温もりが掬う夢


夢を、見た。

未だ記憶の片隅に残っていた、温もりのある夢。
懐かしくて、必死に手を伸ばしていたのだけは覚えている。
それでも、届かない手が。
もどかしくて、身を捩って―。

堕ちる、夢。

ぼう、とする程の熱さにうなされていたのだろう。
呼吸すら、辛くて居た堪れない哀しみに目が覚めた。

「…熱い」

ああ、熱が出たのだとなんとか理解して
それでも動くのが億劫で、また、瞼を閉じた。


緩やかに、下降していく。

音も、色も、何も無い世界に―。


突然、舞い落ちた原色の光。

「…?」

幾分、軽くなった頭と、熱の冷めた感じを覚え
ふと瞳を開けた、その視界に―。

柔らかくほほ笑む、見慣れた顔。

「あ、気がついた」
「…アリス?」

「何か、飲む?」

巡らせた視線の先に差し出される、冷えたカップ。
額には、タオル。
頭の下には、冷却材。

ああ、どうしてお前は―。

「よかった、火村。熱、下がってきたみたいや。独りで寝てんと、オレに頼ったらええのに。 昨日の電話、声がおかしかったやろ?来てみてよかった」

カラカラに乾いた喉を潤す水分が、徐々に思考を回復させる。
昨日の電話、声がおかしかったから…?
たった、それだけ、で?

「さ、もうひと眠り。おかゆさん、作っとくし」

心地よい、声に促されて素直に横になった。
緩やかに上昇する様な、眠り。


色と音と、そして、温もりと―。

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Author by emi