< ピアノとオーケストラのためのコンチェルト『呪文』 >
(1955/12/22-1956/2/6 ニューヨーク)
Concert for Piano and Orchestra "Incantation"
初演:1956年ニュー・ヨーク
ニューヨーク・フィル, Con: L.ストコフスキー Pf: R.フィルクシュニー
URANIA US 5169 | |
ヨセフ・パーレニーチェク Josef Palenicek (Pf) | |
イジー・ピンカス Jiri Pinkas (指揮) | |
ブルノ・ステイト・フィル | |
[ヨセフ・パーレニーチェク] | |
1914年旧ユーゴスラヴィアのトラヴニク生。1991年没。1920年旧チェコスロヴァキアのオロモウツ、 1926年プラハに移り、プラハ音楽院でシーン、ホフマイスターにピアノを、V.ノヴァークに作曲を学び、その間カレル大学で法学も修めた。 さらにパリでルーセルに作曲、コルトーにピアノを学んだ。31年より演奏活動をはじめ、34年からスメタナ・トリオ、 チェコ・トリオのピアニストとして活躍。49年からチェコ・フィル、57年からオロモウツのモラヴィア・フィルのソリスト。 プラハ音楽院、芸術アカデミーの教授を務め、日本でもしばしば公開レッスンをしていた。作曲家としても有名。 チェコの国民的ピアニスト。 | |
マルチヌーの友人であったJ.パーレニーチェクのこの録音のピアノは力強く、 オーケストラを破壊してしまうかのようなエネルギーに満ちている。オーケストラ、そして恐らくは指揮者でさえもその迫力に引き込まれ、 結果的にテンペラメントの高いアンサンブルとなっている。 |
1948年、アメリカから再びパリに戻ったが、もはや彼の愛したパリはなく、 痛々しい戦争の爪あとだけが残されていた。失意のうちにニュー・ヨークに戻り、1953年再びフランス、 そして1955年にまたカーティス音楽院で教鞭をとるためにニュー・ヨークに戻った。今度は楽しい毎日で精神的にも余裕ができた。 『ギリシャ受難劇』の台本の推敲を重ねる一方、友人であり、モラヴィア出身の亡命ピアニスト R.フィルクシュニーの依頼で書かれた作品。 | ||
1948年に故郷に帰ることを断念せざるをえなくなり、 長年の友人だったヤン・マサリーク (初代チェコスロヴァキア大統領の息子)が謎の死をとげ、 「生きる意味」ということについて真剣に考るようになる。 その影響かマルチヌーは1955年にオラトリオ『ギルガメッシュ叙事詩』『フランチェスカのピエロのフレスコ画』 『オーボエと小編成オーケストラのための協奏曲』カンタータ『泉開き』を書いているが、 もはやよりシンプルで瞑想的な作風に変化しつつあった。 | ||
そのような中で書かれたこの曲は、マルチヌーの激しい感情のぶつけられた最後の作品である。 |
その他 * オーボエ協奏曲(1955) Czech Philharmonic ob:F.Hantak cond:M.Turnovsky(1964年録音) * 弦楽器、ピアノとティンパニのためのダブル・コンチェルト(1940) Czech Philharmonic (1959年録音) Cond: Karel Sejna |
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Brian Large:Bohuslav Martinuより |
『呪文』はマルチヌーの心の深みから叫んでいるかのような強烈なパワーを持った2楽章のコンチェルトである。 一切の無駄がなく、なんらけばけばしたものもない。楽曲、楽譜のもつオリジナリティーは生死に関わる問題を ポジティヴに著している。自分の言い分を切迫したように論じており、飾りに訴えることなく直接的なモチーフによって 表現することに集中している。その中に関係しあった要素はひとつもない。全ては避けようのない必要不可欠なものであり、 イメージの中で、「楽器の使い方」と「音符のモチーフ」は密接に結び付けられていて、分け隔てることができない。 スコアではおのおのの楽器が、たとえわずか2、3の音符であっても、ピンスポットを浴びたようにモザイク模様を表している。 |
マルチヌー自身が楽器の使い方を詳しく説明している。 | |
● | ハープと弦は一連の早いグリッサンドのパッセージで「雷」を表している。 |
● | ヴァイオリンとチェロは高音、あるいは低音域のフラジオレットで弾く。 |
● | 弦楽器は頻繁にcol legno(ヴァイオリン奏法において弓の木の部分でヴァイオリンを叩くこと)、 au talon(弓の手元で)で現れる。 |
● | フルートとホルンはフラッターやcuivre(シュテットルメント:ホルンの奏法で「叫ぶ」という意味)で出てくる。 |
● | ハープはハーモニーと速いオスティナート(一つの楽節あるいは楽曲を通じてある一定の音型で繰りかえすこと)で 活性化する役割を果たしている。 |
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その他のピアニストのCD
・ R.フィルクシュニー&チェコ・フィル&L.ペシェク (RCA RED SEAL BVCC-687) |
1933年6月プラハのルドルフィヌムでの録音。 日本版のこのCDには佐川吉男氏の丁寧な解説が書かれており、 ライナーノート冒頭の●フィルクシュニーとマルティヌーには、フィルクスニーに対する氏の暖かな視線が感じられる。 2番3番のピアノ・コンチェルトを収録。 |
・ R.フィルクシュニー&チェコ・フィル&L.ペシェク (RCA RED SEAL Artistes Repertoires74321 886 822) |
上記と同じもの。 1988年録音のピアノのレパートリー(リトルネット、ファンタジーとトッカータ、ソナタ1番、ジュリエッタ、 エチュードとポルカから抜粋)との2枚組み。 |
・ E.ライフネル&チェコ・フィル&J.ビェロフラーヴェク (SUPRAPHON 11 1313-2 032) (日本版 COCO-9876 77) |
1987年3月-1988年12月録音 2枚組み |