登山手帖

北アルプス 裏銀座
平成14年(2002年)7月1日(月) 〜 7月6日(土)

融雪の水を湛える鷲羽池
鷲羽池


7月1日(月) 新穂高温泉 〜 信濃大町

裏銀座縦走コースの下山側に自家用車を駐車し、入山側までバスと電車を乗り継いで移動する。新穂高温泉から松本駅まで濃飛バスの直行便がある。便数は限られているので、バスの時刻表に間に合うよう未明に自宅を出発する。

深山荘前の駐車場に停める。梅雨空模様で小雨が降る。移動中の昼間にかけては曇空。信濃大町でタクシーの予約を入れ、ビジネスホテルに宿泊。

7月2日(火) 信濃大町 〜 高瀬ダム ・・・ ブナ立尾根 ・・・ 烏帽子岳 ・・・ 烏帽子小屋

高瀬ダム 6:45着 6:50発
ブナ立尾根途中 8:35着 8:45発
槍見台 10:05着 10:15発
烏帽子小屋 11:50着 13:30発
烏帽子岳 14:25着 14:35発
烏帽子小屋 15:00着  

タクシーで信濃大町から高瀬ダムまで。途中、七倉温泉のゲート開門の時間待ち。

高瀬ダムから烏帽子岳の稜線
高瀬ダムから烏帽子岳の稜線

この時の入山者は自分一人。小雨が降ったり止んだり。烏帽子岳の稜線がガスの切れ間から見える。ダムから真っ暗闇のトンネルを抜け、細長い吊橋を渡り濁沢出合。ブナ立尾根の登りにかけて雨が本降りになる。正面の不動岳の方角からガレ場の崩落する音が響く。鈍った体にはきつい登りが続く。

ブナ立尾根
ブナ立尾根

雨が止み昼前にようやく烏帽子小屋に到着。昼食と休憩をとってから、烏帽子岳を往復する。

烏帽子岳
烏帽子岳

周囲の山はガスに巻かれて展望は利かないが、高山植物が目を楽しませてくれる。烏帽子岳の四十八池にかけて縦走路が雪解けの水で水没。南沢岳まで行けなかった。夕刻にかけて天気が回復する気配。赤牛岳と遠く薬師岳の稜線が姿を見せる。

テントは張らず、小屋に素泊まりする。濡れたものを乾燥室で干す。雨具の防水性が著しく低下しているようだ。泊まりは一人だけ

7月3日(水) 烏帽子小屋 ・・・ 三ツ岳 ・・・ 野口五郎小屋

烏帽子小屋   6:40発
三ツ岳の登り 7:10着 7:20発
三ツ岳 8:00着 8:10発
野口五郎小屋 10:00着  

曇。雨の降る空模様ではないが、風がやや強い。

三ツ岳
三ツ岳に続く緩やかな稜線

昨日の疲れが残っているのか、三ツ岳への緩い登りでも体力が持続せず、何度も立ち止まる。

烏帽子岳・南沢岳
烏帽子岳・南沢岳

三ツ岳の先に大きな雪田が縦走路を埋めている。トラバースするには傾斜が急なので、滑落の危険を避けるため稜線上の踏み跡に沿って進む。平坦な稜線を進むうちに風が強さを増し、ガスで視界も遮られるようになる。

野口五郎小屋に到着。中に避難して休憩する。天気が好転する気配はない。次の水晶小屋は営業期間外で、その先の三俣山荘(途中の)までとなるといくつものピークを越え距離も長い。その上、体力の衰えは隠しようがない。今日の行程はここで終了とする。

泊まりは一人だけ。暇ができたので、ザックを再点検する。今回の山行に入って、背負いバンドの縫い糸が所々切れ始めていた。23年前から酷使しつづけてきたので無理もない。午後の時間は、小屋の人に針と糸を借りて補強縫いの応急修理に当てる。

7月4日(木) 野口五郎小屋 ・・・ 野口五郎岳 ・・・ 水晶岳 ・・・ 鷲羽岳 ・・・ 三俣山荘

野口五郎小屋   6:05発
野口五郎岳 6:25着 6:40発
真砂岳の先 7:35着 7:45発
水晶小屋 9:05着 9:20発
水晶岳 9:45着 10:15発
水晶小屋 10:30着 10:40発
鷲羽岳 12:05着 12:35発
三俣山荘 13:20着  

久しぶりの青空。昨日の風も弱まり、眺望を楽しみながらの山歩き。

野口五郎小屋
野口五郎岳から野口五郎小屋

水晶岳
水晶岳

槍ヶ岳
槍ヶ岳

シーズン中は賑やかな銀座通りでも、今は人影すらない。立山や穂高の高峰は、西の風に乗って雲がかかる。深い渓谷を見下ろし、鈍った体でよく登って来られたものと、今更ながら感心する。

水晶小屋に到着。小屋の人たちが営業の準備を進めていた。今年初めての登山者とかで、忙しい作業最中、ホットミルクのご厚意をいただく。水晶岳まで往復。頂上から360°全方位、北アルプスの名峰を一望のもとにする。

