。レストラン、売店併設。
[風景印] 松川局
 (長野県北安曇郡松川村7019-3)

・図案
  北アルプス、レンゲツツジ、村のシンボルマーク・スズムシりん太