東京巻柏会品種説明

 昭和 6年及び7年に発行され、東京巻柏会銘鑑には、掲載された品種の全てに、
品種の特徴等の説明文が付記されています。

この方式は其の後に発行された、東京金龍会の巻柏之銘鑑にも採用され、日本巻柏連合会
の巻柏之銘鑑のも取り入れられます。

日本巻柏連合会 第一号及び第二号銘鑑では、新品種のみに同様の説明文が付記されます
が、第三号銘鑑では全ての品種に、同様の説明文が付きます。

その後は新品種と格付けの高い品種のみに、説明文が付く様になりますが、この方式は
現在の日本巻柏連合会 「巻柏之銘鑑」にも、採用され続けています。

 また、この銘鑑の説明文は、其の後に発行された東京金龍会、及び日本巻柏連合会初期の
「巻柏之銘鑑」の説明文に、そのまま採用されている様で、同品種の説明文がほぼ同じです。

 以下に昭和 6年及び7年に発行された、東京巻柏会銘鑑の品種説明文を転記しましたが、
この文は、参考書籍に掲載された写真から、管理人が読み取り転記した物であり、写真の
文字が小さいため、誤読や誤記も有ると思われますが、ご容赦頂きます。

なお類別は管理人の主観によるものです。また格付けには関わり無く、掲載順序は不動です。

東京巻柏會 巻柏之銘鑑の品種説明文

 曙斑類
   
玉川染  細葉にして柔かく葉先白曙四季良くさへ無類の品、上作は葉密生し銀色にはぜ
        実に見事な貴品なり
立 浪   立葉にして有明の如く青に黄の斑飛び飛びに入り、恰も波濤に日光の映えるが
        ごとし
花 車   葉廣く葉先白曙にして唐花楊貴妃の類にては青き方なり、中日は白味有り
         日向は黄色、古木は少し赤味を掛ける優秀品なり
銀世界  葉柔らかにして光沢あり、銀色輝く白爪斑、又は白中斑の濃淡面白く
        實に優美にして、白斑中の最稀品なり
唐 花   中立葉にして極荒く葉先黄味を帯ぶ、白曙色合楊貴妃同断の艶麗無比の
        優秀品なり
楊貴妃  葉先白曙にして色彩の艶麗なる事此草の右に出る物なし、秋は紅を掛け
        一層美を増す、新葉より古葉の次第に重なり丸形をなし実に優秀貴品なり
龜 綾   楊貴妃と色合い同断なり、葉は細く密生し鱗白くはぜ優艷なる貴品なり
         〔昭和六年版のみ掲載有り〕
都 錦   平葉にして葉を受け爪曙にして中砂子斑の品、中秋の項より紅を掛ける品なり
         〔昭和六年版のみ掲載有り〕
都 紅   平葉にて葉を受け、爪曙にて中砂子斑の品、中秋の項より紅を掛ける品なり
         〔昭和七年版のみ掲載有り〕
唐 織   楊貴妃の如くにして中立葉、芽出し黄の砂子斑入り、秋季紅葉して見事なり
         〔昭和七年版のみ掲載有り〕
有 明   葉は極荒く中立葉物にして五六月頃より葉先殊に色良く曙入最上品なり

玉手箱  立葉物にて葉細く、芽先黄色にて曙入り、葉詰みて形よし

大花菱  立葉物、春芽青く夏より黄色を帯び、良くさへれば見事なり

玉 葛   玉手箱の如くにして稍々荒く大葉物なり

金華山  立葉物、春の芽出青く五月末より白味の黄色光あり、見事なり

金 山   極立葉にして光有り、葉は薄くして柔かし、曙入なり 
       [この金山は現在の錦蜀光と言われている] [明治31年の説明も同文です]
古今独歩斑  古今独歩の変化にして白曙斑を現し、形態の奇なる、色彩の妙なる事
            巻柏中の絶品なり  〔昭和六年版のみ掲載有り〕
錦孔雀  古今独歩の変化にて春先より白曙入り、恰も孔雀の尾の如く飛び飛びに表現す、
        綺麗なる色彩にて巻柏中の逸品なり〔昭和七年版のみ掲載有り〕


 春の曙類

八重爪   四月より六月迄芽出白くさへ秋は青し、日陰作りを良とす

白 砂   立葉にして葉幅廣く、白砂子斑入、上品なり 〔昭和六年版のみ掲載有り〕

白 妙   立葉にして葉幅廣く、白砂子斑入、上品なり 〔昭和七年版のみ掲載有り〕


 白斑曙類 〔金銀斑類〕

朝日の滝  芽先黄味を帯び、次第に白爪斑に白曙を現し、色彩の美麗にして、変化の
          妙なる事、実に古金襴に比肩する最貴品なり一名、勇蔵金銀とも云ふ

