和文CWへの復帰

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1.はじめに

 私がCWをやらなくなってから20年以上経ちますが、退職後に時間が自由になったのでCWへの復帰を目指しました。ラバー・スタンプQSOは直ぐに出来るようになりましたが、間もなく飽きてしまい、敷居が高かった和文QSOへの復活を目指しました。

 以前はQSOで受信文を書き取っていたので、暗記受信によるQSOが高速で出来る事を目標としました。ここではその練習過程を紹介します。

 なお、符号を覚える練習方法や打鍵操作の練習方法の説明は、他に譲る事とします。


2.私のバックグランド

  個人のバックグランドは練習方法の前提となるので、紹介しておきます。

  • 45年程前の学生時代に1通の実技免除の訓練を受けました。通信士は受信電文を「受信用紙に正確に書き取り」、送信は「電報用紙の電文を正確に打つ」事が求められます。従って、暗記受信をしたり頭の中の文章を打鍵する訓練はしませんでした。

  • その頃、和文QSOを数年間楽しみましたが、電文は殆どを書き取っていました。

  • 約20年前に数年間和文QSOに復帰しましたが、相変わらず殆どの電文を書き取っていました。


3.練習のプロセス

 右の一覧表の通り徐々に受信速度を上げながら、暗記受信の練習をしました。その過程で以下の気付きがありました。

 (0)暗記受信のメカニズム

 練習の前にメカニズムを理解することは大切なので、私が理解している内容を紹介します。
 @符号を聞く
 A符号変換(符号を文字と認識)する。
 B変換した文字を頭の中で繋げ文章に組立る。

 暗記受信は頭の中で符号変換と文章に組立る作業をするため、書き取りよりも一文字を処理する作業時間は短いですが頭を使います。最初は符号変換に意識が行き(例えば、ある符号を聞いたときに、これは「キ」だったか「ミ」だったかを迷う等の一瞬の「まごつき」が発生する)、なかなか文章になりません。

 通信士は実用的な速度(85文字/分くらい)で連続した短い符号が来ても安定した書き取りが出来るように、数文字分を遅れて受信する時があります。当初はこの「遅れ受信」の癖が付いていたので、変換した符号を文章に組み立てる前に次の符号変換をしてしまい、これを繰り返す結果、意味が取れません。この為、遅れ受信よりも「符号変換と文章組立」を即時にする練習が良いと思いました。

 (1)初期段階

 この段階では、上記ABを概ね符号と符号の間もしくは、若干次の符号に被って行ないました。当初はAでの「まごつき」時間が長く、次の符号変換に大きく被ります。この為、連続した短い符号がくると前のABの最中に次のABに迫られ、頭の中の処理が破綻し符号が抜けます。

 これを防ぐために、次の符号が来る前に符号変換をする訓練をしました。符号変換のまごつきが若干残っている間は可なり疲れます。

 まごつきを減らす一つの方法として、符号変換後に声を出して読む事を試しました。受信速度は遅くなりますが、符号変換の曖昧な部分が明確になります。これは、まごつきを減らすのに有効でした。

 (2)迷いが多い段階

 練習途上では誤変換が多く発生します。例えば、符号の脱落(「の」と「う」)、符号の反転(「き」と「み」)、長点短点の反転(「て」と「き」)等。これらを迷いながら受信しましたが、変換の正誤にこだわると、符号変換のまごつき以上に時間を要し、多くの符号が抜けます。誤変換で少しくらい文章がおかしくても、どんどん前に進むことが大切だと思いました。実際のQSOではある程度は頭の中で誤り訂正が働き、概ね問題はないと思います。

 (3)迷いが少なくなった段階

 受信にある程度慣れると、先読みして受信する事があります。例えば、頻出定型文として「とおもいます。」がありますが、「とおもうのですが、・・・」と来た場合「とおも」まで受信した時点で次を良く聞かずに「います」が来ると予想し、その上で実際は異なる符号が来るので混乱し、その後の受信が破綻します。この定型文を一まとめで受信する癖は、受信が楽になる半面、符号変換への注意が散漫になるので一文字ずつ忠実に変換するのが良いと思いました。

 (4)符号変換と文章組立のバランスを考える段階

 実用的な速度に慣れた段階でも、未だ完璧に無意識の符号変換が出来ないと符号変換に意識が行き意味を取る事が散漫になり、意味を取る事に集中しすぎると符号が抜けました(特に連続した短い符号が来た場合)。これは試行錯誤をしながら練習を重ね、徐々に改善しました。

