秋ナスは嫁に食わすな―。
って知ってるだろ?アレな、二通りの説があるらしいぜ?
…なんやの?
秋のナスは旬で美味いから嫁なんかに食わしてやるな、と
ナスは体を冷やすから子宝欲しくば嫁に食わすな、だ。
…へぇ。
いつものように垂れ流しの言葉を珍しく脳みそが拾っていたらしい。
キッチンには艶やかにまるっと熟れた秋ナス。
それに―。
北アカリ。ほっくほくで美味いじゃがいも。
どちらもスライスしてバターでソテー。
秋鮭は生。これも薄めのスライス。
ああ、そうやった。
この間、引き出物で貰った大皿。確かオーブンいけたよな。
独りごちて、がさがさ。
ホワイトソースは手抜き。
バターに小麦粉、チンしてミルク投入。
くるくる。
むらさき、しろ、きいろ、しろ、ぴんく、しろ。
大皿に重ねていって…最後にチーズ。
「お…、いい匂いしてきな。アリス」
「まっとれよ、仕上げにパン粉載せて更に焼くからな」
つまみに余った鮭で金色ムニエル。
小さいイモは皮をこそげおとしてまるっと揚げる。
そのまま、塩コショウで包んでやれば…堪らないごちそう。
ソースは?
ホワイトソースの残り、か、卸したオニオンにレモン汁。
お好きに召し上がれ。
「あ、美味い」
「火村はホワイトソース派?こっちもいけるで」
「おぅ、いけるな。そういや鮭は白身魚だって知ってたか?」
「紅いのになぁ」
「刺身が赤っぽいさんまも実は青魚。
そもそも赤身魚ってのは生物学的に
体側筋が遅筋から成るもの、白身は速筋からなるものだ。
まあ、赤身が紅いのは遅筋にある酸素結合性タンパク質。
ミオグロビンの成分からだが、鮭の赤みは
餌として食べてる甲殻類の外殻に含まれるカロテノイド、
アスタキサンチンの色素だ。
ちなみに青魚ってのは学術上の分類じゃねぇ。
背の青い魚の総称だな」
「ふ〜ん」
やがて漂ういい香り。
「出来たで〜」
ちょっとついた焦げ目が何とも食欲をそそるのだ。
たいそうな能書きはいらん。
見たらわかる、それで十分。
さあ、ほっこほこで召し上がり。
男は寡黙なくらいでイイ…と、思う。理屈っぽくて口が達者な殿方ってどうなの。でも、火村先生は先生らしくそうであると思う。どうだろう。
Author by emi