米国のアマチュア無線ライセンスの取得

  
米国のアマチュア無線ライセンス(以下、米国のライセンス)は日本でも取得が出来ます。

米国のライセンスは、米国に在住し、アマチュア無線局を開局する以外は、積極的なメリットが無いと思いますが、米国のコールサインを持て、米国内等での移動運用時に米国のコールサインが使える等、魅力的な所があります。この様な理由で米国のライセンスを取得する人も多いと思いますが、私もその一人でした。

米国のライセンスを取るための詳しい解説は、既に、諸氏のホームページに掲載されていますので、そこに譲るとして、ここでは、私の体験記を、若干の解説を交えお話ししようと思います。

Top > 米国のアマチュア無線ライセンスの取得  
 

日本での受験

米国のライセンスの試験は、VE(Volunteer Examiner)という有資格者の団体(以下VEチーム)によって実施されます。

VEチームは多くの国にあり、日本にも東京、大阪、名古屋、福岡等にあります。各VEチームは、それらを統括する米国内の組織である、VEC(Volunteer Examiner Coodinator :ARRL、W5YIグループ、W4VEC等がある)に所属しており、私が受験した福岡のチームは、W5YIグループに所属していました。

福岡チームで受験をしたきっかけは、九州で勤務をしていた時に、米国のライセンスを取得したいと思い、所属した北九州DXクラブ(NKDXC)に、福岡のVEチームを紹介して頂いたことからです。日本でのVEチームに関する情報は、検索エンジンで「FCC試験」と入れ検索すると、得られると思います。

W5YIグループ


受験準備

既に、電信の試験スピードは5wpmとなり、大変なのは学科だけになったと思います。学科試験は、ARRLが規定した問題集(Question Pool)から出題されるので、それさえ覚えておけば良いと思います。総ての問題は4択なので、何回か問題を繰り返し解くうちに、初めの部分を読むと選択肢(A〜D)が判る様になり、試験当日の回答時間の短縮に大いに役立ちます。

問題は法規と工学に分かれ、受験する資格により問題数が異なります。学科は初級から受験する必要があり、日本のライセンスの様に、いきなり上級の受験は出来ません。

法規は記述内容を問う問題よりは、むしろ、解釈を問う問題が多く、中には「朝の通勤ラッシュ時にレピーターで控えるべき交信内容は次のうちどれか」という様な、常識的な判断で答えられる問題もありました。

工学は、電気回路の一般理論(テブナン、交流回路のベクトル、等)からも出題され、問題集に出ている理論は、一応、総てを理解をしておいた方が良いと思います。

問題集の一例


受験記

3月に転勤となり、受験を諦めていた時に、北九州DXクラブの会長の紹介で、9月に福岡で試験がある事を知り、早速申し込み、8月初旬から、初級であるNovice級の問題集の勉強を初めました。Noviceの問題集を何回か勉強しているうちに、さらに上級の資格も受験したくなり、受験直前までに、なんとかExtraの問題集まで到達しました(受験をした当時は、Novice→Technician→General→Advanced→Extraと資格が5段階ありました)。

試験開催の時間内であれば、複数の資格を同時に(但し、合格発表を待って、次の資格に進む)受験できるので、私はNoviceからExtraまでを受験したい旨を、VEの方に告げました。しかし、「5段階を一度に合格するのは無理」と言われ、一応、時間内で出来る範囲で受験する事になりました。

まずは、電信の試験がありました。電信は学科と異なり、最上級のExtraの合格条件となる、25wpmから受験し、不合格になった場合は、スピードを落とし受験します。私は25wpmに合格する事ができました。

学科は、前述の通り、Noviceから受験します。回答終了後、すぐさま採点が行われ、合格発表があります。合格後、次の段階に進みます。私は、結局Extraまで合格しました。

既に、CWは試験速度が5wpmとなり、易しくなった今では、問題集を繰り返し解き、良く覚えれば、合格が点が取れると思いますが、この為には、やはり、実直に勉強をする事が必要です。

合格証書


免許の発給

VEチームがVECに試験結果の報告を行い、その後、1ヶ月くらいで免許が送られて来ます。但し、免許の送付先は米国内に限り、このため、受験の前提条件として、米国内に郵便物を受け取る住所(メーリングアドレス)を準備しておく必要があります。

最近は、メーリングアドレスを提供するサービスもあるみたいです。FCCのWebサイトで、コールサインの発給(=免許の発給)が確認できれば、免許が手元に到着する前に、受験した有資格者として、運用を開始することが出来ます。

携帯用のライセンス


VEの登録

福岡チームのボランティア試験官(VE)の方々にお世話になり、私もVEとして貢献したいと思い、VEの申し込みを行いました。

VEの申し込みは、特別な審査はなく、Extraの資格があれば、Extraまでの試験のVEとしての資格が与えられます。VEとしてのIDカ−ドがVECから発行され、プライドを持つ事が出来ます。

VEのIDカード


FRNの取得

私が資格を取得した当時は、この制度が有りませんでしたが、その後、FCCで免許管理システム(ULS)が導入され、FCCに関わる総ての手続きは、ULS上で事前に取得したFCC登録番号(FRN)をもとに行われる様になりました。

登録は、FCCのWebサイト上で実施します。米国籍を有する人は、SSN(Social Security Number)をもとに登録をしますが、外国人である私はSSNが無いので、「外国人」として登録をする事となります。

FRNの確認画面


コールサインの変更

米国では、既に失効となり、空いているコールサインを、申請をすればもらう事が出来ます(Vanity Callsign System)。

米国のコールサインは、資格別に体系が決まっており、上級になるほど短いコールサインが割り当てられます。免許取得時には、従来利用していたコールサインを継続して使用するか、資格別の新規のコールサインを割り当てて貰うかの選択が出来ます。新規のコールサインを希望する場合は、アルファベット順に割り当てられるコールサイン(Sequencial Assignment Callsign)が来ます。

当初、私は”AF4FL”というコールサインを割り当てられましたが、あまり言いやすいコールサインではなく、電信では符号が長くなるので、Vanity Callsign Systemを利用してコールサインの変更をしました。それで貰ったコールサインが、”K1UP”です。コールサインの空き概況は、QRZ.com等で調べられます(コールサイン・リストに載っていないものから空きコールサインを推定する)。


ライセンスの更新

米国のライセンスは10年に1回更新が必要です。失効した場合、再度ライセンスを受けるためには再受検の必要があります。更新手順の概要をライセンスの更新のページにまとめましたので参照願います。