五、病の原因  
     
   病の起りを尋(たず)ぬれば其(そ)は何々にてあるか。われは知らねど神は知るべし。神は何と示し給ふべきか、今より其(そ)れを書き記すべし。
 抑(そもそも)病の起りは皆己(おの)が疲れによるものなり。無暗に疲れたる時適當(てきとう)の休養を与へざれば身は必ず病むべし。病みたる後に人は其(そ)れを知れども起らざる前にソレを知り得ざるは誠に愚(おろか)なり。神は常に人に注意を与へ居るに拘(かか)わらず、人はソレを無視して己が心にのみまかすが故に病となりて現はるゝ也。
 病は必ず其(そ)起るべき原因ありて起るもの也。突然として起るものにあらず。蟲、獣の災なりと云ふものもあれどソレは末なり。元は必ず己の不心得なり、身心疲れたる時は必ず休養を要するなり。然(しか)るに疲れたるを休めず、不適當(ふてきとう)なる生活を営むが故(ゆえ)に病になるなり。病の起るは神よりの戒(いましめ)なりと知るべし。癒(い)えたりとて油断すれば又起ることあるべし、呉々(くれぐれ)も平素の注意が肝要なり。病の原因を外物と見(み)做(な)すは不可なり。内空(むな)しきが故にこそ外物に冒さるるなれ。
 外物を防ぐ為めには自己の内力を強めざるべからず。内力衰ふれば必ず外魔之(これ)に乘(じょう)ずべし。内外共に一致して身を守れば容易に病に罹(かか)るものにあらず。人は常に外物よりも内力の事に注意すべし。
 
     
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