藤原岳(天狗岩)(ふじわらだけ・てんぐいわ)                              [鈴鹿] 1171m

 

 久々にスノーシューを物置から出してみたら、ゴムバンドが全て硬化してバラバラに砕けていた。随分前の、スノーシューが流行り始めた頃に買ったデナリクラッシックという 製品だが、インターネットで探してゴムバンドだけ入手することができた。しかし1本756円。8本すべて替えたら送料込みで6500円もかかってしまった。悔しいのでどこかで使いたいと考え、いろいろ検討した結果、久しぶりに鈴鹿の藤原岳に登り、頂上台地を散策することにした。

 藤原岳に登るのは三回目。しかし前回は1982年という33年も前のことで、ほとんど何の記憶も残っていない。その時の写真を見ると、1月なのに山頂でもあまり雪がなく、 雪の白よりもブッシュの茶色の方が目立つような様子だった。ネットで調べると今年はそんなことはなく、一面雪原になっているようだが、当時は暖冬だったのだろうか。

 以前、聖宝寺のルートは荒れていると聞いたことがあるので大貝戸から登る。 大貝戸の登山口に駐車。隣りに立派な休憩所があり驚く。トイレ、休憩室、靴洗い場などが完備。花のシーズンになると、登山者が多いんだろう。今日でも10台くらい車が止まっている。

立派な休憩所

 

神武神社の鳥居をくぐっていく

 

休憩所のすぐ先に神武神社があり、登山道はその鳥居をくぐり、社殿の横を通って杉の植林地に入っていく。登山道についても全く記憶がない。

 登山道には合目を表示する看板が立っていて、二合目の標識の横には岩の上に石仏が座っていた。藤原岳が信仰の対象になっていたとは聞いたことがないので、どういう謂れがあるのか少々気になる。

 ふと気が付くと杉林の下はユズリハだらけ。芽生えたばかりのものから、高さが3m以上ありそうなものまで、一面に生えている。赤い葉柄が暗い杉林の中で わずかに暖かさを感じさせてくれる。

 四合目近くになると杉林を抜け、明るいミズナラの林になる。それでもまだ林床にはユズリハが所々見られる。

  

二合目の石仏

 

ユズリハ

 

四合目付近のミズナラ林

 

 道はしばらく左が谷の山腹をトラバースしていく。五合目付近は傾斜が緩く、単調な道に少々飽きてくる。
 鈴鹿だからと気楽な気持ちでやってきたが、よく考えてみれば標高差は1000mもあるのだ。スノーシューを楽しむためのアルバイトにしては少々しんどいな、というのが正直な気持ち。 スノーシューは背負うと結構重いのだ。

 道は再び杉林に入り、真っ直ぐ行く道と分れ、先行者に続いて右の尾根に近い道を行く。やや傾斜がきつくなり、登山道に積雪が現れ始める。
 いきなり七合目の標識が現れたという事は真っ直ぐ行く道が正規のルートで、そちらに六合目の標識が立っているのだろう。

  だんだん雪が多くなり、聖宝寺からの道が合流する八合目付近は一面雪になっていた。ここからは夏道を離れ、冬季登山道になっている林の中の急な斜面を直登する。
 アイゼンを付けようかと思ったが、先行者のステップがしっかり付いているので、そのまま行けるとこまで行くことにする。雪は凍結はしていないが、トレースの無いところは表面がやや固くなっていて、キックステップでもあまりつま先は食い込まない。 といって安心していると、ズボッと踏み抜くこともある。
 傾斜はかなり急で、両手のストックに頼って体を引き上げていく。

八合目からは冬季登山道

 

 雪の尾根道に出て、視界が開けると九合目は近い。空はぼんやりとベールがかかり、遠望も利かない。目の前にある養老山地までがやっと見えるくらい。黄砂も飛んでいるかもしれない。

 九合目を過ぎると再び道はミズナラ林の急な斜面を登るようになる。
 もう下山してくる人と何人かすれ違う。皆、軽アイゼン着用だが、こちらは相変わらずツボ足のまま登る。

九合目付近から俯瞰

 

 傾斜が緩やかになり、左へトラバース気味に歩いていくとやっと山頂台地の一角に到着。目の前には避難小屋の藤原山荘。振り返ると藤原岳の山頂である展望丘。意外と遠くに、そして高く見える。
 予定ではまず展望丘に登り、それから天狗岩に行くつもりだったが、ちょっと両方はしんどいので、スノーシューがより効果的な天狗岩に向かうことにする。まあ、展望丘は33年前とはいえ一回登ってるし・・。

 

藤原山荘(左が避難小屋、右が物置、間がトイレ)

 

山荘前からの藤原岳山頂

 

 

 藤原山荘の裏に回り、久しぶりなので少し手間取りながらスノーシューを履く。あたり一面大雪原と思いきや、半分は雪が溶けてカルストの石灰岩がむき出しになっている。おいおい、せっかくスノーシューを担ぎ上げたのに・・。

 まあ仕方ないので雪のあるところを選んで丘を登っていくと、周りは地面が露出した雪の岬に取り残されてしまい、左手に回り込みながらクリアする。

藤原山荘の裏はこんな感じ

 

