Osud

運命

作曲     1903-1905年,1907年まで数次の改訂。
初演     1934.9.18 ブルノ放送による放送演奏。(指揮:ブジェチスラフ・バカラ)
演奏時間  第1幕 約35分,第2幕 約18分,第3幕 約25分
台本     ヤナ−チェク自身のシナリオに基づき,フェドラ・バルトショヴァ−が作成。(チェコ語)
時と場所   1890年頃,温泉地ルハチョヴィツェ
登場人物    


ルホツキ−(B):画家
コネチニ−(Br):ジヴニーの旧友
スダ博士(T)
ミ−ラ(S)
ジヴニ−(T) :作曲家
ストゥフラ−嬢(S) :女先生
ミ−ラの母親(A)
ドウベク :ミ−ラとジヴニ−の息子
5歳の時(S)
学生の時(T)
ヴェルヴァ(Br):学生
学生たち(S,T,A)
合唱


ルハチョヴィツェの 温泉広場(ロレク画)


あらすじ

第1幕

 15年前。温泉地ルハチョヴィツェの陽光にあふれた一日。

 湯治客たちが登場し,太陽を賛美する合唱を歌う。そこに優雅な足取りでミーラ・ヴァールコヴァー嬢が登場すると,取り巻きの画家ルホツキーは花束を捧 げ,スダ博士は御世辞をささやく。しかし彼女は,かつての恋人で作曲家のジヴニーを遠目に見つけて動揺する。
  一方でジヴニーもミーラの姿をみつけ,ふたりは取り巻きたちの前で近づいていく。そしてミーラはジヴニーだけと話したいからと一同に身振りで告げ,舞台に はミーラとジヴニーだけが残る。ミーラはジヴニーに「あの子を連れてきたのね」と言う。ジヴニーは重苦しい口調で認め,あの子の声に呵責を感じていると言 う。
  二人はゆっくりと歩み去るが,入れ変わりにストゥフラー嬢が登場し,若い女先生たちを呼び集めて合唱のリハーサルを始める。一方ではスダ博士らがバグパイ プ吹きと一緒に入ってきて,女の子たちと遠足のための傘の飾り付けを始め,リハーサルを茶化す。
 そこにミーラの母親とマヨロヴァー夫人が登場し,ミーラとジヴニーを探す。気にも留めないスダ博士とルホツキーは太陽を賛美する歌を歌いながら遠足に出 発する。ミーラの母親とマヨロヴァー夫人はその後を追う。
  ミーラとジヴニーが並木道を歩きながら舞台に現われるが,皆は遠足に出発してしまった後である。そこで2人は椅子に座り互いの心の内を語る。2人の長いア リア。
 ジヴニーはかつて2人が恋人同士だった時のことを懐かしみ,ミーラの母親に「乞食のような芸術家と暮らすなんて」と結婚に反対されて別れたことを恨む。 一方ミーラは裕福な男と見合わされたが,ジヴニーのことを忘れられず,母親にプラハの家から連れ出されて田舎に送られ,そこでジヴニーの子供を生んだと語 る。日が暮れて,皆は遠足から帰って来る。ミーラとジヴニーが一緒に去った姿を,スダ博士やルホツキーらが目にする。ミーラの母親はそれを聞かされて取り 乱す。スダ博士らは「これはルハチョヴィツェ物語だ」とからかう。

第2幕

 4年後。ジヴニーの書斎。

 ジヴニーはミーラに自作のオペラについて話している。それは二人の関係を音楽にしたオペラで,最後の幕は未完である。
  ジヴニーとミ−ラは愛し合っているが,ミーラの母親が狂気したことに苦しんでいる。ジヴニーはミーラに初めて書いた手紙のことを回想して語る。その中の一 節「運命なのか!」というくだりをジヴニーが語ると,舞台裏の発狂したミーラの母親が繰り返す。ジブニーとミーラは愕然として,ミーラは泣き出す。ジヴ ニーは二人が別れさせられた間に,ミーラがほかの男に心変わりしたという中傷を信じたことを思い出して自分を責め,そのオペラの楽譜を引きちぎる。そこに 4歳になった二人の息子ドウベクが入ってきて,「恋って何なのか知ってる?」と言う。
  ミーラの母親の登場。彼女はジヴニーへの憎悪から狂気しており,「お前が娘を誘惑したのだ」と責め,金は一文もやらないと叫ぶ。ミーラが母親に駆け寄る と,二人はもつれあってバルコニーから落ち,死ぬ。
 ジヴニーは死んだミーラの遺体をかかえて,ソファーに横たえる。ドウベクは「ママ,ママ」と叫び,ジヴニーは身を投げ出して嘆く。

第3幕

 現在。音楽院の講堂。

 音楽院の生徒たちが,今日初演されるジヴニーのオペラを歌う。皆はそのオペラが嵐の描写で終わるとことをいぶかしむ。生徒のひとりヴェルヴァは,「この オペラは最終幕はなく,神様の手の内にある」とジヴニーが語ったという噂を,声をひそめて語る。そして主役の作曲家レンスキーはジヴニー自身のことだと言 うが,相手にされない。一同はドウベクの「ママ,恋って何なのか知ってる?」という声が音楽にされている箇所を歌って笑う。
 ジヴニーが登場する。生徒たちはジブニーにオペラと主役レンスキーについての話を求める。ジヴニーの説明は次第に熱を帯びてきて,生徒たちはジブニーが 自分の苦悩を話しているのに気付いて恐怖する。ジヴニーは話を続け,ミーラの死とその衝撃について語ると暗い空に雷鳴が響き,近くに落雷する轟音が聞こ え,停電で講堂は真暗闇となる。その瞬間に生徒のひとりドウベクは,母ミーラの姿を見て「ママ!」と叫ぶ。
 明かりがつくと,生徒たちはジヴニーが気を失って倒れているのを見て助け起こす。ジヴニーはミーラの泣く声を歌ってみせる。ヴェルヴァが「きっとこの音 楽が終幕なのね」と言うと,ジヴニーは「終幕だって?それは神の手の中にある」と言う。
 ドウベクがジヴニーをかかえて連れ出そうとする。そこにスダ博士が登場し「どうかしたのですか?」と問う。幕。


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歌劇「運命」対訳解説書