培養の基本

 園芸巻柏培養の基本
 
 一般論ですが、苛酷な環境の岩盤に自生して、晴天が続くと葉を巻き込んで耐え、
雨が降ると葉を開いて成長する、原種から引継いだ本来の性質で、巻柏は無肥料で
直射日光下に放置して置くと、色彩は悪いが重症の葉焼け等起こさず生き続けます。

植え替えや肥料を与えて管理を施すと、綺麗な姿になって答えてくれますが、
しかしこれは一種の過保護であり、無肥料で放置した物に比べると、
巻柏自体が軟弱に成り、葉焼けや肥料負け等を引き起こします。
 これらの障害防ぐために、遮光や肥料の増減が必要になります。

この加減が品種によって様々で、品種の多い巻柏の管理を難しくしているのです。
また水を好みながら過湿を嫌うので、乾燥気味に育てると比較的に丈夫になります。

 乾燥気味の棚では、日光を強めに受けても、肥料を多めに与えても、葉焼けや
肥料負けが少ない様ですが、私の棚では梅雨明けの夏期に夕立が多く過湿気味
の為に巻柏が軟弱になり、葉焼けを起こしやすく、なかなか思うように行きません。

私の棚のように過湿な環境では、直射日光を控えざるを得ないのですが、
日光不足では斑乗りが悪く、斑の出現を促す行為を肥料に求める為に、
予想外の気候の時には、肥料負けやら葉焼け等の被害が生じます。

 つまり、肥料、水分、日光、は密接な関係にあり、何れも最適とは行きません。

 私を含め肥料をやりすぎて駄目にした話はよく聞きますが、肥料をやらずに
駄目に成ったと言う話は聞いた事が有りません、過肥料は厳禁と心得てください。


次の写真は肥料の功罪の比較です、参考にしてください。

鏡獅子、3年生苗、7月下旬撮影

    
肥料過多           適 量          肥料不足

過肥料過湿度では上の写真左のように茶シミが入り、シミの部分はやがて
朽ち果てます、重症の場合は一部残っても、その後の生育は極めて悪くなり、
ひど場合は株の大部分が溶けてしまいます。

上の写真の右写真は肥料不足の品です、適肥の品に比べ色彩が劣りますが、
其れなりに成育して、傷みが生じることはありません。

より以上の美を求め、より以上の生育を願って、良かれと思って与える肥料も、
度を過ぎると巻柏には負担になり、逆効果を招きます。

右の写真も肥料負けで茶シミが生じた「花車」です。
春の植え替え時に鉢底にマグアンプKを入れた場合は、
一年間は有効ですので、液肥などの追肥は不要です。
与えると肥料負けを引き起こす場合も有ります。

 特に肥料に弱い品種は、楊貴妃、花車、白晃麒麟、
菊水殿、貴美錦、麗峰、富士之華、鏡獅子、立浪等が
上げられ、全体的に見ると、黄白色の曙斑が鮮明に
出る品種は、過肥料に弱いようです。

 黄色葉でも栄獅子等の萌黄葉類と言われる品種は、
肥料負けは少ないので、大目でも大丈夫です


油粕などの有機肥料を使用している人は、色彩が良く上がるようですが、臭い等の
問題もあり、私は科学肥料を使用しています。

マグアンプKは根が焼ける難点がありますが、その事を除くと、使いやすく長く効く等
良い点も多く、慣れない内はマグアンプKが良いと思います。

肥料の適量は前記のように、管理環境や品種の特性で変りますので、断言は出来ません、
一般的品種にマグアンプK を使用する場合、3寸鉢なら中粒5〜6粒程度が良いでしょう。
此れを基準に、品種や鉢の大きさによって、増減を図ります。

 巻柏は過湿は嫌いますが水を好みます、水道水を鉢に向けて直接掛けて大丈夫です、
水はけの良い用土に植えてあり、根詰まりしていなければ問題はありません、
水を与える時には、たっぷり与えて下さい。

乾燥が激しい時期には、朝晩散水を要しますが、天候などを考慮して、
過湿に成らない様な管理をお勧めします。

日中の散水は、葉が蒸れるので避けたほうが良いでしょう、
朝たっぷり水を与えれば、日中葉を巻いても心配は有りません。

根も葉も元気な株では、朝たっぷり散水すれば、めったにはを巻く事は有りません、
葉を巻くことの多い株は、根に問題が生じている場合が多いようです。



 休眠に付いて

巻柏は木枯らしの吹く季節になると、葉を巻き込んで休眠に入りますが、そのまま屋外で
自然越冬させる方法と、完全に乾燥して雨雪にさらさぬ様にする、管理越冬があります。

私は管理越冬をしているので、自然越冬の事は詳しくは分かりませんが、地植えの品や、
一部管理越冬をせずに放置した品を見る限りでは、管理越冬をしたものに比べて、多少
下葉が多めに落ちるようですが、極端な相違は無い様に思われます。

また自然越冬の棚を拝見した事もありますが、極端な傷みは見受けられませんでした、
従って凍結することの少ない環境では、あえて管理越冬をしなくても大丈夫と思います。
ただし育成期に遮光などして、過保護に管理された品は管理越冬が良いかもしれません。

巻柏は低温には強く、凍結による直接の被害は見受けられませんが、山沿いで気温の
低い私の棚では用土が凍結すると、日中解けて夜間に凍る事の繰り返しになり、鉢土が
乾燥しなくなり、用土は崩れて粉状になり、翌年に根詰まり等の二次的害が生じます。

また根張りの少ない小苗では、凍結で浮き上がり、解凍して土だけが沈み、表土上に根が
出てしまい、そのような状態を繰り返すうちに、ひどい時には巻柏自体が横たわってしまう
程です、従って鉢土が凍結を始める前に水切りをします。


 次の写真は平成15年11月18日の撮影です。

  

凍て上がった春日錦の小苗    霜で巻き込み始めた晃明殿

 この様な凍結に遭っても、葉に直接の被害は見受けられません、霜が降りてからの
休眠で大丈夫ですが、霜が降り始める前に少し早めに水を切っても問題は無い様です

この様な気象条件になって来ると、鉢土が濡れていても葉を巻き込むようになります、
冬季になると鉢土の乾燥速度が遅くなりますが、乾燥が容易な棚なら、慌てて水切り
する必要は無いと思いますので、棚の環境に見合った水切りをしてください。

 管理越冬の注意点は、完全乾燥する事と、密封をせずに通気を図ることが大切です。
また自然越冬では陽射しは問題無いのですが、管理越冬の品は直射日光の差込を
受けると、翌春に弊害が生じるようですので、日光を遮る管理の方が良いようです。

 蘇生は桜(ソメイヨシノ)の開花後に行います、若株は散水で蘇生しますが、
幹の立ち上がった古株は、散水では目覚めにくいので、雨の日を狙って蘇生を
計り、一気に目覚めさせた方が、結果が良いようです。

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