挿し芽の先祖帰り
葉が細身で短く詰んだ紅玉錦を挿し芽したのに、発芽した苗の多くが葉の大きな
玉織姫になってしまう等と言う事が有ります、この事を先祖返りをすると言います。
紅玉錦は玉織姫の細小葉変化種だから、発芽した子苗が先祖に戻った訳です。
この様な特性を有する品種を、準固定品種と言います。その様な準固定種は、
一般に普及している固定品種から、細葉に変化した品種に多く見られ、紅玉錦や、
金宝錦、宝獅子、雲上錦、清姫、金鈴、錦星、大和錦、雅錦等がこれに当ります。
宝山から変化した宝獅子が、さらに変化した品種の金宝錦では、挿し芽小苗の極々一部が
稀に宝獅子に戻る物も有りますが、葉幅が広めになった小苗の殆どは、一代前の宝獅子を
通り越して、二代前の宝山に戻ってしまいます。 勿論宝獅子の発芽小苗も、その多くが宝山
に戻ります。 また全く同じ状況の品種に雲上錦が有ります、唐花から鳳凰そして雲上錦に
変化した品種ですから雲上錦は発芽苗の一部又はその多くが、鳳凰または唐花に戻ります。
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余 談 に なりますが、
右の写真は「花車」の細葉変化種です。
この「花車」の細葉変化種は、本来の
雲上錦に葉姿が酷似しており、無名で
色彩が良い事から、「雲上錦」名で一部
流通していますが、こちらは花車の細葉
変化種であるために、発芽苗の一部は
先祖返りで「花車」に戻ります。
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他にも準固定品種として前記した各種は、発芽時または生育中に、
一部またはその多くの苗は、先祖に戻ってしまいます。
特に次の写真の「錦星」と「大和錦」は、その特性が強く、発芽苗の殆どが
先祖帰りをしてしまい、特徴の良く出た苗は、なかなか得られません。

錦 星 大和錦
大和錦に興味のある方は、上右の写真または ここをクリック して下さい。
挿し芽の発芽子苗の先祖返り率は、挿し葉を取る親株によっても異なります。
親株によっては、100パーセント先祖帰りをしてしまう物も結構ありますので。
確率を高めるには、特徴の際立った親株から、葉を取る必要があるのです。
錦星と同じく「明星」から細葉に変化した品種の「暁星」は、挿し芽発芽苗に全く
先祖帰りするものが見られず、こちら「暁星」は固定品種であるようです。また
「龍神閣」から細葉に変化した、未登録品種の「剣光」も、発芽苗に全く先祖帰り
する個体は見られず、これも細葉で固定しているようです。
上記のように一部例外はあるものの、安定した普及品種から
細葉に変化した品種は、準固定種になるものが多いようです。
名のある普及品種でも、前記の「花車」の他に「栄獅子」「金華山」等他、
細葉に変化している品種は数多く有りますが、その殆どが先祖帰りの
特性が強い物ばかりです。 以下にその一部を紹介します。

栄獅子の細葉 (金糸雀) 黄金鶴の細葉 (祝 鶴)

白晃麒麟の細葉 (白晃龍) 白 綾 の細葉 (綾 姫)

白牡丹の細葉 金華山の細葉
上の写真の左側の白牡丹細葉は、私のオリジナルで、右写真の金華山の細葉は、
以前に日本巻柏連合会銘鑑に2度だけ掲載された、事のある「昭和ノ華」が本種だと
言う説があり、当時を知る先輩に伺った所、「昭和ノ華」=「金華山細葉」 との事でした。
この他にも「錦木の細葉」や「萠黄縮緬の細葉」等、数種類の細葉変化種を
所持していますが、その多くがて先祖帰り特性の強い準固定品です。
ここまでは普及品種から細葉に変化したものは、準固定品種が多いと述べてきましたが、
逆に普及している固定品いるものから、太葉に変化した品種は殆どが太葉で固定します。
「錦星」と同じく「明星」から太葉に変化した「轟」や春日錦から変化した「富鷹之華」また、
「御所錦」から変化した「金猛虎」や「銀星冠」から変化した「富士錦」並びに「玉川染」から
変化した「琥珀錦」等が上げられますが、何れも先祖帰りのない固定品種です。
また登録品では有りませんが、「絵島」の別名を持つ「玉織姫太葉」及び、「舞姫」の別名
を持つ「楊貴妃太葉」等あり、其の他にも無名の品ですが、「黄豊冠」「紫金襴」「瑞光錦」
「立浪」などの太葉変化種を所持して居り、毎年少量の挿し芽をしていますが、先祖帰りは
有りません、何れも太葉で固定しています。
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