風の向こう側に



眠っていたのだと思う。

擦り切れるくらい、思い出した記憶は
それでも、掠れる事無く鮮明なままだ。


―いや、かすれることが無い様に
繰り返し繰り返し、思い出しているのかもしれない。


そより、そより。


頬を撫ぜる心地よい風に、少しだけ浮上した意識。
ああ、転寝をしていたらしい、と頭の遠くで思った。


動くのも億劫なくらい、まだ身体は眠っている。
うっすらと重い瞼を片方、持ち上げてみると

風の、その先に。


ゆらゆらと揺らめく、団扇が見えた。
それは、優しく風を送る。


そより、そより。

その、先に。


微笑む、キミが見えた。
穏やかに優しく、視線は私を捉えていなかったが
その指先の心使いが、誰よりも私を捉える。


見えない、優しさが心地よくて。
キミがくれる風が、心地よくて。

また、眠った。

思い出すのは、あの時のキミの笑顔。
恋と知った、あの時の笑顔。

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どちら視点でもよいのだと思います。眠っている相手への優しさは見えないだけに本心だと思うのです。未だ未満より。

Author by emi