仕事でデュッセルドルフに住んでいた妻の弟の家に、０１年の暮れから０２年の新年にかけて２週間、夫婦で旅行して来ました。海外旅行中の娘もそこで落ち合い、 ２家族でウィーンを訪れて４日間滞在しました。

その旅の様子を２回に分けて紹介します。

ウィーンに着いたのは夜で、ホテルはシュテファン大聖堂の隣りでした。

シュテファン大聖堂は市の中心に位置し、ウィーンのどこからでもその尖塔（せんとう）が見渡されるそうです。

尖塔は107メートル、教会の塔としては世界で3番目の高さ。

高すぎてこの写真では尖塔の先が切れています。その上暗かったので少しピンぼけ。

通りは人通りが絶えることなく、どこからこんなに人が集まってっくるのかと思われるにぎわいでした。

車の進入が制限されていて、石畳の上には食べ物や土産物の屋台がたくさん並んでいました。

バイオリンやフルート、アコーディオンやロックバンド、人形劇など多彩なパフォーマンスがあちこちでくり広げられていました。いかにも「音楽の都」という感じです。

３１日の夜には、１０時ごろからあちこちで爆竹が鳴らされ、午前０時には新年を祝う教会の鐘の音とともに花火や爆竹の音が一斉に鳴り響きました。

その後朝の４時頃まで通りの騒ぎは収まらず、昼以上のにぎやかさでした。　

ホテルのラウンジに大きなウィーンの古地図が掛けてありました。

中央付近にシュテファン大聖堂があり、その尖塔が目立ちます。

市内をぐるりと取り囲んで星形に城壁が巡らされています。

オスマン帝国が1683年に大軍15万を率いて神聖ローマ皇帝の居城であるウィーンを包囲するも、この要塞化された城壁を破れず敗北、西ヨーロッパへのオスマン軍の侵入が阻まれたのでした。

