八重桜おもほゆ我がココロ

〜乱れ初にし〜

「・・っ!・・」
「藤乃・・教えなさい。その客にはどんな風にされた?」
「お、お願いです。も、許してくださ・・あっ!」
快は襦袢の紐で藤乃の両手首を後ろに縛っていた。
両手がきかない藤乃の足を広げさせた。
その両足の間に自分の足を割り入れて押さえながら、涼しい顔で酒を口に運ぶ。
時折片手で藤乃の中心にそっと触れるのだった。
藤乃にとっては優しく触れられる方が逆につらく
まるで体が快に何かを期待しているように
中心は熱をはらみ孕み 淫らに透明な液を滴らせていた。
「別に攻めている訳ではないと言っているではないか。
ただお前がどんな風に可愛がられたのかを知りたいだけだ」
快はうつむく藤乃の顎をつかんで顔を見た。
「いえ、決してそのようなことは何も・・快様にお話しするような・・」
顎をつかまれたまま潤んだ瞳で快の顔を見る。
快はその瞳を捕らえながら
「些細なことでもかまわないから、言いなさい・・」
唇に快の唇が触れるくらい近くでそう囁く。
「わかりました・・・」
藤乃は少しだけ息を吐き出して覚悟を決めた。
「昨日は・・その、まず口づけを」
「どんな風にだ?」
「こんな風です」
そう言いながら藤乃は快に口づけた。
藤乃は既に熱をもつ舌で快の舌へとおずおずと伸ばしていく
快はそのまどろっこしい口づけを何もしないでおとなしく受けた。
しばらくそんな行為を行ってから藤乃は続けた。
「口づけながらそのお客様は僕の襦袢のあわせに手を入れてきました」
「それで?」
「・・・」
意地悪く問いつめる快の顔を見ると彼は真剣な瞳で
「何をどんな風に?ちゃんと話して」
と言われ、仕方なく続きを話す。
「僕のち、乳首を指先できつく摘みました」
「あっ!」
「こんな風に?」
「は・・ぃ・・」
そのままキュッときつく尖りを摘まれて同じことを再現し、
藤乃は秀とした行為をそのまま、快との行為に変えられていく。
それは、他の客の痕跡を藤乃の体から拭い去るような行為だった。
「それから?」
藤乃は快のそんな行為は淫らだけれど
自分が愛されているような気がして、嫌ではなかった。
ただ、今回だけはあまり繰り返したくなかった。
「あ・・の・・前を触られて・・」
「掴んだのか?それとも優しくか?」
快は容赦しない。
「もう・・お願いです。許してください」
藤乃は体を快に預けながら首を振った。
快はその頭を片手で撫でながら藤乃の体を抱きしめる。
「それならひとつ条件を出そう。それをお前がのむなら許してやろうか」
藤乃の髪に口づけながら快が言った。
「はい、何でしょうか?」
快はいつも藤乃との行為で色々な要求をしてくる
きっと今度もまた同じようなことを強いられるのかと思いながらも
藤乃は尋ねてみた。
「私は何もしないから、お前が私にいいことをして達することができたら許してやろう」
藤乃は顔を上げて快を見た。
「当然お前の両手はそのままで・・・」
縛られたまま一体どうしろとこの人は言ってるのか?
藤乃は考えを巡らせたて
「わかりました」
そのまま快の唇を塞いだ。

