Káťa Kabanová
カーチャ・カバノヴァー
作曲 1919-1921年
初演 1921.11.23. ブルノ劇場
演奏時間 第1幕34分,第2幕28分,第3幕28分
台本 アレクサンドル・オストロフスキーの戯曲「嵐」(1859年作品,チェコ語翻訳:ヴィンチェンツ・チェルヴィンカ)による作曲者自身の台本(チェコ語)
時と場所 1860年代のロシア,ヴォルガ河畔の町カリノフ
登場人物
ディコイ(B):富裕な商人,暴君的な家長
ボリス・グリゴリエヴィッチ(T):ディコイの甥。カーチャに思いを寄せる。
マルファ・カバノヴァー,通称カバニハ(A):富裕な商人の後家。※「カバニハ」とは野蛮な牝豚の意味。
ティホン・イヴァニチ・カヴァノフ(T):カバニハの息子。
カティエリナ(カーチャ)・カバノヴァー(S):ティホンの妻。
ヴァーニャ・クドリヤーシ(T):ディコイの助手。ヴァルヴァラの恋人。
ヴァルヴァラ(Ms):カバノフ家の養女。
クリギシ(Br):クドリヤーシの友人。
グラシャ(Ms):カバノフ家の女中。
フェクルシャ(Ms):カバノフ家の女中。
群集の中の女
町の住人の合唱
あらすじ
第1幕
第1場 ヴォルガ河畔の公園。右手には,カバノフの家。午後。
幕があがると,ディコイの助手で技師のクドリヤーシが,カバノフ家の女中グラシャを相手にヴォルガ河の美しさを熱っぽく賞賛している。そこに,ディコイが甥のボリスを高圧的に叱りつけながら登場する。ディコイは,カバノフ家の後家カバニハが留守なのを知って立ち去る。
残されたボリスは,クドリヤーシにディコイのもとで耐えている家庭の事情を打ち明ける。両親と死別して姉と共に孤児になったボリスは,祖母の遺産を受け継ぐため成人するまで後見人ディコイの虐待にたえなければならないのだ。ついでボリスは,人妻カーチャに思いを寄せていることも告白してしまう。
そこにカーチャが夫ティホン,姑カバニハ,カバノフ家の養女ヴァルヴァラとともに登場。カバニハはティホンにカザンの定期市へ行くように命じた後,嫁ばかり大事にして母親をないがしろにしていると責め,カーチャにも侮蔑の言葉を吐く。カーチャは立ち去るが,なおもカバニハは悪態をやめない。カバニハが出て行った後,ヴァルヴァラは,酒で憂さを晴らそうとするティホンに向かってカバニハの横暴とティホンの不甲斐なさを非難し,カーチャに同情を寄せる。
第2場 翌日。カバノフ家の一室。
カーチャがヴァルヴァラに,娘時代の思い出とともに,鳥になって今の束縛から逃れ飛んでいく夢を語り,密かな浮気願望を告白する。因習にとらわれないヴァルヴァラは,カーチャに愛人との逢引をそそのかすが,カーチャはきっぱり撥ね付ける。
カザンの定期市に行くティホンが旅支度で登場。罪の予感にかられているカーチャは夫に同行を願い,断られると貞節を守るように誓わせて欲しいと懇願するが,ティホンはそんな妻の態度に困惑しながらつきはなす。そこにカバニハが登場。ティホンは,カバニハが命じたとおりの言葉でカーチャに貞節を守るよう言いつけて,彼女を辱める。
第2幕
第1場 カバノフ家の仕事部屋。午後も遅い時間。
カバニハ,カーチャ,ヴァルヴァラが縫い物をしている。カバニハは,カーチャが夫の出立を悲しむそぶりを見せないと小言を言って退出する。奔放なヴァルヴァラは愛人と逢引するために木戸の鍵を盗み出したことを告げ,カーチャに鍵を手渡す。カーチャは,鍵の受け取りを拒みながらも,それを預かってしまう。ヴァルヴァラが退出すると,誘惑と罪の恐れに揺れるカーチャは,鍵を窓の外へ投げ捨てようとするが,外からカバニハの声が聞こえると,慌てて鍵をポケットに隠す。そして彼女は,突如として自らの欲望を認め,今夜ボリスと会う決心をして部屋を出て行く。
そこに,カバニハがディコイとともに登場。酔ったディコイは,カバニハに屈従する態度を示しながら言い寄るが,カバニハはつれなくあしらう。
第2場 その夜。ヴォルガ河の堤。上方にカバノヴァー家の庭木あり,そこから垣根に沿って小道が通じている。
夜更,クドリヤーシがギターを弾き,恋の歌を歌いながらヴァルヴァラを待っていると,ボリスが現れる。驚くクドリヤーシにボリスはある女性からここに来るように言付けられたと語り,クドリヤーシはその話から逢引の相手がカーチャであること知る。そこへヴァルヴァラがやってきてクドリヤーシとともに姿を消す。続いてカーチャが登場。カーチャは,はじめボリスの熱烈な求愛を拒絶し,自らの罪の深さを嘆くが,次第に悲劇的な結末を予感しつつボリスに身を任せる。クドリヤーシとヴァルヴァラが戻ってきて,二人の情事の手筈を整え,森へ送り出す。時が過ぎ,遠くからカーチャとボリスの陶然とした叫びが響いてくると,クドリヤーシが時間が来たと警告する。カーチャとボリスが戻ってきてそれぞれ帰路につく。
第3幕
第1場 10日後の夕方。近い柱廊と丸天井のある廃屋。アーチの間からヴォルガ河が見える。雨の降りそうな天気。
散歩中のクドリヤーシと友人のクリギンは雷雨にあって雨宿りをしている。まもなくディコイも雨宿りに入ってきて,クドリヤーシの語る避雷針の効用に難癖をつける。やがて雨がやむと,ディコイが出て行き,入れ替わりにヴァルヴァラがボリスを探しにやってくる。ヴァルヴァラは,ボリスに,ティホンが予定より早く帰宅したため,カーチャがとり乱し,夫に全てを告白するだろうと告げる。続いてカーチャが,ティホンとカバニハとともに駆け込んでくる。ボリスは隠れる。再び激しさを増した嵐の中,狂乱したカーチャは,ティホンとカバニハに夫の留守中ボリスと密会を重ねていたと告白してしまう。ティホンはカーチャをなだめるが,カーチャは夫の手を振りほどいて嵐の中を走り去る。
第2場 ヴォルガ河畔。夕闇が迫り,夜となる時刻。
ティホンがグラシャとカーチャの行方を探している。入れ替わりにヴァルヴァラがクドリヤーシと登場,カバニハから逃れるためモスクワへ駆け落ちすることを決意して去って行く。続いてカーチャが登場。死を覚悟したカーチャが,もう1度ボリスに会いたいと願うと,突然ボリスが現れる。ボリスは,不始末によりディコイからシベリア行きを命じられたことを告げ,カーチャと最後の別れを惜しんで去っていく。一人残されたカーチャは静かに十字を切ってヴォルガ河に身を投げる。カーチャの身投げを見た人々が集まってきて,やがてティホン,カバニハ,ディコイも登場する。ティホンが引き上げられたカーチャのなきがらにすがって泣き,母親をなじる一方,カバニハは群集に「お騒がせしました」とうやうやしく挨拶して幕となる。
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カーチャ・カバノヴァー対訳解説書