銀行,生保をはじめとする金融機関、それに加えてゼネコンなどが先頭をきって、国民総不動産屋化して、バブル経済のおお泡の中で躍らされたが、実態の伴わない「ゲーム」が終わってみれば、見るも哀れな不況に国民総てが泣かされている。
少しの遊休地があれば、銀行は競って金を貸し付け、ご丁寧に「開発計画書」なるものまで取り揃えて、経営能力のない輩まで「不動産成金」に仕立て上げた。おかげで、土地価格は数年にして数倍に跳ね上がり、美味い汁を吸った人は、競って不動産投資に走り、また土地価格の高騰化を煽る結果となった。
「土地の価格は下がったことがない」という、土地神話に疑問を持った人は、少なかった。国中が好景気に沸き立った。
そのバブル経済が、脆くも崩れ去って久しい。
崩壊の兆しが見え初めてから、はや10年以上が経過、下降の一途を辿った経済も未だに底を打ったという実態はない。確かな担保もなく、また開発事業の確固たる見通しのないまま、無制限に貸し付けた金は、回収不可能となり、不良債権の山を作り出した。
バブル崩壊の過程のなかで、俄か不動産屋を皮きりに始まった大型倒産劇は、膨大な不良債権を掴んだ大手銀行・証券会社・ゼネコンの倒産という、史上例のない展開をみせる事態(99年2月時点で33の金融関連企業の倒産が報告されている)にまで到達した。その結果、銀行は、一転して守りの姿勢に転じ、「貸し渋り」という挙動に出て、多くの企業を窮地に追い込む役割を演じている。
一方、景気の後退のなかで、消費者の財布の紐もますます固くなり、「買い控え」に走り、景気が上向く気配は一向に見えて来ない。
「買い控え」、「貸し渋り」現象が持続することで、明治以来の大不況に到達し、未だ全く出口が見えないトンネルに入り込んだのが、現状である。
このような状況下で、企業は生き残りを賭けて、こぞって「リストラ」に走り、結果として多くの失業者を輩出することになり、景気低迷にますます拍車をかける悪循環を繰り返す事態になった。
「過ぎたるは、及ばざるが如し」・ 過激なバブルは過激な不況を産んだ
<1999年2月3日 記>
倒産した大手銀行の元頭取は、世論の強い批判もあって、貰いすぎた役員退職慰労金(非常識といえる巨額)を、返済する羽目になった。その為に、高級住宅を処分したとのことであるが、全く同情の余地はない。バブル経済という虚像のなかで、一時的な架空の暴利の一部を自らの懐にいれてしまったが、バブルが崩壊したあげく膨大な不良債権と返済不可能な借金を残しての倒産は、国民総てに対しても大きな被害を与えており、犯罪行為と言わざるを得ない。少なくとも、今となっては不当に得た収入と判断せざるを得ない慰労金の返済は、当然のことで、全く同情の余地はない。
バブル崩壊の過程で、あるいは崩壊後に、バブル期に見過ごされた多くの経済犯罪が発覚したが、法的には犯罪と断定されなくとも、倫理的に許し難い現象が、数多く明らかになってきている。
さて、自分の身近なところに目を向けるとどうだろう。
多くの庶民は、バブル期にも活用すべき資産もなく、バブル景気の恩恵を蒙ることもなく、バブル崩壊で大きな打撃を受けることもなかった、いうのが実態であろう。だた一軒しか所有していない自宅を、資産活用にまわせることも出来ず、値上がりした自宅の評価額に、「捕らぬ狸の皮算用」を、頭のなかで繰り返していたのが実態である。
自分の交友範囲は、庶民層であり、周辺で大きなドラマは産まれていない。ただ、小さな小さなドラマがない訳ではない。
自分自身は、バブル崩壊初期に自宅を買い換えたこと、ゴルフ会員権の一つがバブル崩壊による経営母体の財務状態破綻で「紙くず」化したこと、他の一つの会員権は購入時の価格の五分の一以下まで下落したこと位が、「バブル ショック」の直接の影響下にあるといえよう。間接的には、会社の経営悪化による大きな波が、いま押し寄せようとしている。このことは、後で書くことにしよう。
自宅買い替えは、「可も無く不可も無し」と見るべきであろう。新居の購入価格は、旧住宅の売却価格とおおよそ同額であったが、税金、売却手数料、新居の一部(造園含めて)改造などで、1,500万円ほどの出費過多となった。しかし、交通の便が大幅に改善された立地であること、南側道路に面する日当たりの良い土地(趣味の庭造り、盆栽いじりにも好都合)であること、建築後約9年住み込んだ旧住宅から新築に変わったことなど住環境としては大きく改善された。今の価格が、購入時に比べてどうか?凡そ半額に近いだろう。そのことは、旧住宅に居座ったとしても同じ現象であろう。最善のタイミングで買い換えたとは言い難いが、上手く切り抜けたということか!
バブル時に異常な価格をつけたゴルフ会員権は、いまやピーク時の約十分の一近くまで落ち込んできた。経営破綻に陥ったコースも少なくない。自身は、20年のゴルフ歴のなかで、会員権でも良い思いもしたし、多少の泣きもあったが、人並み以上にプレイを楽しんだ回数も多く、全体としては悪い買い物はしていないと自負している。
自分の友人のなかでは、ゴルフ会員権でバブル ダメージを蒙った例が多いが、それも家庭内での力関係が一変した程度の騒ぎで収まっているようだ。ただ、ごく一部の友人の中には、購入価格の10倍にも高騰した会員権を売却して、8,000万円近い現金を手にしたあと、手にしたその金を、次々に開発中の新しいコースの会員権購入につぎ込んで行ったが、読みとは違い、新しいコースはことごとく挫折し、会員権は「紙くず」化してしまった、という厳しい目にあった不運な人もいる。
今でも気に掛けている二人がいるが、消息は不明である。マンション投資に、10億円もの金を動かしていたある大手商社の社員、株の売買に1億円以上の金をつぎ込んでいた一社員。追跡調査する気もないが、平穏であることを祈りたい。
<1999年月2月4日 記>
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