老後(シルバーライフ)を何処で暮すかは、大きな関心事である。
一日の大部分の時間を会社で費やし、家に居るのは夜間だけという生活を送っている間は、住環境、とくに何処に住処を構えるかはさほど大きな関心事ではないし、また選択肢もさほど無い。毎日の通勤の利便性、日曜日のゴルフ場通い(人によっては、釣り?買い物?散策?観劇?などなど)の利便性と懐具合で必然的に決まってしまう。中でも、多くの人が会社への通勤を第一の選択要因としているだろう。
30年余の会社員生活の中で4回住処を変えたが、何れも会社への通勤時間が1時間以内の範囲で、同じ市内を横に移動したにすぎない。その都度、住環境の快適さ・利便性を求めてのことであるが、大きく場所を移動した訳ではない。ここで言う「住処」は、どのような立地のどんな土地に、またどんな家を建てて住むかと言う狭い範囲のことではなく、むしろ北海道か、関東か、九州かあるいは思いきって海外か、また視点を変えて田舎暮しか、都会暮しかと言う広い範囲の「住む場所」の意味合いが強い。そういう意味では、現役会社員の間は選択の余地は全くない。生活の糧を得る会社の所在地近傍が住処にならざるを得ない。
いざ現役引退、退職でシルバーライフへ突入となると、住処の選択に大きな可能性が出てくる。今の会社を引退した後も、新たな職場を得て仕事に情熱を注ぐことを第一の人生目標とする場合は、新しい職場がその人の住処を決めてしまうことになるが、「先ず住処ありて、職場を求む」の姿勢であれば、自由度は変わらない。
自分が、自らのシルバーライフをあれこれ思い巡らす時、最大の関心事は「住処」である。今の住処に不都合を感じている訳ではないが、「今以上に趣味を十分に生かして、しかも経済的にも苦痛を伴わず、快適な暮しが出来る環境」という夢みたいな願望が、かなり以前から頭を離れない。
一般的に、と言ってもシルバーライフ突入者にとって、「住処」選択の条件は、自身の独断的な見解のきらいもあるが大方次のようなことであろう。
・懐具合(初期投資、長期的な生活費、生活期間と投資効率、
生活費補充) -懐
・肉親との繋がり、係り方(親・子供の居住地、
究極の生活スタイル) -肉親
・温暖な気候、好みの景観(生まれ故郷、山地か海辺か、
四季の変化) -気候等
・趣味の容易な達成の可能性(趣味と実益、趣味の優先度、
仲間作り) -趣味
・友人・サークル活動(幼馴染、学友、近所付き合い、
遊び仲間) -友
・温泉、医療機関など健康管理面の利便・優位性(
何時まで元気?) -健康
・文化・教養行事との触合い(各種学校・サークル、
美術館、劇場他) −文化
・交通の利便性(車、電車、高速道路、飛行場等) -交通
人によっては、まだ多くの、あるいは違った条件があろうが、自分は上記の条件もかなり絞り込まなければ、頭の整理がつかない。ただ、上列4項目は避けられない検討課題、言い替えれば必須条件と受け取っている。前にも触れたように、簡潔に表現すれば、「今以上に趣味を十分に生かして、しかも経済的にも苦痛を伴わず、快適な暮しが出来る環境」という全く身勝手な欲深い願望であるが、多くの障害を克服して、果たしてどこまで充足出来るか、今すぐの結論が迫られている状況でもないので、気長に挑戦することにしよう。
<1999年2月12日 記>
|