デュッセルドルフからはケルンで電車を乗り換えていきます。その乗り換え時にハプニングがありました。

デュッセルドルフからケルンまでは４０�qほどなのですが、電車は１５分以上遅れ、余裕だと思っていた乗り換え時間が１分ぐらいしかなくなったのです。

これでは、乗り換えの電車は探している間に発車してしまうだろう、と半ばあきらめながら電車を降りると、同じホームの反対側に入っている電車がありました。
それが乗り換えの電車だったのです。

あわててその電車に飛び乗ると、入り口から客車に移動している間に電車は動き出しました。まさに間一髪です。

時刻通りに運行される日本のほうが世界的には珍しいと言われるそうですが、それをしかと実感できました。

列車の旅のよさは車窓からながめる風景にあります。都市を離れるにしたがい、土地に根ざした生活を感じさせる風景が広がっていきます。

あいにく雨模様の天候でしたが、次々と展開していく農山村の景色に、どこにでも自然とともに生き続ける生活があるんだなあ、と、我が室根を懐かしく思い出しました。

ちょっとした集落にも必ず見える教会の尖塔が、ヨーロッパを感じさせ、旅愁を誘います。

ケルンから１時間半ほどでアーヘンを通りました。ここにはユネスコの世界遺産に登録されているアーヘン大聖堂があります。

786年にカール大帝が建設を始め、936年から1531年にかけての約600年間、神聖ローマ帝国の30人の皇帝たちがここで戴冠式を挙げました。　　↓

ベルギーの首都であるブリュッセルは、「小パリ」とも呼ばれているそうです。

他のヨーロッパの都市をそんなに知らないからですが、石造りの家々や石畳の雰囲気など、確かにパリの通りに似ています。

ベルギーはフランス革命戦争の際フランスに併合されたこともあり、南半分がいまもフランス語圏なことも関係あるのかも知れません。

妻のお気に入りで、我が家の居間に写真が飾ってあるオードリー・ヘップバーンは、このブリュッセルで生まれたのでした。

駅からお目当てのグラン＝プラス広場に向かう途中、通りに面した小公園の一角に、いわくありげな銅像がありました。

しかし、説明板を見ても誰なのかわかりませんでした。

駅から歩いて１０分ほどでグラン＝プラス広場につきました。
世界遺産にも登録されたこの広場は「世界で最も美しい広場」とヴィクトル・ユゴーに称賛されたのだそうです。

ベートーヴェンの「エグモント序曲」で有名なエグモント伯は、スペインの圧政に対する独立運動の指導者としてスペイン軍に捕えられ、1568年この広場で処刑されたのでした。

左が広場の中央に建つ市庁舎。1402年から1455年の間に建造されたそうです。

ゴシック様式の尖塔は96メートルもあるそうです。頂上にはブリュッセルの守護天使である、竜を打ち倒す天使ミカエル（ミシェル）像が飾られているとのことですが、写真に収まりませんでした。

ひときわ高くそびえるこの塔は、遠くからでもよく見えます。

16世紀にスペイン王カール五世が建設を命じたので「王の家」といわれるそうですが、王がこの家に住んだことはないとのこと。宗教改革の時代には新教徒を監禁する牢獄に使われたそうです。

現在は市立博物館になっていて、世界各地から贈られた「小便小僧」の衣装が展示されています。

その右側の建物の、左から２軒目の２階がユゴーの住んでいた部屋。この部屋で『レ・ミゼラブル』が書かれました。

さらに右に２軒目（写真右端）の１階が、ベルギー王室の御用達で有名なチョコレートのＧＯＤＩＶＡです。

広場は１５〜１７世紀のゴシック建築で囲まれています。その７割がギルドハウスと呼ばれる職人や商人の同業組合の館です。

このギルドハウスは５棟からなっています。真中がビール博物館。こういう豪華な館が３０棟余りぐるりと広場を取り囲んでいるのですから壮観です。(あいにくの雨模様でどんより薄暗いのが残念)

周りを大国に囲まれたブリュッセルは、常に外国の支配を受けてきました。その町を守ろうと対抗したのがギルドだったのです。

上の写真のギルドハウスの右端の棟の、下のアーケードを入ったすぐ左手に、横たわった老人の像がありました。

セルクラエスの像と言って、この像の右腕に触ると幸せになれるのだそうです。

彼は1356年フランドル軍の占領を撃退し、市を解放に導いた英雄で、ブリュッセル市の助役を務めた後1388年にこの場所で亡くなり、19世紀になって像が作られたとのこと。

