ヘッダーイメージ 本文へジャンプ
お仕事の記録

CD  クラシック  1999年

CD「ライヒ:ベスト」ライナーノーツ

アメリカの現代作曲家スティーヴ・ライヒのベスト盤のために書きました。

入門者向けのライナーと、ファン向けのライナーを2種類用意し、それを左右に並置して収録するという、とんでもない手間をかけた解説書です。扱っている内容(曲)は同じですが、視点と文体を変えています。

例として、トラック1曲目に収録された「クラッピング・ミュージック」の解説部分をご紹介。

 じゃあ、まず手を叩いてみるとしよう。
「クラッピング・ミュージック」、ずばり「手拍子の音楽」。プレイヤーが二人、マイクの前に立って、本当に手を叩くだけの音楽だ。CDで聴くと、なんだか相当に複雑そうなことをやっているようだけど、基本となっているビートパターンは曲の頭に何回か繰り返されるもので、こんな感じだ。 
 このベスト盤でライヒは初期のテープ作品を敢えてばっさりと切り落とし、「クラッピング・ミュージックを冒頭に選曲してきた。しかし見方によってはこの曲が60年代後半から70年代前半の作曲技法――全く同一の音楽的素材を二つ用意し、ユニゾンで繰り返しながら徐々にずらしていく「位相ずれのプロセス(phase shifting process)」――を見事に要約していると考えることも出来よう。

こんな感じで解説が21ページも続きます。

なお、2008年のライヒ来日公演「コンポージアム2008 スティーヴ・ライヒを迎えて」の公演プログラム(来場者のみ無料配布)に、このライナーノーツの続編的エッセイ「言葉、位相、映像――ライヒの音楽の3つの局面」を書かせていただきました。

ライヒ:ベスト
ワーナーミュージックジャパン WPCR-19002
1999年3月25日発売
フッターイメージ