「いやや、言うとるやろ〜!」
「嫌よ、嫌よ、も、好きうちってな」
なんじゃそりゃぁ〜!という哀れな男の悲鳴は、嬉々として腕を動かしている目の前の宇宙人には通じなかったらしく、まるで踊らされている様になりながら着実に着衣は剥がされていく。必死に抵抗するも、元来が不器用でどちらかといえば要領の悪い私と、力強く器用で要領のいい火村とでは勝敗の行方は歴然。着替えを嫌がる子供をあっという間に裸にする母親さながらに暴挙は進んでいく。
「…火村」
そして、半ば諦めておとなしくなった私に、先ほどのエプロンを被せた男に向かって腕組みをして向き合うと…楽しそうに鼻歌まで歌っていたヤツが妙に悩ましげな表情を浮かべてしげしげと私を見つめていた。…否、悩ましいのではない、訝しげであり、不服そうですらある。何と失礼な。
「…………」
「なんちゅう顔しとるんや!お前が無理矢理着せたんちゃうんか」
「半分脱がせたら…なんとか…」
「なんとかって何やねん!」
なんとかなる、とでも言いたかったのか?顎に掌をあて、首を傾げては悩んでいる火村を見てふつふつと怒りが込み上げて来る。…なんだ、お前だって酷い有様だったじゃないか!それを、無理矢理着せておいて…納得いかないってどないやねん!
「…いや、なんていうのか、色気が…足りない?」
「なんやて?」
「こう…成熟した色気ってのか、あれだ。セクシーさが欠片もねぇんだろうな」
「…言うてくれるやないか、火村」
男有栖川有栖、売られた喧嘩は買わせてもらうぜよ?とばかりにいらん闘争心に火がついた私は、色気位出せるわ、阿呆、と暫く頭をフル回転させていた。どうすれば火村をぎゃふんといわせてやれるのか、…色気が無い?良く言ったもんだ。絶対に参ったと言わせてやろう。見てろ、私だってその気になれば…火村の一人や二人くらい…いや、こんな奴が二人も居たら困るだろうが…簡単にその気にさせる事が出来るんだからな。
「…アリス?」
腕組みをしたまま固まっている私を見て、訝しげに火村が首を傾げているのにうっすらと微笑みを返してやる。出来るだけ、曖昧に…そして艶やかに見える様に。
「…なぁ、ひむら」
組んでいた腕をゆっくりと解し、つつつ、と身をすべらせてベッドサイドに立つ火村へと近寄ると下から、見上げる様な姿勢で名前を呼ぶ。努めて柔らかい甘えた様な…舌足らずな発音で。
「な、何だよ。アリス…」
同じように何が足りないのか、悩んでいた様子の火村は私の変化に微妙に乗り遅れ…結果、ワンテンポずれた反応となったらしい。そのずれが、何よりの起爆剤だと私は身をもって知っている。いつだって急にスイッチの入る火村の豹変ぶりにまんまと踊らされているのだから。
「なぁ…、半分とは言わず…、全部。脱いで、みる…?」
「え…?」
上半身はすでに剥かれて素肌を晒してはいるが、下はスウェットを履いたまま。それを暗示するかのように持ち上げた腕を伸ばして火村のスラックスの上からベルトの辺りまで、指を添わせて撫ぜてみる。つつつ、と下を脱いだら…色気、出るかなぁ、と呟いて。
「あっ、…ああ」
指先が触れた途端、ぴくりと躰を強張らせた様子の火村は私の問いかけに多少上ずった声で頷いた…辛うじてと言った風に発せられた声に、未だ彼が戸惑っているのだと思う。その反応をほくそ笑む様に軽く笑うと、目の前で立ちあがり、そろり。指を脇腹から添わせていく。剥き出しになった脇腹からわざと見せつける様にして白い布で隠された下肢へと指をすべらせて、火村にも何をしているのか見える様にウエストに手を掛けて。
上から被せられた為であろう、エプロンの胸元は一番広く空けられていて下を向けば…きっと中までよく見える筈だ。徐々に下ろしていくスウェットを太ももから膝を抜いて、そしてふくらはぎまで指を肌から離す事なく滑らせていくと、自然と体勢は前かがみになる。それをあえて視線を火村に残したままで上半身を折り曲げていくことで…彼から、私の胸元から腹に掛けてが見える様に、ゆっくりと脱いでいく。
「…リス」
ふっと、漏らした掠れた声を合図に目線を火村から逸らせる。
心もち、恥じらいを滲ませて…つい、と横へ少しだけ視線を動かした私に聴こえたのは、息を呑む様な火村の吐息。ほら、オレかてコレくらいは出来るんやで?そう言ってしまいたい嬉しさをぐっとこらえて、火村が言い訳や屁理屈を言えない位煽ってやろうと更に腕を伸ばしていく。実はあまり躰が柔らかくないオレにとっては、楽な体勢とは言えない、言えないけれど悟られないよう必死で足首を経て…ようやくスウェットを抜き去った。
そうして気だるそうに…実際、無理な体勢から気だるかったが…そのまま座り込んで再び火村を見上げた。エプロンが素肌を露わにした太ももの間に絡まる様に意図的に動かしながら。そうすることで、火村からは白く日に焼けていない内腿あたりがほんの僅かに見えるだろうから。…彼がこの内腿を好きな事を知っての上で、だ。おまけに全てがあっけなく晒されるよりは、まるで焦らされるかのようにちらりと見える方が好きだと言うのも知っていてわざと。
「…どう?」
その足の間に挟んだ両腕はエプロンを突っ張る様にしており、突っ張られた布はぎりぎりまで胸元を大きく開けている。…ちょうどラインが胸の突起に掛かるか掛からないか、という微妙な位置で止める。下から合わせる視線と、少しだけ開いた唇。
どうだ!参っただろう!?
