プラハ国民劇場オペラ部ドラマトゥルグ ヤン・パネンカ / 梶吉 久美子訳
(2001年会報より)
「カーチャ・カバノヴァー以前、私は貪欲であった。 L・N・トルストイの『生ける屍』に私は心を傾けていた。のみならずメローの『天使のソナタ』にも。私はホスティーンヘと旅立った。夜を明かし、虫に刺され嵐にあい、夢うつつの巡礼者を闇の中で踏み付けもした。しかしヴォルガに浮かぶ船のマストは高くそびえ、水面は月明かりを受けてあたかもカーチャの魂のごとく純白であった。この知性の混沌の中で、すでに有名な作品群の最初の糸口をいかにして見つけるというのか。もうそれは不可能だ。確かなことは、私のオペラはどれもが、ただひとつの音符もおろそかにはせず、私の頭の中で優に1、2年は成長し続けたことだ。私はそれぞれの作品とともに、長い間ひたすら重い頭を抱えていた。」 | ||
第3幕 カーチャとボリス (プラハ国民劇場1992.9.9) |