水晶岳の展望(薬師岳・赤牛岳)
 薬師岳 赤牛岳

水晶岳の展望(黒部五郎岳・雲ノ平・北ノ俣岳)
 黒部五郎岳 雲ノ平 北ノ俣岳 太郎兵衛平

水晶岳の展望(槍ヶ岳・鷲羽岳・三俣蓮華岳・笠ヶ岳)
 槍ヶ岳 鷲羽岳 三俣蓮華岳 笠ヶ岳

水晶岳の展望(黒部湖・針ノ木岳・野口五郎岳)
黒部湖 針ノ木岳(烏帽子岳) 三ツ岳 野口五郎岳

今日だけ好天に恵まれただけでも幸せな気分。鷲羽岳から遠望する三俣蓮華岳、双六岳方面は、予想以上に残雪が多い。

黒部川の源流
雪解け進む黒部川の源流

三俣山荘に到着。天気の心配はないが、幕営して体力を回復するだけの元気は残っていないので、今日も素泊まりする。このあたりの中継基地らしく、登山客が集まっている。採れたての山菜の天ぷらを御馳走になる。

7月5日(金) 三俣山荘 ・・・ 三俣蓮華岳 ・・・ 双六岳 ・・・ 弓折岳 ・・・ 鏡平 ・・・ 新穂高温泉

三俣山荘   6:00発
三俣蓮華岳 6:55着 7:05発
双六岳 8:00着 8:10発
双六小屋 9:00着 9:05発
弓折岳 10:10着 10:15発
鏡平 10:55着 11:05発
左俣谷の手前 12:00着 12:10発
秩父沢渡渉地点 12:35着 12:45発
笠ヶ岳登山口前 13:50着 13:55発
新穂高温泉駐車場 14:55着  

曇。天気はゆっくりと下り坂のようだ。

鷲羽岳
三俣山荘から鷲羽岳

三俣蓮華岳への登路は大半が残雪の中。夏道が辿れない。闇雲に残雪の上を登りつめても、ハイマツのブッシュに行く手を遮られ立ち往生する。一度来ている(といっても、21年前だが)のに、全く思い出せない。ルートから外れないよう慎重に見定めながら何とか三俣蓮華岳の頂上に達する。

三俣蓮華岳の展望(鷲羽岳)
三俣蓮華岳から鷲羽岳

三俣蓮華岳の展望(薬師岳・雲ノ平・立山連峰)
薬師岳と雲ノ平 遠く立山連峰

三俣蓮華岳の展望(槍・穂高連峰)
広大な残雪に埋まる双六岳の巻き道

双六岳の山腹を巻く道も残雪で埋まりコースの目印・目標がないので、双六岳まで稜線を行く。下山を前に、双六岳山頂で踏破した峰々の名残惜しい見納め。高層雲の空模様で風が凪ぎ、昨日は雲に隠れていた立山・剣岳、南は乗鞍岳、御嶽山と遠くまですっきり見渡せる。

双六岳山頂記念撮影
双六岳の山頂 剣岳・立山を遠望

双六岳の展望(笠ヶ岳・乗鞍岳・御嶽山)
乗鞍岳・御嶽山を遠望

双六岳の最後の下りは雪の斜面。見下ろすと巻き道の平坦地まで100mの高度差がある。滑落すると勢いがつき大変危険。どこにもエスケープできそうな道筋を見い出せず、やむなく雪面を下る。

重登山靴なら楽に踵を蹴りこんで、ステップを刻みながら下れるところだが、軽登山靴では困難。途中まで下ったところで足が滑り、そのまま体験したことのない直滑降になった。幸い怪我もなく平坦地まで達して止まった。滑り落ちた雪面の跡を見上げて嘆息。

双六小屋のサイト地にはテントが数張り。撤収中のパーティーもある。

弓折岳分岐から鏡平へ下る夏道は、急斜面の雪で隠れている。トレースが細々とあるが足を踏み入れると滑落は必至、深い谷底まで一直線で、とてもトラバースする気になれない。

残雪期のコース案内があり、笠ヶ岳からの下りもアイゼン・ピッケルなしでは危険とか。幸いなことに、弓折岳の稜線沿いにエスケープルートが設けられている。

鏡平俯瞰
弓折岳から鏡平を俯瞰する

ハイマツ、熊笹、潅木のブッシュをかきわけて下る。確かに安全であるが、ここを登るのは一苦労だろう。普通の北アルプス登山でブッシュ漕ぎがあろうとは想像もしなかったが、ともかく登山道に合流、平坦な道の有難さを噛みしめながら鏡平に到着。

鏡平山荘
鏡平山荘から弓折岳を見上げる

ここから先は、登山者と多くすれ違うようになる。秩父沢の渡渉地点は雪渓を横断。雪解けが進むこの時期はコースが微妙、雪渓が崩れ落ちそうにない上流側にかけて道がつけられている。

秩父沢
秩父沢の渡渉点

林道歩きに退屈し、ようやくという感じで新穂高温泉に到着。今日はここで温泉に入り休養することに。

新穂高温泉
新穂高温泉

深山荘前の駐車場
出発点の駐車場に戻る

7月6日(土) 新穂高温泉 〜 平湯温泉

雨。帰りに平湯温泉に立ち寄る。バスターミナルにある温泉でしばし休憩。

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