照明を背に立っている火村を見上げる体勢からでは逆光で彼の表情が良く見えないのだが、じっと押し黙ったままの火村を見るにだいぶ参っているのだろうと思うと…自然と嬉しくて微笑みが漏れてしまう。してやったり、と言いたくもなる。
が、見上げた陰が細かく震えはじめた気がして、どうしたかと腕を伸ばしかけた…その時。
「アリス!」
「なっ、何っ!?」
伸ばした腕をすさまじい力で引き攫んだ火村が、そのまま圧し掛かってきたから驚きだ。そして、あっという間に私は自分のした浅はかな行動を呪い、激しい後悔の渦に呑みこまれる事となる。
「アリス…、そんだけ煽ったんだから後悔、すんなよ?」
辛うじて言葉を残した火村の視線を一身に受けて、私は心の中で大絶叫した。
した、しました!既に後悔、してるから!だから…、助けて〜!!!
その瞳はさながら獣そのもの。慾を隠そうともしない、野獣のモノだったから。
「…けだものめ」
精も魂も尽き果てて、啼き喚き過ぎた私は掠れた声をやっとで絞り出して抗議の声をあげた。憎らしい事に晴れ晴れとしてさえいる表情を浮かべた火村は、寝煙草禁止の言いつけをも破って実に旨そうに紫煙を燻らせていた。
「いやいや、アリス。裸エプロンは男のロマンだろ。…まさかあれほどまで乗ってくるとは思わなかったが。まぁ、嬉しい誤算だな」
何が嬉しい誤算だ、白々しい!その顔は、全てを仕組んだ上での達成感からだろうが。そう思ってみても口を開くのも億劫な位に草臥れ果てていた私からは、せいぜい恨めしげな視線を送る事しか出来ない。
はあ、とため息を吐くのも、鈍い違和感を抱えたままの下腹に響いて辛い。これも全て目の前の野獣の仕業だ。なんて忌々しい!
「…なんで、こんな事に…」
それでも、口を吐いて出た後悔の言葉に、片眉をあげ答える人間の皮を被った野獣は、悔しい位に冷静な声でしれっと嘯いてみせる。
「たとえば俺があの格好をしていなかったとしたら、アリス。お前はおとなしくされるがままにエプロンを着せられていたか?」
「…それは」
腕一本、指すら動かす気にもなれない私の、重力に逆らう事無く流れ落ちた髪をひと房摘まんで火村がくつくつと笑う様に言葉を続けるのを聴いていた。
「おそらく、何が何でも着なかったろうな。いくら細腕とはいえ本気で抵抗されていたらいくら俺だって裸にしてエプロンを着せるなんて器用な真似は出来ないからな。アリス、お前は俺が着たから、と心のどこかで慣れていたんだよ」
「…布石だった、ちゅうわけか」
「まあ、そういうこった」
ふう、と吐きだされる紫煙にすら文句を言う気力も奪われて、次第に襲ってくる睡魔に抗う事すら無駄な様な気がしてきた。何たることだ。すでに其処から火村の姑息な仕掛けは始まっていたと言うのか。たかが私にエプロンを着せたいが為に?何が男のロマンだ、アホらしい。その為にわざわざエプロンを用意して、あまつさえソレを自分が着てまで見せて?なんという…手の込んだ事をするんだろうか。そうまでして目的を果たそうとする信念には恐れ入るが…それにしたって、と私は思うのだ。
なんでこんなヤツを好きになってしまったんだろうか、と。
火村英生、目的の為ならばわが身を犠牲にすることを厭わない、信念の男。
スペシャルコラボ(*´・ω・`)ノ” というわけで、勝手ながら妄想が止まりませんでした…どうにか寸止め(爆)もとい自主規制掛けときましたが、ケダモノな火村さんが可哀想なアリスに“ナニ”をしたのかっ!?気になる…?気になる方は……。どうしましょうね?一応書いては見たんですが、鬼畜っぷりにアップを躊躇う事態に陥っております(苦笑)どうしても、というお声が届けば…アップします!勿論、孔也様のお許しなしには出来ませんが(´-ω-`;)ゞ 勝手ながらとはいえ、楽しませて頂きました!有難うございます。又機会がありましたら是非、宜しくお願いしますデス!
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