ホテルの朝食の風景。

カメラをかざすのはさすがに恥ずかしく、いわば隠し撮りです。

上の写真は、壁かけの中世風の絵を撮りたかったのですが、カメラを手元に置いてのこっそり撮影なので、食卓が中心になってしまいました。

こちらもストロボをたかないので、ウェイターの動きが半透明人間になってしまいました。

それでも雰囲気は出ているか。

観光名所だけあって、早朝からこのにぎわいです。

よく見ると、教会の屋根と建物の下部で色あいが違います。　

シュテファン大聖堂は、第二次世界大戦の火災で屋根は完全に焼け落ち、戦後修復されたのです。　

下部が黒いのは火災の跡でしょうか。

12世紀から建造され、この外観はゴシック様式だそうです。

尖塔はこの右側に高くそびえているのですが、大きすぎて入りませんでした。　

ここで、モーツァルトとその妻コンスタンツェの結婚式が行われたのでした。

モーツアルトの葬儀も、ここで行われました。

ゴシック様式だけあって、荘厳というか、全体的には暗い印象でした。

奥の祭壇は、ステンドグラスの光があたり、明るく輝いています。

この祭壇はバロック様式だそうです。

教会の脇の一角に、馬車が集まっていました。

ここで客を乗せ、市内を巡る観光の起点になっているのでした。

大聖堂にはエレベーターがあり、屋根の上からの眺望です。

遠く左奥に円を描いて見えるのは、プラーター公園にある大観覧車。
映画『第三の男』で有名です。

1897年建造、現存する世界最古の観覧車だそうです。

こちらは反対側の眺望

左端に見える幾何学模様は、シュテファン大聖堂の屋根の文様

シュテファン大聖堂から王宮に通ずるメインストリート。

道の真ん中に立っている、上部が金色の彫刻はペスト記念柱。下がその拡大写真です。

1679年にペストがヨーロッパ中に蔓延し、ウィーンでは１０万人以上が死んだそうです。

その終焉を願って建てられたもの。

下部の像は、天使が悪魔を退治しているところ。

台座には「信仰がペストを打ち負かす」と書かれてあるそうです。

彫像が高すぎて、近くからでは金色の上部が写りませんでした。

珍しく、黒大理石で刻まれたマリア像のある教会。

教会や美術館を巡ると、キリストの磔刑（たっけい）図に劣らずマリア像が多いことに気付きます。

キリストの磔刑は、見ようによってはかなり残酷で不安な印象を与えます。

マリア像は逆に、安らかさを、希望や癒しを与えてくれるので、好まれたのではないかと思います。

モーツアルトがオルガンを弾いたという教会。

天窓から明るい光が射し、落ち着いた雰囲気です。

シュテファン大聖堂とは違った安らぎを感じさせます。

内装も凝っていて、小さいながらも美しい教会でした。

これが、モーツアルトが弾いたというオルガンです。

祭壇の反対側、入り口の上にあります。

通りに面した建物の屋根や壁には、ギリシャ彫刻のような彫像が立ち並んでいました。

さすが、神聖ローマ帝国の皇帝を長年輩出したハプスブルク家の帝都です。

以下の彫像からも、華麗な歴史の一端がうかがえるような気がします。

通りの左右に気を取られて歩いているうち、ふと前を見ると緑色のドームのある建物が正面に構えていました。

これが、神聖ローマ帝国やオーストリア・ハンガリー帝国の皇帝の宮殿、ハプスブルク家の王宮でした。

王宮は１３世紀末に建設が開始され、改築が２０世紀まで続いて、いまの美しい姿となったそうです。

王宮といっても、街の通りの続きという感じで、日本では考えられないオープンさです。

その広場に立ってみると、建物の壮麗さに加え、正面の壁を飾る彫像や、屋根に並ぶ彫像群など、その偉容に圧倒されます。

王宮の一角は、現在もオーストリアの連邦大統領の公邸として使用されています。

王宮礼拝堂では、日曜日のミサにウィーン少年合唱団の演奏が聞けるそうです。

広場の一角、王宮の左手前には、王宮前広場の名前にもなっているミヒャエル教会があります。

その入り口の上の屋根には、堕天使像を含む彫刻があります。これは18世紀前半の作とのこと。

宮殿の、向かって左側の壁には、船首に立つ女神や、ネプチューンと怪物などの像のある泉があります。

これは、同じく宮殿の右側の壁にある泉（省略）とともに、海と陸の支配者としてのハプスブルク家を象徴していると言われます。

王宮の屋根も、彫刻で飾られています。

中央の、王冠とともに金色に輝く紋章は「双頭の鷲」。

「双頭の鷲」は、もともと東ローマ帝国が東洋と西洋の双方に対する支配の象徴として使ったものですが、神聖ローマ帝国も国章として採用して、ハプスブルク家の家紋になりました。

ロシア帝国も東ローマ帝国の後継を自負してこの紋章を採用。

新王宮は１９世紀末に建造されました。

新王宮前広場にある騎馬像は、オスマントルコをオーストリアから撃退した英雄、オイゲン公。

新王宮は現在博物館になっています。

ハプスブルク家の400年間にわたるコレクションを収めた、ヨーロッパでも屈指の美術館。

写真左側に高く浮いて見えるのは、「女帝」マリア・テレジアの座像。

夫の死後１５年間喪服で通したといわれ、子どもが１６人いました。

フランス革命で断頭台に散った、フランス王妃マリー・アントワネットは、末娘。

館内の内装自体が美術品のように見事でした。

これは入り口の通路にあった、ケンタウロスと闘う勇者の彫像。

ケンタウロスは上半身が人間で下半身が馬の、ギリシャ神話に登場する怪物。

乗馬文化を持たなかったギリシャ人が、東方の騎馬民族を見て、彼らを怪物と見なしたのだとも言われます。

美術館内はゆったりと絵が配置され、長椅子まで用意されていました。

これも日本では考えられない、余裕を感じます。

この美術館では、ブリューゲルのコレクションが充実しているのだそうです。

そのせいか、ブリューゲルのコーナーは人が絶えませんでした。

だから、人のいない絵だけの写真は撮れませんでした。

ちなみに、日本とは異なり、ストロボをたかなければ写真は撮ってかまわないのです。

以下、代表作を３点紹介します。

これは王宮宝物館での展示品。

われわれ庶民には無関係ながら、定めし高価なのだろうなと思っての撮影でした。

右側のライトアップされた建物は、市庁舎。左側はカール大公の騎馬像

１８０９年５月、アスペルンの戦いでカール大公率いるオーストリア軍が、皇帝ナポレオン1世率いるフランス軍に勝利。

ナポレオンが直接指揮する軍が敗北した数少ない戦闘であり、カール大公はオーストリアの国家的英雄として称えられました。

騎馬像の馬は、2本の後ろ足だけで支えられており、そのバランスの絶妙さは高く評価されているそうです。