アリアドネ H370
1958年春、スイスのシェーネンベルクで、最後の大作オペラ『ギリシャ受難劇』に心血を注いでいたマルチヌーは、たまたまパリ放送のラヂオにかかっていたマリア・カラスのオペラ・アリアを聴いて感動し、行きぬきとしてこの1幕オペラを作った。
実に5月13日から6月15日までという短期間に仕上げられた。
原作は『ジュリエッタ』H.253と同じ詩人ジョルジ・ヌヴーの「テセウスの旅」によっており、フランス語台本は作曲者自ら書き下ろした。
マルチヌーは前年に作曲したオーケストラ曲『寓話』H.367の第3部『迷路の寓話』にもこの題材を用いているが、『アリアドネ』と直接の関係はないようである。
初演は1961年3月2日、L.ロマンスキ指揮のもと、ゲルゼンキルゲン(デュッセルドルフ近郊)で行われた。
クレタ島の娘アリアドネは、怪獣ミノタウロス征伐にこの島へやってきたテセウス(後のアテナイ王)に一目惚れし、彼に剣と、迷路から出るときに使う糸玉を与えた。見事怪獣をたおしたテセウスと仲間は、アリアドネとともにアテナイ目指し出帆する。テセウスと結婚の約束までしていたアリアドネだったが、ディア(後のナクソス)島に置き去りにされる。
オーケストレイションは2管編成で、ティンパニを含む打楽器、ハープ、チェレスタ、ピアノ、弦が加わり、明らかにバロック形式を意識した簡素なものである。
-全体の構成-
古典的なシンフォニア1~プロローグ~シンフォニア1~第1場
祝典的なシンフォニア2~第2場
アラビア風のシンフォニア3~第3場で、
最後にアリアドネの長大なコロラトゥラ・アリアを置き、シンフォニア1の主題でしめくくる。
日本マルチヌー協会第13回例会コンサート・プログラム(関根日出男)より