この小さな像は、グラン＝プラスのすぐ裏側の小路にあります。これと同様の像は世界各地にあるそうですが、その起源とされているいわば本家。1619年に制作されたオリジナル像は紛失してしまい、いまあるのはレプリカだそうです。

シンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫の像と並んで、観光客をがっかりさせる「世界三大がっかり」とも言われているそうです。

そう思って見るからかこの二人の観光客の表情もさえませんでした。ガッカリして家にでも電話しているのかな

グラン＝プラスの近くにあるチョコレートだけ扱っている店。さすがチョコレートの本場だけあります。町中がチョコレートを売っている、という感じでした。

液体チョコ？のデコレーションもありました。丸い塔（？）の上からチョコレートの液が湧きだして、下の方へ次々と流れ落ちていました。　

　

たくさんのサンタクロースが壁をよじ登っている店がありました。クリスマス用の飾り付けだったのか。子どものおもちゃを売る店かもしれません。

通りにぶら下がっているサンタもいました ↓

通りには日本のような看板が出ていません。さりげなく人形が飾ってある店もありました。

ベルギーは連邦立憲君主制の国家なので、王宮があります。これはその王宮広場。

広場の右手前に王立美術館があります。 古典美術館と近代美術館とに分かれており、古典美術はフランドル絵画を中心に展示されていました。
その中かから４点紹介します。

最初はクラナッハの「アダムとイブ」

二人は、食べてはいけないと神に言われた知恵の木の実を、蛇に誘惑されて食べてしまい、それまで気にしていなかった裸を恥じるようになります。それが神の怒りに触れて、二人はエデンの楽園を追放され、生涯パンを得るために苦しむことになったのでした。

白い細身のイヴが取っている独特の柔らかなポーズに、クラナッハ特有の女性描写の特徴が見られます。
彼はマルチン＝ルターの友人でした。

聖アントニウスは３世紀にエジプトで生まれた敬虔なキリスト教徒です。財産を貧しい人々に与え、自らは砂漠に籠もって苦行生活に身を投じて、修道院制度を創始したと言われます。

この絵は砂漠で修行中の聖アントニウスが、悪魔の誘惑に耐えている様子を描いたものです。

アントニウスは画面中央で黒装束に身を包み、右を向いて台の上で両手を組んで祈っています。アントニウスの周りには奇怪で幻想的な生物が沢山描かれています。

ボッシュはルネサンス期のネーデルラント（フランドル）の画家

天使の中で天上界から追放されたのが反逆天使。

ヨハネの「黙示録」では、「巨大な竜、すなわち、悪魔とか、サタンとか呼ばれ、全世界を惑わす年を経た蛇」と述べられています。

絵の中央で青いマントと金の鎧を着たミカエルや、背中に羽を持った９人の天使たちが、その悪魔たちと戦っています。このミカエルがブリュッセルの守護天使です。

ブリューゲル描く悪魔たちは竜のような格好いい（？）ものではなく、奇妙な魚だったりカエルやチョウのお化けだったりする不思議な怪物たちで、一見童話風にも見えます。

これはベルギーの国宝とされているそうです。

ブリューゲルは16世紀のフランドルの画家で、ボッシュの影響を受け、多く寓話を題材にした絵を描きました。

東方からやってきた三人の博士たちが、ユダヤのヘロデ王のもとを訪れて「ユダヤの王として生まれたお方はどこにおられますか？私たちは東方でその方の星を見たので、拝みにきたのです」と尋ねます。

不安にかられた王は新たな王の出現を恐れて、ベツレヘム一帯の２歳以下の男児を皆殺しにしてしまいます。

幸いイエスは虐殺から逃れます。聖書のマタイ伝にもとづいて描かれた作品。

王立美術館を出て坂を下ると、目の前に絶景が開けました。

中央の高い塔は市庁舎の尖塔です。グラン＝プラスを囲む町並みが一望の下に見渡せるのでした。

こうしてみると、市庁舎が市の中心であることがよくわかります。