 (5)徐々に無意識で符号変換が出来る段階

 この段階では符号変換の迷いが少なくなり、瞬時に変換していることに気づき(但しまだ符号が文字には聞こえない)、速度を上げても問題なくなりました。私は90文字/分まで速度を上げましたが、大きな支障はありませんでした。以降、この速度で練習しましたが、当初は符号に集中する事も多く疲れましたが、徐々に疲れなくなりました。練習速度にある程度慣れたら、少し早いと思っても、時より次の速度に上げて練習することがよりスムーズに上達する方法だと思いました。一方、迷いが多いと速度を上げた途端に意味が取れなくなるので、まずは迷いを少なくする事に重点を置いた方が良いと思いました。

 


4.練習のツール

 昔は種々の速度の和文を吹き込んだテープを繰り返し聞き練習をしましたが、上達に合わせ速度を細かく刻んだ電文までは用意できず、また各速度の電文を多数用意出来ないことも相まって、少ない電文で練習する結果、電文を覚えてしまい、これが上達の阻害要因となりました。現在では、ひらがなを読み込ませ、速度を自由に調整できるアプリがあるので、潤沢な電文を使い上達に合わせた速度で練習ができます。利用した環境以下の通りです。

   @練習ツール

 CW MAIAを使用。速度調整が可能であれば何でも良いので、ネットで探すと良いと思います。

   A電文の準備

 平仮名だけのサイトをネットで探し、それをTEXTに落として使いました(平仮名文章サイトの例)。 なお、CW MANIAはUTFコードのTEXTを読み込ませると化けるので、メモ帳でANSIに変換しました。一電文は300〜500文字とし、一回の受信時間を数分程度としました。短いと調子にのる前に終わってしまい、長いと疲れます。

   B電文速度の設定

 CW MANIAの電文速度設定はPARIS速度で算定するwpmなので、文字/分(cpm)に変換する為には下記の変換係数を掛けます。
 ・ 和文:cpm=wpm× 4
 ・ 欧文:cpm=wpm× 5

 CWの送出が開始されると、文字/分(cpm)が実測され右下(赤丸の中)に表示されるので、これを参考にしたほうが、しっくりする速度が得られると思います。

 

 

5.その他

 (1)欧文受信

 平文の欧文のQSOはしないので、ローマ字の暗記受信の練習をしました。従来QRAやQTHは、一旦ノートに書いてHAM LOGに打ち込んでいましたが、暗記受信が出来ると直接打ち込めます。大きな違いはないですが、やはり暗記受信が出来ると楽です。

   @練習のプロセス

 概ね和文と同じで、しかも初心者ではない限りは符号変換の問題は無いと思いますので、記載を割愛します。ローマ字読みは、頭の中での日本語への変換が案外円滑に行かず、長い場合は上手く取れないので、ここをポイントとして練習をしました。

   A電文の準備

 ローマ字表記の電文の入手は難しいです。この為、和文の電文をツールを使いローマ字に変換し、電文を作成しました(ローマ字変換サイトの例)。

 (2)和文の送信

  冒頭に記載した通り、頭の中の文章を打鍵する変換作業が円滑にできなかったので、その練習をしました。送信の流れは次の通りです。
 @頭の中で送る文章を描く。
 Aその中から文字を切り出し符号を打鍵する。
 B打鍵中に次の文字を切り出す。
 C切り出した文字を打鍵する。

 符号に迷わない事や円滑に打鍵操作をする事は言うまでもありませんが、次の文字を切り出す時にどこまで打ったかを迷わない事がポイントだと思いました。この練習は、ひたすら頭の中の文章を打鍵する事だと思いました。

 また、私はバグキーを使いますが、符号が綺麗に出るようにCW MANIAの送出符号に合わせて、打鍵操作をする練習をしました。自分に合った速度で綺麗な符号が打てるように、打鍵タイミングを矯正するのに重宝しました。

 


6.所感

 練習量(練習時間、練習期間)は目標とするレベルにより異なり、到達の速さは個人差もあります。この為、上記以外の具体的な事例を示すことには躊躇しますが、大切なのは、自分なりの上達の状況を見極めながら、十分に時間を掛けて日々より上を目指す事だと思いました。それでも、一時上達が止まる時期(高原現象)に突き当たる事もあると思いますが、あきらめずに練習を続ければ必ず上達は望めると思いました。

 


7.後日談

 練習開始後、早1年が経過し、現在は高速通信にもついて行ける様に旧1通の試験速度である25wpmで練習してます。ただ、まだまだ符号を文字に変換すことに気を取られ、なかなか文章になりません。完全には符号が文字には聞こえていなく、これにより間が取られている様です。

 結局は出来るだけ沢山の受信練習をして慣れるしかなく、一足単に上達する方法はない様です。

 更に、癖がある符号にへの対応や高速通信に対応したパドル操作などの課題があり、自分の理想に到達するまでは時間が掛かりそうです。