二三、力  
     
   何事を為すにも無くてはならぬものあり何なるか、ソレは力なり。力は何によりて来るか。元より神より来るなり。神の現れの最も著しきものは力なり。力にも色々あり。或は光となりて現れ、或は音となりて現れ、或は生物を生み、或は大地を動かす等千差萬別なりと雖(いえども)、凡(おおよ)そ生きとし生けるものは元より活動するものは皆力の作用によるものなり。力を得んとすれば如何にすれば可なるかと云ふに、神を信じ神に念ずるにあり。神は必ず必要なる力を吾々に與(あた)へ給ふなり。病めるものを癒すも力なり、死せるものを生かすも力なり。力さへあれば何事にても出来るなり。其力の大本は神なりと知る事神を認むるの最初なり。人間は何を恐るゝか力を恐る。人間は又何かを頼寄(らいき)するものも力なれば人間に取りて力程大切なるものは無きなり。其力を適當(てきとう)に使用する事によりて、何事か順調に出来るなり。何事も進行するなり。其力を得んが為めに、吾々は常に努力するなり。
 力と云ふも善き力と悪しき力とあるを以て、唯(ただ)力さへ得れば可なりと信ずるは誤なり。神より出づる力は皆善なれど、又悪魔より出づる力もあるなり。其力即ち悪力を乱用すれば世は乱れて人は常に苦しまざるべからざるなり。此世の乱るゝは悪魔の力の旺盛なるが為めなり。神は常に悪魔と戦ひて其悪力を倒さんとせらるゝが故に、必ず神の力の勝っに定り居れど、其最後の勝利を得る迄は世乱れ人苦しむものなり。速に之を改めざるべからざるなり。悪魔の勢力をたくましくするも、人間の悪しき為めなり。人間にして正しく神の命に従ひ其命を守れば悪魔の乗すべき餘地無きなり。然るにソレに乗ぜらるゝは人間の罪なり。ソレを神に帰するは不都合也。人間の侮ひ改むる事最も大切なりと知るべきなり。
(十三分)
 
     
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