第4交響曲 H.305 (1945/4-6)
1945年2月末に、半世紀前のドヴォルジャーク同様「望郷の歌」であるチェロ協奏曲第2番を完成したマルチヌーは、4月はじめから第4交響曲の作曲にとりかかり、3楽章までを5月下旬までにニューヨーク58番街で書き上げた。それからマサチューセツ州ケイプ・コッドに出かけ、海辺にある数学者A・スヴォボダ博士の木造別荘に滞在し、6月14日に最終楽章を仕上げた。この曲には第2次世界大戦終結と帰郷できる喜びに満ちており、調性は彼の好む変ロ長調となっている。
この作品は依頼主であるジーグラー夫妻に捧げられ、1945年11月30日、オーマンディ指揮フィラデルフィア交響楽団により初演された。
第1楽章:アレグロ・ヴィーヴォ、6/8拍子、変ロ長調。
賑やかな前奏の中に、長3度和音で主題の萌芽が見られ、短3度下降音型(譜例1)があって、楽しげな主題(譜例2)がヴァイオリンで提示され、弦の下降音型、木管の高音での囀りが続く。これが展開されホルンに渡される。以上がくり返され、上向音型によるエコーのような短いコーダとなる。
第2楽章:スケルツォ、アレグロ・ヴィーヴォ、6/8拍子、ト短調。
スタッカート弦の刻むオスティナートの上で、スケルツォ主題(譜例3)がファゴットに出て、トランペット、高音木管、イングルシ・ホルンと渡され、華やかなトゥッティとなって小休止する。トリオ(モデラート)はヴァイオリンの奏でる、アメリカ民謡を思わす叙情的な下降主題(譜例4)である。
第3楽章:ラールゴ、3/4拍子、変ロ長調。
弦楽合奏による半音階的に下降する、息の長い主題(譜例5)にはじまり、ピアノが弔鐘を鳴らし、弦トリオの奏でるカンタービレの部分が続く。これが高揚してシンバルが鳴り、次第に楽器の数を増して、管楽器、ピアノは上向アルペッジオをくり返す。ティンパニが轟いて冒頭部分がわずかに顔を出す。弦の上下動、クラリネット、ピアノのトレモロの並みの上で、オーボエとフルートが天国的な音楽を奏でる。
第4楽章:変形したソナタ形式。
ファゴット、ホルン、金管の沈鬱なハ短調和音の上で管楽器がうごめき、ホルンが短3度で上昇する3音を鳴らし、これをもとにした主題(譜例6)が弦に受けつがれる。これは高揚してフルーとトヴァイオリンの奏でる主題(譜例7)となり、音価をのばしてゆく。ついで弦楽合奏でドヴォジャークの「レクイエム」主題の変形(譜例8)を奏でる。これはモトリックな経過句を含んで3度くり返され、タムタムが鳴って冒頭部分が再現され、圧倒的な迫力のうちに全曲を閉じる。