煮詰まっていたのは確かだ。久しぶりに会って久しぶりに呑んだ。
程良い音量で一定のリズムを刻み続けるBGMはダウンライトの店に
間違えなく合っていた。雰囲気も格別によかった。
出されるカクテルもどちらかと言えば辛口で、これは単に
バーテンダーの好みもあるだろうが、よく冷えたジンにアンチョビ入りオリーブ
が旨い。…どとのつまり。酔ったんだと思う。
で、なければ…10年という歳月を掛けて熟成させてきた、もとい、ひた隠しに
してきたアリスへの想いをこうもうっかり口にしてしまう事など考えられない。
『アリスが好きだ。お前が…欲しいよ』
それまで、嬉しそうに楽しそうにグラスを傾けていたアリスはその一言に
一瞬のうちに固まってしまった。瞠目して…半分以上残っていたフレンチコネク
ションを一気に流し込んだのだ。ロングカクテルなのに、煽る様に呑む姿に
アリスがどうしようもなく動揺しているのだと…知った。
しくじった…。
これで終わりだと思った。
これまでも想いが口から零れて仕舞うのをどれほど
堪えて来ただろうか。1年、2年と時が重なるにつれ薄れるどころか濃さを増し
ていく想いに…いつか堪え切れなくなるだろう、そんな予感がしていたけれど、
まさかこんなに早く現実のものになろうとは…思いもしなかった。
それでも、足掛け10年。
傍に居て…見つめて来たのだ。
固まったままのアリスを見て、あれやこれやと声を掛けて見るモノの
一向に回復しない姿が…まるで自分への拒絶を表している様で
居た堪れない気持ちにさせられる。
10年…か。長い様で短かったよな。
諦めた様に煙草に火を点けて紫煙と共にアリスへの想いを…はきだした。
後悔ってやつは先に立たないからこそ、後悔なんだよな。
一瞬の気の緩みが齎した現実にため息だって出る。
『我慢したのに』
20年目になんとなく20のお題より
『誤解か?』へと微妙に続いていなくもない。
Author by emi