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飼い猫クロの「甘やかしのツケ」その3です。 食べ物にえり好みの多いクロが好きなのは、サキイカである。 クロは小食で、餌も少しずつ口に含んでていねいに食べるのが常だった。それを「ペチョペチョ食い」などと呼んでいたのだが、サキイカの時は違った。 サキイカはお菓子と一緒に居間の食器棚に入れてあった。お菓子を取ろうと引き出しを開けると、居合わせたクロがその引き出しの上に飛び上がってギャーッと鳴き、サキイカを催促することがよくあった。 たまたま娘のいるところで私がサキイカを与えたところ、どこで知ったのか「サキイカには塩分が多いから、猫にはやらない方がいいんだって」と言う。そんなことは知らなかったが、言われれば無視するわけにもいかず、娘のいるところではひかえるようにした。 しかし妻が隠れて与えているところに娘が来合わせたことがあった。娘は( 私と違って妻と対等なので )「お母さん、塩分は猫に良くないって言ったでしょ ! 」と責めた。すると妻は「お父さんもやってるっけよ」と私を引き合いに出した。「お父さん、クロを早死にさせたいの ? 」と、娘は今度は私に矛先を向けてくる。しょうがないので「お母さんはいっぱいやるけど私は少ししかやらない」と穏やかに言い訳すると、妻は「そうでないっけ、何回もやってるっけ」と、ケチだとおとしめたことを忘れたのか、私の方がたくさんやっているように言うのだった。
与えるのは離れで それからは娘に見られないように居間でなく、私の書斎のある離れでやることにした。サキイカが原因で早死にしたと言われるのは不本意なので、朝と夜の2回、2・3本ずつならいいだろう、と量も抑えた。
ギックリ腰
2月始めの寒い朝だった。冷え切った離れのストーブに点火して、サキイカをクロにやろうと、窓際の障子の下にある引き出しを開けた。
その瞬間、ギクッという音が身体に響き、中腰姿勢のまま脱力状態になった。姿勢を保とうにも腰に力が入らないのである。次の瞬間畳の上に後ろ向けにドーンと倒れ込んでいた。その倒れる音が、他人事のように耳に入ってくる。
ギックリ腰だ。 ギックリ腰は年を取るとふとしたきっかけで誰でもなる可能性があるという。コタツに座っていて、横にあるテレビのスイッチを押そうと腰をひねったらなったという話もある。それを聞いた時はまさかと思ったのだが、なってみるとまさしくその状況と同じだった。
事故のきっかけを作ったクロは、こちらの動転には無頓着で
、サキイカを食べるのに夢中になっている。 これは、これまでクロを甘やかしてきたツケに違いない。 腰痛体操 30数年前、妻は長男を出産した後腰痛になった。幸い近くで整骨院に勤めていた大学の先輩が誕生祝いに来てくれ、腰痛体操を教えてくれた。その人自身も腰痛で大学時代に2度手術し、その後進路を変えて整骨院に勤めることになったのだった( 今は盛岡で整骨院を経営している )。 彼が言うには、整骨院には腰痛の治療でくる人が多いのだが、そこで行う牽引や電気マッサージは対症療法で、痛みを和らげるには効果があるのだが、根本的に治すには腰痛体操が一番なのだという。患者にもそう言っているのだが、めんどうなのと時間がないのとでやらないから、慢性化してしまうケースが多いそうだ。 妻はその教え通り毎日腰痛体操を実行し、自力で腰痛を克服した。それを見ていたので、私もすぐ腰痛体操を始めた。 余話 … 飛行機で横になれるように空席を確保してくれた、娘 実はこの事故の1週間後、姪がオーストラリアで結婚式を挙げることになっていて、それに妻と娘ともども出席することになっていたのである。 その出発の日、成田空港で見せた娘の交渉力には感心した。 大船渡線、新幹線と乗り継いで3時間半ほど座ったままだったのが、痛めた腰に悪かったらしく、成田空港で搭乗手続きをする際も立ち続けているのが苦しかった。それでも飛行機で座ったらなんとかなるだろうと思っていた。 ところが娘は、デルタ航空の窓口で航空券を購入する際、私がギックリ腰になったばかりなので、余った座席があればその空席に横になれるように座席を手配してもらえないか、と交渉を始めたのである。 そんなことができるなんて思ってもいなかったので、無理しなくていいよ、と娘に言うと、「だって痛いんでしょう? 飛行機は8時間も座ったままだもの、空いている座席があれば横になれるんだから、頼んでみた方がいいでしょう」と言う。
すると何度かの交渉の結果(空き座席が決まるのは搭乗手続きの最後になるので)、とうとう最後には私の座席の横に空席を確保してもらうことができたのである。
考えてみると、この座席要求は本来私の問題なのだった。それなのにすっかり娘任せにして成り行きをただ見ているだけだった。
何にせよ、娘の親思いの熱意と行動力のお陰で、メルボルンにつくまでの間隣の席に身体を横たえ、腰の痛みを和らげながら行くことができたのである。 △TOP Copyright (C) 室根山のふもと, All Rights Reserved. |