だから
俺の前で頭を下げかけた奴を制止して
「行く」
と言ってしまった
行かないとは言っていない、と
自分でもなんでそんなことをしたのか
その時はわからなかった
でも、
今なら、わかる
俺は驚いていたのだ、と
俺を仲間だというやつがいて
それを信じて疑わないやつがいるということに
そうじゃないはずがない、と言い切ることに・・・・・
そして
おそらく
安堵していた
まだ自分は『人間』の側にいるのだ、と
まだ自分を『仲間』と言ってくれる奴がいるのだ、と
こんなこと
あいつらに言ったら笑われるだろう?
だから
これは俺の心の中だけの真実
――end
著:白螺
2008.8.25