「美味いもんが喰いたいなぁ…」
天気予報はハズレ。
差す筈の陽光に振られ、吹き付ける風に辟易する。
なんていうか、寒い。
先ほどから冷えて悴み始めた指先を擦り合わせては息を吹きかけている。
後期始まってダレてくる10月終わり。
「美味いもん、喰いたいねん」
「………で?」
寒い、寒い、友よ。
同じように肩を竦めて煙草を銜える火村に恨めしい視線を向けると
仰々しい仕草で返された。
なんつう…腹立つヤツや。
「あ〜、あったかくて美味くて幸せなご飯が食べたいなぁ!」
叫んでみれば。
下宿のキッチンは決して広くは無い。
長身の火村が立てば一杯だ。
それでも、目の前に並んで行く湯着を纏ったおばんざい達。
八菜とかしわの味噌汁、
からし菜とおあげの煮びたし、
いとこ煮、
いかと厚揚げのたいたん…。
そう。
大概の事は叶うのである。
Author by emi