 丘を登りきると前方が開け、天狗岩に向かって台地が広がる。幸いなことに雪はしっかり残っている。

 こちらの方面は初めて来るので夏道の位置が分からない。夏道は一番北寄りの丘の上を通っているようだが、緩やかな起伏が続く地形で、読図がしにくい。一番高い方が天狗岩であるので、歩けるところを選んでそちらの方向を目指す。

 雪面はかなり締まっていて歩きやすい。藪に阻まれて回り道するところもあるが、ほとんどのところは明るい林の下を快適に進むことができる。ガスに巻かれると迷いそうだが、今日はそんな心配もない。
 ほとんど溶けてしまったワカンの跡が微かに雪面に残っている。

天狗岩の方向

 

 幾つかのなだらかな丘を越え、雪面から飛び出した標識に導かれて天狗岩に到着。ピークは雪に埋もれていて、岩ではなく雪の岬になって崖の上に伸びている。

 目の前には山荘前から見た時とは全く違う姿の藤原岳が、深い谷を隔てて聳えている。天狗岩より藤原岳の標高は低いはずだが、尖った姿はこちらよりも高く見える。なかなかいい眺めだ。

 藤原の先は鈴鹿の連峰が続くはずだが、霞んでいて竜ヶ岳、釈迦ヶ岳がやっと見えるというところ。

天狗岩から藤原岳を望む

 

 右に目を転ずれば、大きな御池岳が横たわる。あの台地も魅力的だ。春と秋には登ったことがあるが、雪の季節の御池は近付き難い。
 さらに右手の林の上にはぼんやりと霊仙山が見える。こちらの山上台地は更に白く、広く見えてこちらも魅力的だが、霞んでいてはっきりしない。さらに右手にあるはずの伊吹山は霞の中だ。

 

御池岳

 

霊仙山

 

 十分展望を楽しみ、天狗岩の下でヒルにする。天狗岩の下には小さな雪庇が出ていて、その下で風を除ける。昼飯は前回の竜ヶ岳に続き、今日もチリトマトヌードル。ピリ辛で食が刺激され、カレーヌードルよりもさっぱりしていて食べやすい。しばらく山の昼飯はこれになりそう。
 食後のコーヒーを飲もうとカップを出したら、コーヒーを持ってくるのを忘れていた。せっかく湯を多めに持ってきたのに残念。ペットボトルの紅茶で我慢する。

 

天狗岩の下でランチ

 

今日もこれ

 

 帰りは来た道を戻るが、勝手がわかっているので歩きやすい、気持ちのいいコースを気ままに進む。ミズナラ林の柔らかい陽射しの下を歩くのはスノーシューならではだ。

 かつては藤原山荘周辺はスキー場であったという。もちろんロープウエイもゴンドラもなく、皆歩いて山麓からスキーを担ぎ上げ、リフトの無い斜面を登っては滑りしていたらしい。昔の人はすごいなあ。今ではとても考えられない。スノーシューを担ぎ上げるだけでもブツブツ言う奴がいるのに。(^^ゞ
 娯楽に飢えていたのかもしれないが、時間もゆったりと流れていたのだろうな。

藤原山荘と藤原岳(展望丘)
 

 藤原小屋からの下山。もう雪も緩んでいるだろうとアイゼンを着けずにそのまま下る。少々滑りやすかったが、キックステップで何とか下れた。七合目から下は雪もなくなり、今度は泥撥ねに気を付けながら降りる。
 下まで戻り、神武神社に無事の下山を感謝してお参りする。


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[山行日]   2015/2/24(火)
[天気] 薄曇り    2015年2月の天気図(気象庁)
[アプローチ] 桑名I.C. →(R421、県道5号、R306)→ 大貝戸登山口駐車場     [約22km]
・20数台駐車可能。
・登山者用休憩所があり、トイレ、靴洗い場など完備。
[コースタイム]
  行動時間 発着時刻 地点名 休憩時間  
0:45 8:50 大貝戸登山口駐車場(140m) 出発   8℃
9:35 四合目 0:05  
1:50 9:40  
10:20 七合目    
10:35 八合目 (830m)    
11:30 藤原山荘 (1090m) 0:20  
0:35 11:50  
12:25 天狗岩 (1171m) 0:35  
0:20 13:00  
13:20 藤原山荘 0:10  
0:50 13:30  
14:20 五合目 0:05  
  0:40 14:25  
15:05 大貝戸登山口駐車場 到着   全行動時間
5:00     1:15 6:15
登り 3:10        
下り 1:50        
 
[地図] 篠立、竜ヶ岳(1/25000)
[装備] スノーシュー、ダブルストック、アイゼン(使用せず)

 

 [温泉] 阿下喜温泉 あじさいの湯
・いなべ市北勢町阿下喜78
・入浴料500円、木曜定休。(平日なのに地元の老人で混んでいた。)
・シャンプー、ドライヤーあり。
・露天風呂もあるが、展望なし。
[風景印] 東藤原局
 (三重県いなべ市藤原町石川927−1)

・図案
  藤原岳、春日神社の獅子舞、聖宝寺