現在の「錦蜀光」は、萬延元年より昭和18年までの各銘鑑に掲載のある「金山」が、
昭和22年から「錦蜀光」名になった様に記されています。
また、別のページでは、「金山」が昭和16年に「錦蜀光」名で改名登録されたとも有ります。
しかし「錦蜀光」名の品種は、それ以前の昭和12年に発行されたこの銘鑑に、既に掲載が
有り、また昭和18年に発行された東京金龍会銘鑑にも掲載されて居ます。
参考書籍では、昭和12年のこの銘鑑の「錦蜀光」及び18年銘鑑の「錦蜀光」は、昭和22年
以降の銘鑑に掲載されている現在の「錦蜀光」とは別の品種であるとされており、同文字の
同名で有りながら、別系統の別種扱いになっています。
また現在の「金山」については、書籍「原色イワヒバ銘鑑」に次のような記述が有ります。
〔現「金山」は昭和18年、宇都宮市、石川靖知氏再登録、古名は黄金獅子。〕
この二つの説「錦蜀光」と「金山」の品種名の変遷説を図にすると下図の様になります。
※ ○印は銘鑑に同名の掲載有り
上の図から昭和18年の「金山」は、現在の「金山」でもあり、現在の「錦蜀光」でもあるという
矛盾が読み取れます。
日本巻柏連合会第3号銘鑑(昭和27年に発行)に掲載された「金山」と「錦蜀光」及び、
第4号銘鑑、第5号銘鑑の「錦蜀光」には説明文が付いています、手持ちの参考書籍の
写真では、文字が小さく正確に読み取る事は出来ませんが、各銘鑑の「錦蜀光」の説明文は、
昭和18年の東京金龍会銘鑑の説明文と同文のようで、〔蜀光錦の一種にして蜀光錦より
立葉紅黄を帯中緑あり見事なる●種貴品〕となっているようです。 (●の部分は解読できず)
つまり昭和18年から昭和32年までの「錦蜀光」は同説明文でありながら、昭和18年の
「錦蜀光」は別種扱いになります。 しかし同名で同じ説明文である両種が別種とは考え
られず、少なくとも第5号銘鑑に掲載された昭和32年までの「錦蜀光」は、昭和18年の
「錦蜀光」と同じと思われ、ひいては、この銘鑑の「錦蜀光」とも同じと思われるのです。
また銘鑑に掲載された特徴説明文から、昭和32年までの「錦蜀光」は、現在の品種とは
特徴が異なり、「蜀光錦」に類似した別物と思わざるを得ないのです。
〔蜀光錦の一種にして・・・〕とある「蜀光錦」の黄色斑は、葉先から葉元の向かって入り、葉先
の黄色は強く葉元に行くほど緑を強く残します、時には刷毛込み斑類に類別される程ですが、
「錦蜀光」の曙斑は「金華山」等の様に中斑になり、「蜀光錦」の斑とは全く異質なのです。
昭和33年度第6号銘鑑以降の全ての銘鑑に掲載された「錦蜀光」には説明文が無いため、
実際にはどの時点で現在の「錦蜀光」に入れ替わったのか確認する事が出来ませんが
昭和22年入れ替わり説には疑問が残ります。
以上の事から、この銘鑑に掲載された「錦蜀光」は、「蜀光錦」に似た特徴を持つ品種で、
少なくても昭和32年以降まで、この品種が「錦蜀光」として扱われていたように思われます。
|