〜花さそふ〜

夜の帳の中、
行燈のぼんやりした灯りに映し出されるのは赤いふすまと一輪挿しの八重桜。
藤乃の薄く開けた瞳はぼんやりと桜を見ていた。
唇は口づけた快の唇から僅かに耳元へと舌を使い移動していく。
そのゆっくりとした動きに少しだけ身体を動かしながら、快は藤乃の身体を抱きしめる。
「ん!・・くっ・・」
抱きしめながら快の左手が藤乃の双丘へと伸びると、藤乃の口から声が漏れた。
「あ、いけません・・ぼくが・・」
身体をよじって快の手から逃げようとする藤乃に快は耳元で囁いた。
「お前のその顔を見ているとわたしはそそられるんだ。もっとよく見せて」
そのまま指先が埋もれていく。
「あっ!やっ!」
「藤乃、こっちを」
「は、はい」
そのまま藤乃は快の一番熱い部分へと舌を這わせる。
その顔に掛かる髪を丁寧に空いた右手で払いながら、快は唇を頬へと落とした。
「・・・っ!もういい」
中心の熱い部分を口に咥える藤乃の顔を見ていたが遮った。
藤乃の唇の間から、溢れたよだれが淫らで、艶めかしい。
その唇に口づけた快は藤乃の頭を両手でゆっくりとどかした。
「あん!」
既に夢中になり始めたおもちゃを取りあげられた子供の様に、藤乃は物足りなさを感じていると
その唇を快の唇が塞いだ。
藤乃はその物取りなさを埋めるように、今度は快の舌に夢中になった。
「今宵は積極的だな」
うれしそうに微笑む快だった。


〜閨の隙さへつれなかりけり〜

「・・・・」
きつく縛られていた手首の紐を解かれて
藤乃は快の瞳を覗き込んだ。
「痛かっただろ、悪かった。」
藤乃の手首には紐で縛った痕がついていた。
「いいえ、大丈夫です。それより・・・」
藤乃は中断されてしまった快の指先が気になって、催促するように頬を赤く染めた。
その仕草がよっぽど気に入ったとみえて、快は藤乃を抱きかかえると
自分の足の上に落とす。
「あぁっ!・・んっ・・」
そのまま快の熱くなった中心で藤乃の秘めやかな部分が貫かれる。
藤乃は自由になった両手で快の頭を抱えると、
快は目の前にあった藤乃の乳首を吸った。
「あぁぁ・・うっ・・く・・」
両方の刺激に酔いながら
体中を何ともいえない感覚が走り抜けるように何度も体が跳ねる。
その度に後ろがしめつけているのか快の顔も少しだけ歪んだ。
(好き・・・)
そんな表情さえも愛おしい。心の底からそう思ってしまう。
自分は色子で、体を売っている。
それなのにこの快にだけは心まで売ってしまったのかもしれない。
昨日相手をした秀は好きだけど、快の愛おしさとは違う。
秀も快と同じように僕のことを愛していると何度も言っていた。
そして体を開いたけれど・・・

「他のことを考えているな!」
「はっ!」
快は藤乃の心を見透かしたようにきつく抱きしめる。
「そんな余裕は奪ってやる」
言葉と同時に藤乃は布団に転がされた。
そのまま腿を掴まれると、また快の熱いものが打ち込まれる。
「あっ・・うっ・・」
そのまま指先は藤乃の中心を掴んで締め付けながら嬲る。
両方の刺激で思わず腰が揺れてしまう。
それなのに中心を掴まれているために達することは許されない。
「・・・あっ・・くっ、ふ・・」
口から漏れつづけるあえぎのせいで、よだれ涎が口の端から流れ出る。
その涎を快の舌が拭いながら唇に到達すると、
藤乃は自分でも信じられないほど、快の舌を絡めていた。
「ああ、・・だめ・・はや・・く」
「どうする?」
わかっていなが焦らされるのは嫌いじゃない。
けど今は早くイキたい。
「あぁ・・やっ・・だ・・うっ・・はん」
「好きなくせに」
意地悪く一方的に攻めながら快が呟く
その声が好き
「す・・き・・」
「お前は可愛い・・」
たまらず快の腕に力がこもる
「あっ!・・・うっ・・」
「私だけのものになれ・・」
快はうわごとのようにささやき続ける。
夜が更けて月以外の何もない。
夜の静けさ、もうすぐ夜が明けるのかもしれない。
それでも時間を惜しむかのように快と愛し合っていた。

次へ続く