B.マルチヌー:ピアノ・トリオ第2番ニ短調 H.327
(1950年/2月:演奏時間約17分)

解説:関根日出男


 マルチヌーの作品の中で、調性が明記されているのは3曲だけで、「フルート、チェロ、ピアノのためのトリオ」ヘ長調H.300(1944)と、このピアノ・トリオ第2番、および第3番ハ長調H.332(1951)だけである。

 この作品が1950年ニューヨークで2月10~22日という短期間に作曲されたのは、ボストン近郊のハイドン図書館の開館に合わせたからで、マサチューセッツ・ケンブリジ技術研究所に献呈された。

 このすぐ後には、ピアノとオーケストラのための名作「シンフォニエッタ・ラ・ホッジャ」H.328が続く。 初演は1950年5月14日に行われ、チェコには1960年2月15日、チェコ・トリオにより紹介された。ニ短調と銘打たれているが、実質はマルチヌー好みの変ロ長調が主流を占めている。




第1楽章:ソナタ形式の変形
 アレグロ・モデラート、4/4拍子。 チェロとピアノのニ保持音の上でヴァイオリンが、ニ短調上向主題(譜例1)を奏でてゆく。変ニ長調の副主題(譜例2)らしきものが、ヴァイオリンついでチェロに提示される。三連音による奔馬調の短い展開部を経て、ピアノ・ソロに主題が提示され、ヴァイオリンに冒頭部分が短縮されて再帰し、変ロ長調主和音で終止する。

(譜例1)

(譜例2)






第2楽章:三部歌謡形式

 アンダンテ、2/4拍子の前奏の中で、ヴァイオリンとピアノが3度音程下降型がくり返してから、ヴァイオリンにホ短調~ト短調の悲歌(譜例3)が現われる。ピアノがたえず16分音符を奏で、ヴァイオリンが長く変ロ音を伸ばしたあと、3度音程下降型をくり返し、チェロが変ロ長調でこれを模倣する。 ヴァイオリンとチェロがユニゾンで低いロ音を伸ばし、ピアノのロ長調和音進行を経て、変ロ~変ト長調の静かな中間部となる。 再現部でピアノが32分音符と刻みを細かくし、ヘ長調和音で高音から下降してから、楽想は古典的となり、全楽器が32分音符で経過する。やがて3度下降音型が出て、ホ長調主和音に終止する。

(譜例3)






第3楽章:ロンド形式

 ハイドン風の明るさとチェコ精神が一体化している。 アレグロ、2/4拍子、弦の16分音符による、せわしない前奏についで、変ト長調主題(譜例4)がヴァイオリン出る。弦が行進曲風のリズムを刻み、ピアノは高音できらびやかな音型を奏でる。チェロのゆったりした挿句があり、弦とピアノがかけ合うモトリーックな部分を経て、ポーコ・メーノに入るとヘ短調B主題(譜例5)がヴァイオリン、チェロ、ピアノの順でくり返される。テンポIとなってモトリックな部分を経て、冒頭部分が延々とくり返され、最後は 変ロ長調主和音で全曲を閉じる。

(譜例4)

(譜例5)