ヴァイオリンとピアノのための
「アラベスク」H.201a

                                             関根 日出男

 サーカス見物で知合ったパリのお針子、シャルロット・カンヌアン(1893~1978)と結婚した1931年3月21日直後に、ダイス出版社の依頼で作曲されたもので、チェロ(B.201)とヴァイオリン(H.201A)の両用に書かれ、「リズムのエチュード」の別名を持つが、直後に演奏時間もほぼ同じ7曲からなる、正真正銘の「リズムのエチュード」(H.202)も作られた。各曲とも2~3分で、ピアノはオスティナート音型を奏で、ヴァイオリンにはシンコペーションが多用されている。初心者の教育用とされているが、バルトークの「ミクロコスモス」同様、難易度と芸術性の高い秀作である。


1)ポーコ・アレグロ:ハ長調、2/4拍子。
 ピアノの欠こう音オスティナートの上で、ヴァイオリンが軽快な旋律を奏でてゆく。

2)モデラート:ト長調、4/4拍子。
 ピアノの規則正しい4分音符和音進行の上で、ヴァイオリンが歯切れのよい旋律を奏でてゆく。

3)アンダンテ・モデラート:ロ短調~イ長調、3/8。
 16分音符3連音の上下動する、夢幻的なピアノの上で、ヴァイオリンは6連音や、7連音上向音型などを奏でてゆく。

4)アレグロ:ニ~ト長調、2/4~4/4拍子。
 ケークウォーク風の舞曲。

5)アダージオ:変イ長調、6/4拍子。
 叙情的な静かな曲。後半ピアノ伴奏は4分音符のオスティナートを連打する。

6)アレグレット:ト短調、5/8拍子。
 ト短調主和音が単音で上向分散音型のオスティナートを伴奏に、ヴァイオリンもスタッカート風に飛びはね、中間部にアルコで叙情音型が出る。

7)アレグレット・モデラート:ニ~イ長調。
 最初の3/8拍子から最後の4/4拍子まで、ほぼ1小節毎に2/8・・7/8、2/4・・6/4と拍子を変えてゆく。最初ピアノはユニゾンで2オクターヴ上昇し、8分音符のピアノ和音進行が、シンコペーションのきいたヴァイオリンを支えている。