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飼い猫クロの「甘やかしのツケ」その5です。 クロは玄関を自分で開けて自由に出入りできるので、雨の日は大変である。廊下はむろん畳の上、さらにはテーブルの上まで泥足で上がって汚す。
私は仕事の合間にヨガをやって気分転換している。その敷きっぱなしのヨガマットもクロの泥足で何度も汚された。読書に夢中で泥足とは知らずに膝に上げ、あわてたこともある。
爪 研 ぎ 爪の掃除と言えば、クロの爪研ぎのせいで我が家の柱は傷だらけである。居間だろうが書斎だろうが寝室だろうが、所かまわず背伸びして、前肢でガリガリと爪研ぎをするので、ぼろぼろになってしまった。幸い築60年を超える古さなのでもう気にせずにいるのだが、柱だけでなく畳でも平気で爪を研ぐので始末が悪い。
やはり最初が肝心で、退職した今頃になって急にしつけようとしても無理なのだった。 原因不明のかゆみ 去年の7月下旬、右の耳の後ろがかゆくなった。ときどきポリポリ掻いていたのだが、それが悪かったのか右側ののどからあごにかけてかゆみが広がった。
眼鏡をかけた中年のお医者さんは問診の後、肝臓が悪いかもしれないので血液検査をします、と言う。私は酒もたばこもやらないし、毎年の健康診断や退職間際に行った人間ドックでも異常がなかったので、検査はしなくても大丈夫です、と断った。 しかしお医者さんは、血液を少し採って見るだけですから念のためにやりましょう、と聞かない。結局痛い思いをして採血され、かゆみ止めの飲み薬と抗生物質だという塗り薬を出してもらった。 ところが、それを塗ってもかゆみは止まらず、その範囲は広がる一方だった。検査結果が出るという日にまた病院に行くと、案の定「異常なしでした」という。 そして、効果がなかった薬に替えて、塗るとテラテラ光る別の塗り薬を出してくれた。
白 癬 菌 やむを得ず病院を替えて別の皮膚科に行ってみた。
問診の後、お医者さんの指示で看護師さんが顔の洗い方を教えてくれた。まず顔を水で何遍か洗い、次に石けんを手につけて数回こすりあわせてから耳の後ろまでていねいに洗う。それから水で石けん分をすっかり洗い流す。言われるまま洗面台で私が実演するのをじっと見守っていたお医者さんは、最後に「耳はもっとグニュグニュと揉むように洗いなさい」とつけ加えた。 ということは、洗顔が不十分だから雑菌がはびこってかゆみが生じたということなのだろうか。( 確かにこれまでは水でただジャブジャブ洗うだけで、石けんでこんなにていねいに洗うということはなかった ) そしてここでも、抗生物質の塗り薬を処方してくれた。前の病院の薬とは違っていたので、期待しながら1週間塗り続けたのだが、かゆみは一向に消えなかった。それどころか赤みが増して症状は悪化する一方だった。言われたとおり3倍も時間をかけて実行している洗顔も、効果が見えない。 2度目の診察に行くとお医者さんも症状の悪化に驚いたか、検査をすることになった。看護師さんが皮膚をカリカリこすってプレパラートで受け、それを顕微鏡で見るのだった。その結果は、「白癬菌」だった。
白癬菌が足などに寄生すると水虫と呼び、顔などに出るとタムシと呼ぶのだが、もともと同じ菌で、糸状のカビが寄生して起こる皮膚病だという。牛や猫などのペットからも感染するとのこと。
そのことをお医者さんに話すと、うなづきながらそうかもしれないなと言う。そしてさらに、「そもそもペットなどと言って部屋に入れるのがおかしいんだな。猫はもともと畜生なんだ。どこを歩いてくるか解らないんだから、雑菌だらけなんで、私ならそんなもの蹴っ飛ばして外に放り出すんだが」と言う。 そういえばクロはよく、後ろ肢で首筋を掻く仕草をやっていた。 あれも白癬菌のせいなのだろうか。
何はともあれ病名がわかったせいで、その時処方してもらった塗り薬はよく効き、それから1ヶ月ほど経った9月半ばにはかゆみも消え、皮膚の赤みもなくなった。
これも好きなようにさせて甘やかしてきた、ツケなのだと思っている。 < 昼寝中の妻の上で … 勝手に悪口を書くな、とでも言いたげ > △TOP Copyright (C) 室根山のふもと, All Rights Reserved. |