「うわっ…!」
温かい日差しが降り注ぐ学内、それでも吹き付ける春の強い風に舞い上がった土ぼこりが正面からアリスへと襲いかかり、思わず叫び声をあげてしまった。
「凄い…風やな」
「ああ、凄ぇ…。火がつかねぇよ」
先ほどからしきりに100円ライターをするジイという音が咥えたばこで話す火村の口元から聴こえている。
風が強くてライターでは火がつかないのだろう、そう思って何気なく振り返ったアリスの視線の先で。
風から火を守るように、大きな掌を優しく丸めてうつむき加減に煙草へ火をともす。
その仕草に。
「…ついた。アリス?」
「え?」
思わず、見惚れてしまったなんて。
絶対に言えない。
Author by emi