デュッセルドルフに住んでいる妻の弟が、近くのボンとケルンを案内してくれました。

ボンは1949年から199
0年まで４０年以上、西ドイツの首都でした。

ボンはまた、ベートーベンの生誕の地として有名です。

wikipediaでは「パブロ・カザルスは生前、『この家はドイツでの治外法権である』と述べている（カザルスはフランコ政権を支持する国への歴訪を生涯拒んだ。ドイツも本来は例外ではなかった）
」と紹介されています。それぐらい、この家は音楽愛好家にとって聖地に近い感情で見られているのだと思います。

白壁の前にはベートーベンの頭像が飾られていました。

内部は質素なつくりなのですが、このベートーベン・ハウスは世界最大のベートーベンコレクションを展示しているのだそうです。確かに全室が資料展示に利用されていました。

やっと一人が通れる狭い階段をきしませながら（木造なので）上がっていくと、部屋の中央に白い胸像を立てただけの、ここだけは立ち入り禁止の小部屋がありました。
部屋の前の説明版によると、この部屋がベートーベン生誕の部屋だったのです。
（上の写真では二階の右奥の部屋）

１７７０年１２月から１７９２年１１月ウィーンに移住するまでの２２年間、ベートーベンはこの家で生活し、母の死後アルコール依存症になった父や弟たちの面倒を見たのでした。

自筆の楽譜や手紙、バイオリンなどの楽器や遺髪まで展示されていました。
またラッパのような大きさの補聴器や、筆談用のメモも目を引きました。聴力を失うという危機を乗り越え、名曲を次々と作曲し続けた強靱な精神力には、圧倒されます。

ドイツ語に堪能な妻の弟が熱心にいわれを尋ねたのが功を奏したのか、（この時の参観者が私たちだけだったからか）、係の方が特別写真撮影を許可してくださり、一緒に記念撮影となりました。バックはベートーベン愛用のピアノ（ハンマークラービア）、その後ろはよく見るベートーベンの肖像です。ラッキーでした。

見学を終えて外に出ると、小庭園があり、そこにもベートーベンの重々しい表情の胸像が置かれていました。

それをバックに撮ってもらった写真です。
ベートーベンの偉大な生涯から受けた感動に深く浸って胸像のようにシリアスな表情の夫と、生誕の地を訪れた喜びに単純に浸っている妻の性格の違いが、よく現れています。

ベートーベンハウスからボン駅に向かう途中、広場に屋台が並んでいました。野菜や果物、ハム・ソーセージなどの食材が中心です。
右側の店は、トラックが丸ごと屋台になっていました。

写真には写っていないのですが、この左側にも同様に屋台が並んでいました。

そこからさらに行くとにぎやかな市街になりました。

この通りは車の乗り入れがない歩行者天国になっており、人通りも絶えませんでした。

道の両側には店が並び、教会の尖塔が奥にそびえています。

西ベルリンの首都だった割りにはこじんまりした街なのですが、１３世紀以来５００年間にわたってケルン大司教の居住地だったことや、ボン大学など歴史ある文教地区としての穏やかな雰囲気が伝わってきます。

汽車の待ち時間を利用してレストランに入ってみました。

アムール貝を注文したら、こんな山盛りの料理でした。

ドイツ人は体格がいいせいか、一人前の料理が日本の１、５倍はある感じです。

ケルンと言っても現地では通じません。コルンに近い発音でした。

もともとローマ帝国が建設した街で、植民市を意味するColonia から来たのだそうです。

「オーデコロン」はフランス語で「ケルンの水」という意味だそうですが、この「コロン」がケルンのことなので、現地の発音はケよりコに近いのだそうです。

そのケルンのシンボルが、ユネスコ世界遺産にも登録されている大聖堂です。

世界最大のゴシック建築なだけあって、塔の高さは157mもあり、写真にはほんの一部しか写りませんでした。

下の写真では離れて撮ったので聖堂の前の塔の部分が上までなんとか写りました。
実際にはこの奥に中央部や後部が続いています。

初代の聖堂は４世紀に建てられたのですが、火災などにあい、現在の大聖堂は３代目にあたるそうです。

1248年に建設が開始された現大聖堂は600年以上を要して1880年に完成。その息の長さにも驚かされます。

古い時代の聖堂の遺跡も展示されていました。

私たちと前後して子ども達も入ってきました。

引率の先生がついていたので、校外学習のようです。

私たちが入っていくと、それに合わせたかのように頭上からパイプオルガンの音色が響き渡りました。

見上げると、左手のかなり高い壁にパイプオルガンが張り出しています。そこで演奏が始まったのでした。

高い天井にこだまして聖堂内に響き渡り、同時に地鳴りのように体に染み込んでくる独特の深い音色には、魂を揺さぶるような荘厳さがありました。

これなら確かに敬虔な感情が湧いてくるように思います。
教会にはパイプオルガンの響きが欠かせない訳が分かった気がしました。

石造りの堅固な壁で光を遮られた聖堂内で、祭壇の周囲だけはステンドグラスの明るい光が注がれています。

この暗と明の対比もよく考えられていると思います。

以下、その光の芸術を連続で紹介します。

左はイエスの誕生をたたえたものだと思います。

中央の青い服を着た女性が幼子イエスを抱くマリア。
青色は聖母マリアの象徴の色だそうです。

これは磔刑にあい十字架から下ろされたイエスを抱き悲しむマリア。

やはりマリアは青衣を着ています。

上のステンドグラスの中央を拡大したもの

人物の表情には、それぞれ一定のリアルさが見られます。

正面上方の中心に十字架上のイエスの像をすえ、敬虔な祈りを誘う一角。

ここでは背景の美しいステンドグラスが、清らかな天上の世界に思いをはせる役割を果たしているのでしょうか。

次の２枚のステンドグラスに描かれている各場面も、たぶん聖書に登場する有名な逸話が取られているのだろうと思います。
残念ながら門外漢にはわかりません。

他にも美しいステンドグラスがあったのですが、参考までに２例を下に。　　　↓

塔の上方は修理中でした。

大聖堂は第二次世界大戦中空襲で被害を受け、一旦復旧したものの、粗悪なレンガが用いられた部分があり、それを空襲前の外観に戻すため工事しているのだそうです。