チェロ・ソナタ第3番 H.304
解説: 関根 日出男

旧友チェリストの故キンドラーを偲び、1952年9月10日にヴィュ・ムランで書きはじめ、 10月5日ニューヨークで完成した作品で、同年暮ワシントンで初演された。

第1楽章
ピアノ前奏後、モデラート、変ロ長調の親しみ易い“望郷の歌”が奏でられ、転調を続けてゆく。 ついでペンタトニック下降音型がピアノに出、ピアノ・ソロ部分となる。ポコ・メノで甘美な上向副主題が2回チェロに現れ、 テンポを速めた無窮動的楽句を経て、冒頭部分が再帰しハ長調に終止する。
第2楽章
チェロの変ホ短調で低音ピチカート前奏についで、ピアノの三連音をバックにヘ長調の下降主題が出る。 曲は次第にせわしくなり、チェロが分散三連和音を奏でたあと、瞑想的な副主題がハ長調で現れる。 これが転調をくり返し、静かな付点リズムの変ホ短調部分を経て、ふたたびチェロにアルペッジョが出て、最後は変ホ長調に落ちつく。
第3楽章
アレグロ。飛びはねるような12/8拍子の前奏についで、スケルツォ風ニ長調主題がチェロに出る。 やがて4/4拍子となると、ハイドンのソナタを思わせる副主題がピアノに現れ、チェロに渡されると優雅な転調を見せる。 せわしない楽句、高音ピアノ・ソロ部分を経て主部が再帰し、コーダではテンポを速め、ヘ長調主和音に終止する。