金銀獅子 白曙に白爪斑入、あざやかにして色彩優美なる貴品なり、一名八兵衛檜葉と云ふ

丹 頂   朝日滝に極似し、葉形よく詰みて美麗なり


 白爪斑類

高 砂   中立葉物にして、白爪斑天鵞絨より少し荒し 〔昭和六年版説明文〕

高 砂   雪月花の如くにて、葉こまかく雪白の爪斑入り、古木に至りては葉の先端
        白髪の如く見事なり 〔昭和七年版説明文〕
雪月花  雪白の爪斑にして草に光り有り、雪月花名にそむかず極く美しき最上品なり、
        中立葉にして天鵞絨より少し荒し
天鵞絨  濃青の細葉にして白爪斑、色合ひ雪月花と同様、美麗なる逸品
        一名残雪とも云ふ
松ノ雪  白爪斑にして天鵞絨の如く光り有り、斑はまばらの品なり


 刷毛込斑類

一天四海 中立葉、黄の刷毛込み斑にして、青葉の中に殊に黄斑の強き葉を交へ、
         変化ある最高尚の品なれども、斑廻り至って六つか敷品なり
榧の雪  立葉にして白刷毛込斑なり、芽先良くはぜ最も見事なる品なり

友白髪  白刷毛込斑なれ共、斑廻り面白く、虎斑の如き模様を出す貴品なり

蜀光錦  一天四海の類にて黄斑の入るもの、大斑に出たるものは見事貴品

白 綾   中立葉にて白刷毛込斑なり、斑廻り強弱濃淡あり、高尚優美なり
         (一名麗山と云ふ)

 砂子斑類

古金襴  葉先金色を帯び、順次金砂子斑を現し、古き金襴の如く、芽時より古葉の次第に 
        垂れて、妙なる事雨后の柳を見るが如し、実に高尚にして古来よりの最貴品なり
紫金襴  立葉にて砂子斑物、色合い稍々古金襴に似て少し青味多く、冬は紫を掛け
        実に見事の品なり
九重錦  古金襴の如く黄金の砂子斑を混彩し、日強ければ葉かさなりて紅色を呈し
        見事なる貴品 〔茨城古金とも云ふ〕
金襴織  古金襴の如く金砂子斑鮮かにして、芽先頗る白はぜなり一名千代田錦とも云ふ

金砂子  中立葉物、金色砂子斑にして斑荒し、虎砂子とも云ふ

金獅子  中立葉金色砂子斑にして、古葉になるに隨って葉先巻き狂ひて美なり

故郷の錦 古金襴の如くなれども葉少し立ち、日強ければ黄金色に紅を呈し貴品

山本砂子 紫金襴の如くにて、葉細かく柔らかし、紫斑はなし

小雨の錦 葉細かく黄に紫を帯びたる砂子斑なり、秋は紅色を呈し美なり

金麒麟  玉獅子の変化にして、葉は極細かく密生して良く詰み端正なる玉形となし
        黄金色に光り、日向の作は殊に金斑美麗にして古今の稀品なり


 萌黄葉類

羽 衣   萌黄葉にして形よく、典雅な姿は羽衣の名にそむかず

天乙女  羽衣の如くにして葉細く黄金色なり、葉先縮んで陰陽共に萌黄色なり

寳 山   黄金色にして、日強く作れば萌黄色に紅を呈し、黄葉中の最上物

黄金鶴  黄葉にして葉細かく曙入、秋の紅葉殊に見事なり

黄金錦  萌黄葉にして中曙を現し、形状羽衣に似て矮性なり


 変わり斑物

墨染錦  濃青の立葉にして、新芽は爪を抱へ形よし、葉の中間に茶掛る墨斑を現し
       青黒混彩し、見事なる事比類なし、巻柏中の稀貴品とす


 龍葉系斑物

金 龍  青龍の金爪斑にして、荒々しき一本葉の爪、金色に光り朝日に輝く
        昇天の龍に比す可く、古今の珍品なり

晃 龍  金龍の葉の中間に黄白斑の入るもの、日射強ければ黄金斑となる、晩秋には
        紅を掛け、旭光四方に輝くが如く美観言話に絶す、白龍、太陽の名あり
       (昭和六年版のみに、別枠にて、別格貴品として掲載される)


 一本葉

青 龍  一本葉にして、色濃く鱗荒く、凡て荒々しき珍品なり

臥 龍  一本葉にして、極細かくして平なり

龍 尾  臥龍より少し幅を引き、少し巻き揚る品なり 〔昭和六年版のみ掲載有り〕


 龍葉系青葉

飛 龍  猿猴の如き葉合に、一本葉を交へる品なり

猿 猴  名の如く元一本葉にして長く、葉先き手を開きし如し

燕 尾  元一本葉にして葉の形、燕の尾の如く葉先割れたる品なり


 常葉系変わり葉

黒牡丹  さながら牡丹の花芯の如く葉を受け、濃青にて光有り丸形に葉詰むものなり

玉獅子  黒牡丹の如くにして葉細かく、一層良く詰みて見事なり

折 鶴   葉は玉川染の如くにして梢荒く、青葉にして葉先縮み綴れる見事稀品

玉麒麟  八重麒麟の如くして葉つまりなり

八重麒麟  色合極く深く、芽先割れ八重になる品なり 〔昭和六年版のみ掲載有り〕

麒麟獅子  鱗極荒くして立葉、巻揚る品にて珍品なり

古今独歩  四角の立葉にして、一本葉の如く奇異な形なり


以上です

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