日々のエッセイ

 いつも通る道の、あちらこちらに紫陽花が咲いています。6月がやって来たなぁと実感。出掛ける時には雨が降っていないけれど、折り畳み傘をバッグに入れておこうと備える梅雨の時期です。 中学生や高校生の頃は、6月半ばが中間テストの時期で、それが済んだ後は、待ちに待った夏休みが目前。6月後半は、すべてのものが眩しく映ったなぁと思い出します。

  

 気がつけば、今年も折り返し地点に来ていますね。
 今年前半は、本屋さんめぐりをして、いつもより読書量が増えた(?)気がします。今年前半に訪れた、素敵な本屋さんを3店、ご紹介します。

  

 柏(千葉県)にある児童書と雑貨のお店『ハックルベリーブックス』さん。オーナーの奥山恵さんは、児童書に関する論文をたくさん発表なさっていて、著書も多いので、児童書好きの方々には知れ渡っているお名前と思います。昨年末に、お忙しい奥山さんにお願いして、以前、書かれた森忠明論をコピーして頂いた(森先生ご本人から「奥山さんの文章はすごい!」と伺い、ぜひ拝読したいと思った)ので、御礼かたがた、久しぶりに柏へ。ハックルベリーさんは、建物の雰囲気も、看板も、上質なメルヘンを想わせ、店内に並ぶ御本も、目利きが選んだ良書ばかり。新刊書店ではなかなか探せない、普遍的なシリーズなども置いてあるので、「やっと出会えた!」と嬉しくなる本が待っています。

  

 2階がギャラリーで、絵本関連の企画展を楽しむことができます。窓からのぞく、フクロウのお人形が目を引き、なんと、店内には本物のフクロウ「フーちゃん」が店番をしていました。まるでお人形かと思うくらい、丸いおめめが可愛らしいフーちゃん。光や音に敏感なので、写真は撮れないのですが、じーっと佇む愛らしい姿は見ているだけで幸せな気分になります。
 コピーして頂いた森忠明論は、なるほど、森文学の他者とは違う輝きを的確に伝えていて、私も『ホーン岬まで』を読み返し、改めてこの作品の魅力に引き込まれました。

 二つ目は、市ヶ谷(東京都)の日仏学院の敷地内にある本屋さん『パサージュ・リヴ・ゴーシュ』です。

  

 この辺りは「プチ・パリ」と呼ばれているだけあって、書店の外観もパリの街中に建っているお店みたい。タンタンの大きなポスターに誘われます。

  
 
 『タンタンの冒険』で、タンタンの相棒として出てくる白い犬「スノーウィ」が、窓辺でちょこんと見上げてきます。テリア犬だそうですね。

  


 店内はシェア型の本屋さん。棚主の選んだフランスを中心とした文学や、幅広い芸術書が並んでいます。本を買うだけではなく、イベントなども行われ、本を通じた交流の場になっているようです。サロンのような雰囲気が落ち着きます。

 三つ目は、本の街・谷中(東京都)の古書店『鮫の歯』さん。谷中に多く残る風情あるお家を、そのまま本屋さんにしたような、一見しただけでは、本屋さんとは思えない門構えです。

   


 元は骨董品屋さんだったそう。こだわりの古書が、古道具とともにディスプレイされて、和風もいいなと思わせる本屋さん。最近、すごく増えた谷中界隈の外国人旅行者にも、好まれるだろうなぁ。

  

 門のところに、カゴに無造作に入れられた文庫本。3冊で100円なので、読みたい本があったら、お買い得ですね。気軽に活字と触れ合える計らいです。 谷中散歩の途中、買ってきたばかりの本を片手に、珈琲タイムもいいかもしれません。

 大型書店の実店舗がどんどん減っていく中、小さな個性的な本屋さんが知らないうちに出来ていたり、路地を入ったら「こんなところに?」と思う場所に、古くからの書店を見つけたり。  今年後半も、本をめぐる素敵な出会いを求め、歩いてみたいです。

 

 母校(成蹊大学)の会誌に、『窓の向こう、その先に』(岩崎書店)を紹介して頂きました。吉祥寺で日本文学を学んだ四年間は、楽しいことだらけでした。井の頭公園に近い吉祥寺は、今でも好きな街です。

 雨の音が奏でる6月のメロディーに耳を澄ませながら、キラキラの夏がやって来るのを待ちましょう。
 良い6月を。

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