私の部屋には洗濯物を畳んでいる恋人が居る。
この時期はいつも夜のうちに洗濯して置いて、寝る前に部屋の中に干しておくのだ。
梅雨、雨に季節に。
ふと、目が覚めた。隣に居るはずの温もりを掌で探るが、ベッドの中で虚しく空をきる。
起きているらしい。
すでに朝とは言えない時間。
もそもそと起きていくと、リビングには丁寧に洗濯物を畳む火村が居た。普段は独り分の洗濯物はここ数日の修羅場でたまりに溜まってそこそこの量だ。
「…おはようさん」
「おはよう、アリス。…ああ、少し冷えるから履いとけ」
ほらと言ってちょうど手にしていた靴下を投げてよこした。
惰性で履こうとして合わせ目を外しふと思い出した。
「…あ、でもコレ…」
「どこだ?」
思わず呟いていた言葉に被せるように発せられた火村の言葉に一瞬、きょとんとしてしまう。
「え?何が…?」
「だから、どこに空いているんだ?」
立ち上がると火村は持ったまま固まっている私の靴下を取り上げるとソレをひっくり返したりして何かを探し始めた。すると足の先、ちょうど親指の辺りに見つけたらしい。
「此処か…。じゃ、こっちにしとけ。これは捨てるぞ、いいな?」
「あ、うん」
素直に手渡された新しい別の靴下を履くと、いつの間にか用意されたコーヒーを手にダイニングに座る。洗濯物を畳み終えた火村は奇麗に合わせられたその山を寝室へと運んでいくところだ。
「…なあ、火村。なんで俺が言おうとしたこと、わかったん?」
「あ?何…、ああ。靴下の穴、ね…」
そのまま答える事無く、火村は寝室へと消えるのを温かい液体を嚥下して見送る。
やがて、戻ってくると椅子に座ったままの俺に近づき、身をかがめて額にキスをした。
「そりゃ、勿論愛、だろ?」
ほつれる事無く、破ける事無く。
Author by emi